保育園の栄養士に聞いた!子どもの好き嫌いを克服する4つの方法

子どもに好き嫌いがあると栄養不足にならないか心配になったり、思うように食事が進まないとイライラしたりするかもしれません。

  • どうして好き嫌いをするのか
  • 好き嫌いはいつから始まるのか
  • 好き嫌いはずっと続くのか

子どもの成長を考えると、好き嫌いに関する悩みは尽きることがありません。

この記事を読んでいる方の中には、次のような方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「好き嫌いするのは良くないと思うけど、無理やり食べさせるのもちょっと…」

「子どもの好き嫌いに対してどう向き合ったらいいのか分からない」

この記事では、企業主導型保育所みらいく高田 栄養士のもなみ先生に、子どもの好き嫌いについてインタビューをしました。

この記事を読むと次の7つが分かります。

  • 子どもが好き嫌いをしてイライラするのは仕方のないことなのか
  • 好き嫌いがあっても栄養はしっかり摂れるのか
  • 子どもの好き嫌いはいつからはじまるのか
  • 保育園だと嫌いなものを食べるのはどうしてか
  • 子どもが好き嫌いをする4つの理由と解決策
  • 好き嫌いを克服するために自宅でできる「食育」
  • 無理に食べさせる必要はあるのか

子どもの好き嫌いを解消するために保育園の現場で実践している方法もお伝えしています。

ぜひ参考にしてみてください。

みらいく高田 栄養士
もなみ先生
食事を通して子どもの成長に関わりたいという思いから、栄養士を目指す。児童養護施設で13年勤務し現場経験を積んだ後、みらいく高田で栄養士として勤務。産休・育休を経て自身の子どもを育てながら、保育園の子どもの嫌いな食べ物や苦手な食べ物を好きになってもらう工夫として「食育」に取り組んでいる。

子どもが好き嫌いをしてイライラするのは仕方のないこと


まず初めに、多くの親御さんが抱えている悩みについて、もなみ先生に聞いてみました。

石坂

食事のときに子どもの好き嫌いでイライラしてしまったり、またご飯の時間が憂鬱だったりする親御さんが多いようです。

 

もなみ先生は子育て真っ只中とのことですが、そういった経験はありますか?

もなみ先生

せっかく作ったご飯を食べてくれないとイライラもするし、悲しくもなりますよね。

私もイライラすることもたくさんありますよ。でも、イライラしてしまうのは「仕方のないこと」です。

まだ産まれて1、2年しか生きていない子どもたちですから、今はこの先何十年と食事をするための練習期間だと思ってもらうと気持ちが落ち着いたり、対処方法が思い付いたりします。

たとえば、イライラする理由を考えてみましょう。

 

・忙しい中作ったのに食べてくれなくてイライラする

・栄養不足にならないか心配でイライラする

・思い通りにならなくてイライラする

 

また「好き嫌いがある=だめなこと」ではなく「大人でも食事の好き嫌いがあるように、この子にも好き嫌いがあって当然」と考えたほうが良いかもしれません。

 

まだ試してない、食べてくれる工夫をしてみるのもおすすめです。

石坂

「食べてくれる工夫」というのは、もなみ先生が取り組んでいる「食育」ですか?

もなみ先生

そうですね。

 

食育と聞くと馴染みの薄い方も多いと思います。

 

食育とは、食べ物に関する様々な知識を学び、食への興味関心を育てること、そして子ども達が健全な食生活を送れるように教育することをいいます。

 

保育園では「子どもが将来に渡って健康な食生活が出来るようになる」ための取り組みをしています。

 

具体的には、子どもと一緒に野菜を育てたり、子どもに料理のお手伝いをしてもらったりするなどの活動です。

また、集団で取り組む大きな食育でなくても、ちょっとした工夫で食べてくれるようになったりします。

 

たとえば、子どもの食事が進まないときにせかしたり叱ったりするより、お茶碗のお米を「おにぎりにしようか」とにぎってみる。

 

おかずを「一緒に切ってみようか」と半分に切ってみたりするといいかもしれません。

 

「食育=子どもが食事を楽しめること」と考えてみると、親御さんも気持ちがうんと楽になりますよ。

子どもの好き嫌いがあると栄養が摂れているか心配

石坂

子どもに好き嫌いがあり食べない食材があると、栄養面は大丈夫なのでしょうか?

 

嫌いな食材に含まれる栄養が足りなくなり、成長に影響があるように思うのですが。

もなみ先生

ある程度の好き嫌いがあっても健康で順調に発育していれば問題はありません。

 

「この食材からしか摂れない」という栄養はなく、ほかの食材から摂れるので、実はそれほど問題はないんです。

 

ただし、偏った食生活は危険です。いろいろな食材を摂るように心がけてくださいね。

子どもの好き嫌いはいつから始まるの?

石坂

好き嫌いによる栄養面の心配はないことを教えて頂きましたが、そもそも好き嫌いは、いつから始まるものなのでしょうか?

もなみ先生

年齢で分けることができます。

 

・1歳までの「離乳期」

・1歳以降

〇1歳までの「離乳期」:まだ食の経験がなく、そもそも好き嫌いが少ない
→産まれてからミルクや母乳飲みしか口にしてこなかったため「口に入れた新しい食材を拒否する=その食材が嫌い」ということではない

・食べることへの興味
・手でつかんで口に運ぶ、という連動を楽しみながら食べる

〇1歳以降:好き嫌いが始まり、食べてくれない

・「食材に対するマイナスの経験」「マイナスの経験=食材」の経験値が積み重なる

石坂

「食材に対するマイナスの経験」とは、たとえばどういったことでしょうか?

もなみ先生

たとえば、焼き魚を初めて食べるとします。

 

焼き魚って、少しパサパサしていますよね。

 

「魚を食べたらパサパサしていて喉につっかかる」というマイナス経験をすることになります。

 

すると「喉につっかかる」=「魚」になってしまうので、その結果「魚が嫌い、苦手」という気持ちになるんです。

1歳以降の「好き嫌い」は、ほとんどの子どもにやってくるものです。

 

「なんで食べないの?」「好き嫌いしないで食べてほしい」という親御さんの気持ちは私もよくわかるのですが、「そういう時期なんだ」「うちの子にも好き嫌いの時期が来たのかな」くらいの感覚で良いと思います。「一生その好き嫌いが続く訳ではない」という意識で、お母さんがネガティブにならなくても大丈だと思いますよ。

保育園だと嫌いなものも食べるのはどうして?

石坂

おうちでは好き嫌いをして食べないものを、保育園では食べるのはどうして?という声もよく聞きます。保育園ではどんな工夫をしているのでしょうか?

もなみ先生

同じ年代のお友達と集団生活をしている中で、楽しく食事が出来ることが一番の要因だと思います。

 

嫌いな食品でも、お友達が美味しそうに食べているのをマネして食べます。

 

保護者の方からは「家では野菜を食べないのに、保育園ではおいしそうに食べているんですね」とよく言われますよ。

 

また 「食育」の取り組みによるものも大きいかもしれません。

石坂

もなみ先生が積極的に取り組んでいる「食育」ですね。

 

たとえば、ピーマンが苦くて嫌いという子どもが多いと思うのですが、そういった場合にはどんな「食育」の取り組みをするのでしょうか?

もなみ先生

たとえば、次のような経験を子どもと一緒にすることも「食育」になります。

 

・ピーマンを栽培してみる

・半分に切ったピーマンから、種をとってみる

石坂

好き嫌いをしてしまう理由として、その「食材に対するマイナスの経験」があると教えて頂きましたが、食材を好きになるきっかけとしては「楽しい(プラスの)経験」が大切なんですね。

もなみ先生

子どもにとってピーマンを育てる、種をとってみるという経験は、同じ年代のお友達と絵を描いたり、砂場で遊んだりすることと同じ「楽しい」というカテゴリに入ったりするんです。

 

「楽しい」という経験と食事(給食)が連動していくと、自然と食べるようになります。

食育の一環で行っているきゅうりの収穫。「食材に触れあう機会をできるだけ作ってあげたいですね(もなみ先生)」

子どもが好き嫌いをする4つの理由と解決策


これまでのお話も踏まえて、子どもが好き嫌いをする理由と、その解決策をお伺いしました。

石坂

子どもが好き嫌いをする背景には、「食材に対するマイナスの経験」があることを教えていただきましたが、他にも理由があれば教えてください。

もなみ先生

大きく分けて、次の4つがあります。

 

1:大人よりも味覚が敏感

2:食感が好きではない

3:食べたことがない

4:食べた後に嫌な経験をした

 

一つずつお伝えしますね。

1:大人よりも味覚が敏感

もなみ先生

子どもの舌は、大人よりも敏感で、繊細です。

 

苦みや辛味などは、自己防衛として敏感に感じ取ってしまいます。

 

大人よりも味覚レベルが高いので、大人がピーマンを食べて「すこし苦い」と感じるところを、子どもは「すごく苦い」と感じます。

石坂

一度苦手意識を持ってしまうと、食べられるようになるまで時間がかかることも多いですよね。

 

苦みや食感が苦手な食べ物を、子どものうちに克服する方法はないのでしょうか?

もなみ先生

一つの具体的な解決策は、 味付けや形を変えてみることです。

 

その際大切なのは、その食材の「何が苦手なのか?」を考えることです。

保育園で出されているメニューの1つのカボチャサラダ。「カボチャをやわらかく茹でて食べやすいようにしています(もなみ先生)」

2:食感が好きではない

石坂

例えばピーマンが苦手な場合、どのように調理するのが効果的ですか?

もなみ先生

ピーマンが苦手な子どもの多くが、次の2つを理由としています。

 

・苦み

・「ジャキジャキ」とした食感

 

苦みは味付けでカバーできますがジャキジャキとした食感は細かく刻んでも残ってしまいます。

 

刻む前に電子レンジで温めたり、湯がいたりすると、柔らかくなってジャキジャキ食感が消えます。

 

実は、こういったひと工夫も、「食育」の一つなんです。

3:食べたことがない

石坂

食べたことがないものでも、好き嫌いをしてしまうのでしょうか?

もなみ先生

子どもにとって、食べたことがないということは、その食材を「知らない」ということです。

 

知らないものを口にするのは、怖くて、困惑してしまうのです。

 

大人でも初めて食べる食材に対して躊躇したり、予想した味と違うとまずいと感じたりしますよね。

 

初めて食べる食材に対しては、目の前で親がおいしそうに食べる姿を見せ「おいしいよ」と暗に伝えるのも、有効な手段かもしれません。

4:食べた後に嫌な経験をした

石坂

先ほど「焼き魚を食べたらパサパサで、喉につっかかって嫌な思いをしたから魚は嫌い」というお話がありました。

 

嫌な経験をすると、トラウマのようになってしまって好き嫌いを改善することが難しくなるように感じます。

もなみ先生

苦手な食材の克服のために、次の3つのことを試してみてはどうでしょう。

 

・同年代のお友達と一緒に食べる

・お腹が空いている時に出してみる

・大人の前向きな声掛け

「みんなで楽しく食べるということはとても大切なんです(もなみ先生)」

同年代のお友達と一緒に食べる

同年代のお友達と一緒に食べることは、子どもにとって「楽しい」という経験になります。

楽しいというプラスの経験によって、苦手な食べ物を克服して食べられるようにする方法です。

たとえば、同年代のお友達と一緒にサンドイッチを作って食べることが、トマトの苦手意識の克服に結びついたりすることもあります。

お腹が空いている時に出してみる

コース料理のように1品ずつ順番に食事を出してみましょう。

特に、子どもが苦手な食材から出してみると効果的です。食事は空腹時ほど美味しいと感じるものです。

野菜からゆっくり順番に食べるのは血糖値の急激な上昇を抑え、一緒に食べる大人の健康にとっても良いことです。

大人の前向きな声掛け

子どもは、会話や言葉の端々から、意味はわからなくても感情を読み取ることができます。

「おいしそう!」「甘くておいしい!」「一緒に食べよう!」といった、大人の声掛けがとても大切です。

自宅での食事は好き嫌いを克服する絶好のチャンス!

石坂

「食育」と聞くと、専門的な知識が必要なのかな?など、身構えてしまう親御さんもいらっしゃると思います。

 

自宅でできる「食育」があれば、教えてください。

もなみ先生

実は、自宅での食事こそが「食育」の絶好のチャンスなんです。

 

たとえば、キャベツが嫌いな子どもの場合、自宅で食育として次のようなことを試してみてはどうでしょう。

 

・キャベツを子どもと一緒にちぎってみる

・ちぎったキャベツを料理に使う

・食事の際、「さっき一緒にちぎったキャベツ、おいしいね」と話をしてみる

石坂

苦手な野菜を栽培して、楽しい経験をさせる考え方と似ていますね。

 

自分で触れた食材が料理として出てくるのは、「楽しい」「うれしい」という感情を引き出せますね。

もなみ先生

他にも、絵本を使った食育もあります。

 

『そらまめくんのベッド』という絵本がありますが、その内容に沿って、そらまめのさやむきを一緒にやってみて、食事で出してみるなども食育の一つです。

 

「楽しい経験」や「絵本」など、子どもが好きなものと組み合わせることで、好き嫌いを克服できることもあります!

無理に食べさせなくても大丈夫。食べられたら褒めてあげよう!

もなみ先生

嫌いなものは無理に食べさせなくても大丈夫です。食べることができたら、たくさん褒めてあげましょう。

また、食べられなくても、怒らないであげてください。

石坂

やはり「食べなかったから怒られた」というマイナスのイメージが、その食材と結びついてしまい、より苦手になってしまう場合も考えられるのでしょうか?

もなみ先生

そうなんです。

 

食べられなくて、親御さんがイライラしていると、子どもはその感情を敏感に感じ取ります。

 

「食べられなかったら怒られた」「食べないとお母さんがイライラする」と食事に対してネガティブな気持ちを持つようになってしまいます。

 

先ほどもお伝えしたとおり、大切なのは「子どもが食事を楽しめること」です。

 

栄養は他の食材からカバーできますので、焦らずに見守ってあげましょう。

世の中のお母さんたちは朝、昼、晩と3食の食事を出しているだけで本当に素晴らしいと思います。子どもを健康に育てなければいけないという重圧を日々感じて悩むことも多いですよね。

1日の中で「こうしなければいけない」という完璧を目指すのではなく、1週間を通してだいたいしっかりと食べられていればそこまで気にすることはありません。それよりも、食事を楽しみにできるような工夫が大切だと思います。

まとめ

ここまで、みらいく高田 栄養士のもなみ先生に、子どもの好き嫌いについてのインタビューをお伝えしました。

改めてポイントをまとめると、次の通りです。

・子どもの好き嫌いでイライラしてしまうのは仕方のないこと
・好き嫌いは、どんな子どもにも訪れる
・好き嫌いがあっても他の食材から栄養のカバーができる
・子どもの好き嫌いは1歳以降で始まることが多い
・苦手な食材について振り返ってみるとマイナスの経験をしているかもしれない
・食材との「楽しい」経験を積み重ねることが大切
・自宅は「食育」の大チャンス。一緒に作ったり、声かけたりするだけでも効果あり
・無理に食べさせなくても大丈夫。食べられたら、沢山ほめてあげる

お子さんの好き嫌いを克服する参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

石坂
長野市在住、20代前半の女性ライター。
子育てポケットでは、栄養士さんを中心にプロフェッショナルな気持ちをお伝えすべく、楽しく取材しています!
普段は小説を読んだり、思ったこと・感じたことを文字にしたりすることが好きです♪

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