1歳の子どもがご飯を食べない3つの理由と4つの対策【栄養士おすすめメニューも紹介】

子どもがご飯を食べてくれないと、栄養不足にならないか心配になったり、いつまでこの状況が続くのか憂鬱になったりするかもしれません。
特に、1歳くらいのお子様を持つ方からよく聞かれる声として、次のようなものがあります。

「おかしを食べるのに食事や離乳食を食べないのはなんで?」「食事を食べたり食べなかったりでイライラしてしまう」「食事の時間になるのが憂鬱で楽しくない」

子どもの食べ物に関する悩みは尽きることがありません。

そこでこの記事では、みらいく高田 栄養士のもなみ先生に、子どもがご飯を食べない理由と対策方法についてインタビューしました。

この記事を読むと、次の5つが分かります。

  • 1歳児がご飯を食べない3つの理由
  • ご飯を食べなくても栄養不足になることはないのか
  • ご飯を食べない時の4つの対処法
  • ご飯を食べない1歳児が喜ぶメニュー
  • 自宅でできる食事の工夫

読むだけで、お子さんがご飯を食べなくなった理由が分かります。また、ご飯を食べてもらう具体的な方法もお伝えしているので、ぜひ参考にしてみてください。

みらいく高田 栄養士 もなみ先生 
食事を通して子どもの成長に関わりたいという思いから、栄養士を目指す。
児童養護施設で13年勤務し現場経験を積んだ後、みらいく高田で栄養士として勤務。産休・育休を経て自身の子どもを育てながら、保育園の子どもの嫌いな食べ物や苦手な食べ物を好きになってもらう工夫として「食育」に取り組んでいる。

【食育とは?】
食べ物に関する様々な知識を学び、食への興味関心を育てることで、子ども達が健全な食生活を送れるように教育すること。

保育園の栄養士に聞いた子どもの好き嫌いを克服する4つの方法

1歳児がご飯を食べなくなる3つの理由

石坂

1歳児が、ご飯を食べない理由として、考えられることはありますか?

もなみ先生

次の3つが考えられます。

  1. 食感・ニオイが好きではない
  2. 好き嫌いが始まっ
  3. お腹が空いていない
もなみ先生

1つずつお話ししていきますね。

1:食感・ニオイが好きではない

もなみ先生

これは、ご飯を食べない理由ランキング第1位です。

子どもは「食感が嫌だった」「苦手なニオイだった」など、少しでも嫌な経験をすると、その経験自体が食べなくなる理由になります。

大人でも苦手な食材を「一口でも食べて」と言われると、食べるのはとても勇気がいることだと思います。子どもであってもそれは変わりません。

もなみ先生

そんな時には、調理の前から食材に触れてもらうと良いです。

たとえば、ピーマンを調理の前に観察して興味を持ってもらいましょう。
ピーマンが調理前とどう変わったか一緒に観察して「固かったのが少し柔らかくなったね」「固いヘタは無くなったから食べられそうだね」「おいしそうなニオイがするね」と子どもに声をかけてみます。

食材に対して興味をもってもらうことで安心感を得て、初めて食べたいと思えるようになります。

2:好き嫌いが始まった

もなみ先生

子どもは、1歳前後になると目につくものが何でも手に取れるので「とりあえず口に入れる」ようになります。

 

反対に「これは安心して食べられるんだ」という経験を重ねることで食べられる食材が増えていきます。

口に何かを入れた時に、

  • 固くて嫌な食感がする
  • 変な味がして食べられない
  • すっぱい
  • 苦い
  • 生臭い

というようなことがあると、自分の身を守るため本能的に「体が受けつけない」ようになります。この反応は年齢が低いほど顕著に見受けられます。

もなみ先生

反対に「これは安心して食べられるんだ」という経験を重ねることで食べられる食材が増えていきます。

幼児期の好き嫌いについては「嫌いなもの」とは決めつけずに「まだ食べられるようになっていない」と考え、焦らずゆっくりと「これは食べていいんだ」と子どもに分かってもらえるように工夫してみましょう。

そして、無理に嫌いなものを克服しようとするより、好きなものを増やすことを楽しんでみてください。

3:お腹が空いていない

もなみ先生

子どもがご飯を食べないという方にお話を聞くと「ご飯を食べないからお菓子をあげている」というパターンが多いです。

お菓子をあげると一時的にお腹が膨れるのですが、満たされないのでまたすぐお腹が空き、お菓子を欲しがります。

その結果、昼食や夕食時にはお菓子やジュースでお腹がいっぱいで、ご飯を食べない(食べられない)、食事以外の時間にお腹が空くというように食事のリズムが乱れてしまいます。

ご飯を食べなくて栄養不足になることはないの?

子どものご飯に関する悩みのなかで最も多かったものが「ご飯を食べなくて栄養不足になることはないの?」という疑問です。

栄養は子どもの成長にも関わるものですから、気になるのも当然です。

石坂

子どもがご飯を食べてくれないと、栄養状態が心配です。栄養不足になることはありますか?

もなみ先生

好き嫌いが原因で深刻な栄養不足になることはまずありません。

子どもが生まれてからすぐの期間を授乳期(じゅにゅうき)と言い、母乳で育ちます。

生後5~6ヶ月頃からを離乳期(りにゅうき)と言い、 なめらかにすりつぶした状態の食べ物(離乳食)を食べさせ始めます。

もなみ先生

子どもは早い子だと1歳頃から好き嫌いが始まり、3歳になる頃には50%程度のご家庭が偏食・少食・食べ過ぎなどで困っているというデータもあります。

画像引用:保育所における食事の提供ガイドライン

もなみ先生

好き嫌いがあっても、お腹が空いたらご飯を食べます。ほかの食材から栄養は十分に摂れるので、栄養不足になることはありません。

年齢を重ねるにつれて好き嫌いは収まっていく傾向にあるので、発育が成長曲線にあてはまっていればそれほど心配することはありませんよ。

1歳以降の子どもにとっての食事とは?

石坂

1歳以降の子どもにとって「食べる」ということは、どんな感覚なのでしょうか?

もなみ先生

「食べる」という「練習」を初めてしているような感覚です。

大人でも同じことが言えます。

たとえば、大人になって初めてピアノを習うとします。初めからスラスラと弾ける人はいません。たくさん練習して、ようやくスムーズに弾けるようになります。

子どもにとっての食事も同じで、たくさん食べられるようになるための練習をしているようなものなんです。

ご飯を食べない時の5つの対処方法

石坂

ご飯を食べない時の対処方法を教えてください。

もなみ先生

次の4つのことを試してみるのはどうでしょうか。

  1. 味付けや形を変えてみる
  2. 楽しい空間を作る
  3. お腹が空いている時に食事を出す
  4. 色々な食べ物を経験させてみる
  5. 「だし」を活用するのもおすすめ

1:味付けや形を変えてみる

もなみ先生

形を変える、味を変える、香りを加えるなどの工夫で改善できる場合があるかもしれません。

1歳以降になると、ハートや星などの形を認識できるようになります。例えば、ハンバーグを楕円形ではなくて、ハートの形やお魚の形にするだけでも喜んでくれます。

もなみ先生

毎日は大変だと思うので、型抜きしたものを冷凍ストックするなどの工夫をしてみてください。

石坂

ハンバーグを一緒にこねるというのも「食育」のひとつですね。

2:楽しい空間を作る

石坂

食事の時間を楽しい空間にする工夫として、自宅でできることはありますか?

もなみ先生

いつも使う食器ではなく、お弁当箱に入れてみる、音楽を流してみる、夏であればバーベキューにして食べてみるなどは自宅でできる工夫です。

大切なことは「いつもとちょっと違う雰囲気」を出すことです。

「いつもとちょっと違う雰囲気」だと、子どもは「食事もいつもと違うのかな」と感じ、いつもより興味をもって食べてくれることがあります。

もなみ先生

保育園では、1年に2度ほど、バイキング形式のように料理を並べ、子どもが自分で選んだ好きなものだけお皿によそうなどの取り組みもしています。

お友達や家族と楽しく食事をしていると、嫌いなものも不思議と食べることができたということもありますよね。食べた時の環境や経験を関連させて、その食べものが好きになることを「嗜好学習」といいます。

食べてよかった(周りの大人が喜んでくれた)、食べたら楽しいことが起きたというように思ってもらうことも、好き嫌いを克服していくための手段のひとつです。

3:お腹が空いている時にご飯を出す

もなみ先生

ご飯を食べない子どもでも、空腹は必ずやってきます。

 

前回の食事や、おやつを食べた時間のサイクルから空腹時を見極めて、食事を出すとすんなり食べてくれます。

石坂

苦手なものを空腹時に出した場合、食べてくれる可能性はありますか?

もなみ先生

十分に考えられます。苦手なものを出す場合は、先ほどお話した「いつもとちょっと違う雰囲気」がより大切になります。

雰囲気を変えるのことは、毎日でなくても大丈夫です。苦手な食材を入れつつ、1週間~2週間に一度だけでも試してみてください。

またバリエーションを増やすことも効果的です。ミキサーを使ったり、細かく切り刻んで料理に入れたりすると、単純に食べやすくなるので苦手な食材を食べられます。

4:色々な食材を経験させてみる

もなみ先生

色んな食材を経験させることで、子どもの好きな食材や嫌いな食材の傾向が分かり、嫌いな食材を食べられるようにするにはどうしたらいいのか考えることができます。

可能であれば、自宅でプランター栽培することをおすすめします。

毎日水やりをして実がなるようすを観察して収穫し、給食に出すという一連の流れで食育を行うことができます。園でもオクラやナス、ミニトマト、ラディッシュなどをプランターで育てています。

もなみ先生

ミニトマトなどは比較的すぐ実を付けますし「自分が育てたトマトを収穫し、食べる」というかけがえのない経験になります。

「きゅうりの収穫は子どもたちにも大人気ですよ(もなみ先生)」

5:「だし」を活用するのもおすすめ

もなみ先生

その他にも、食材によっては「だし」を効かせてみるのも効果的です。

人間が本能的に好きな味だといわれる「だし」が効いていることで、素材の味が活かされ、薄味でもおいしく食べられます。

煮干し、昆布、かつお節などを一晩水に漬けておくだけで簡単にダシをとることができます。

もなみ先生

とても簡単ですのでぜひ試してみてください。

ご飯を食べない1歳児に、おやつはあげてもいいの?

石坂

ご飯を食べない1歳頃の子どもに、おやつはあげないほうがいいのでしょうか?また、好きなものだけ与えるのはダメなことですか?

もなみ先生

おやつをあげること自体は問題ありません。

ただ、幼児期のおやつの本来の役割は「補食」ですので、工夫できる点としては「食事のようなおやつ」を出してあげることです。

たとえば、保育園では蒸しパンやおにぎり、焼きそばなどに乳製品や果物を組み合わせておやつを提供しています。

もなみ先生

一定のものを嫌がったり、食べたりしないのであれば「好きなもの」をベースに作ってみるのはいかがでしょうか。


とはいえ、毎日の手作りおやつは大変ですよね。そんな時は「せんべい+果物+牛乳」「ビスケット+ヨーグルト」というように市販のお菓子にプラスして他の食品を組み合わせると良いでしょう。

取材時のおやつ。とりそぼろのミニおにぎりでした。

1歳児の食事のポイントは?

ここからは、1歳児の子どもの食事で意識したいポイントについて紹介します。

食べ散らかしても気にしすぎない

子どもが食事を食べ散らかしてしまうと、机や床が汚れてしまうので、どうしても気になってしまいますよね。また「お行儀が悪いのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。

もなみ先生

しかし、1歳児の食事では、指で食材に触れたり、食べこぼしても自分の力で口まで運んだり、といったことが大きな成長につながります。

食べ散らかしや食べこぼしが気になるときは、机の下にビニールシートなどを敷いておくと、片付けが楽になります。食べ散らかしも「お子さんが一生懸命食事に向き合っている証拠」と考え、おおらかな気持ちで向き合いましょう。

1歳児に必要な栄養を知っておく

もなみ先生

1歳児に必要な栄養素を含む商材は、次のようなものになります。

  • ご飯・パン類
  • 野菜・果物類
  • 魚・肉・豆腐・卵・乳製品

これらの食材をまんべんなく、上手に取り入れるのがおすすめです。

1歳児の食事量を把握しておく

1歳児の1食あたりのご飯の適量は、ご飯や野菜、魚や肉などすべて合わせて145~180g程度です。

もなみ先生

下の写真のようなイメージですね。

それぞれの食材の目安量

  • 軟飯90g+野菜・果物の合計40g+魚、肉、卵などの合計15g~30g=145g~
  • もしくは、軟飯90g+野菜・果物の合計40g+豆腐50g=~180g

1歳児に適した食事量を理解しておくことで、実際にしっかり食べられていたことに気づくケースもあります。

「3回食をやめる」のは注意が必要

子どもにとって「食事」は、生活リズムの区切りです。1日程度であれば、3回食をやめても生活リズムに支障はありません。

もなみ先生

しかし、継続して3回食をやめてしまうと、すべての生活リズムがくるってしまいますので、3回食をやめるというのは「究極の策」といっても過言ではありません。

一度生活リズムが崩れてしまうと、戻すのが大変です。

実践する場合は、生活リズムが崩れないよう、細心の注意を払う必要があります。

食事を食べない1歳児が喜ぶおすすめメニュー

手づかみ食べができるメニュー

もなみ先生

手づかみ食べをするのは0歳児の子どもがほとんどです。手づかみ食べができるメニューでおすすめなのは「柔らかい固形」です。

石坂

「柔らかい固形」とはどんなメニューですか?

もなみ先生

2つ紹介します。

おすすめメニュー①:いももち

ジャガイモを柔らかくし、一度つぶして、片栗粉を混ぜます。手づかみしやすい大きさに形をととのえて、フライパンで焼きます。

醤油、砂糖、みりんで作ったタレをかけるとよりおいしくなりますよ。

おすすめメニュー②:お好み焼き

レシピは大人が食べるお好み焼きと変わりありません。

お好み焼きのいいところは、肉やシーチキン、野菜など沢山の食材を入れられることです。手づかみができて手間もかからないので、親御さんにとっても嬉しいメニューです。

フォーク、スプーンで食べれられるメニュー

もなみ先生

3歳近くになるとお箸を使って食べる子どももいますが、3歳未満児に保育園で出す給食はすべてフォーク、スプーンで食べることができます。

 

そのなかでも人気なのは、唐揚げ、カレー、ハヤシライス、にんじんしりしりです。

石坂

にんじんは苦手な子どもが多いイメージだったので、にんじんしりしりが人気と聞いて驚きました。何か工夫をしているのでしょうか?

もなみ先生

保育園で出す際は、にんじんを薄くスライスして食べやすくするほかに、ツナや卵を入れてごま油で炒めます。

 

味付けも甘じょっぱくすることで、にんじん特有の臭みも消されるので、子どもたちに大人気です。おかわりもたくさんしてくれますよ!

自宅でできる食事の工夫

石坂

自宅でできる、食事の工夫を教えてください。

もなみ先生

保育園でも実践していることですが、同じメニューを1週間~2週間に一度出すことです。

もなみ先生

メニュー表を見ていただくと分かるのですが、6月1日に出たメニューが、6月16日にも出ています。実は、1日~15日までのメニューを、16日~30日でもう一度繰り返しています。

石坂

同じメニューを繰り返すことで、どんなメリットがあるのでしょうか?

もなみ先生

同じメニューを繰り返すことで、子どもが食べやすいように次回への対策が立てられます。

たとえば、6月1日のメニューに「さばの竜田揚げ」があります。

あまり食べない様子であれば、2度目の6月16日ではあんを絡めるなどの工夫ができます。食べづらそうであれば、切り方を小さくしたり麺を短くしたりします。

「食事中の子どもの様子をよく見て食材に対する反応をつかむことがポイントですね(もなみ先生)」

子どもの食事を作りたくない時は手抜きでもOK

石坂

仕事や家事など忙しい毎日のなかで、毎回食事をきっちりと作ることは大変だと思います。市販のベビーフードやレトルトを活用することについて、ご意見を聞かせてください。

もなみ先生

私自身、現在も子育て中の身ですが、ベビーフードやレトルトの活用は悪いことではないと思います。手軽さはもちろん、栄養も含まれています。

食事を毎回きちんと作るのはとてもいいことですが、たまには息抜きも必要です。

ベビーフードやレトルトもうまく使って、子どもも親御さんも食事の時間を楽しく過ごしてくださいね。

1歳児がご飯を食べないのはいつまで続く?

子どもの食欲が安定してくるのは、3歳ごろといわれています。

1歳児のころは離乳食からのステップアップで、食事の内容が大きく変化します。そして2歳児になると、イヤイヤ期が始まり、どうしても食事に集中できないときもあります。

もなみ先生

3歳ごろになると、徐々に食事の量が安定し、しっかり食べられるようになる子が増えてきます。しかし食事の量や食べるスピードには、個人差があります。まずは、親子で食事を楽しめる環境を目指すことが大切ではないでしょうか。

まとめ

ここまで、みらいく高田 栄養士のもなみ先生にご飯を食べない1歳児についてのインタビューをお伝えしました。

改めてまとめると、1歳児がご飯を食べなくなる理由は次の3つでした。

1:食感・ニオイが好きではない
2:好き嫌いが始まった
3:お腹が空いていない

また、1歳の子どもがご飯を食べない時には、次の4つの対処方法があるともお伝えしました。

1:味付けや形を変えてみる
2:楽しい空間を作る
3:お腹が空いている時に食事を出す
4:色々な食べ物を経験させてみる
5:「だし」を活用するのもおすすめ

子どもがご飯を食べてくれないと心配になりますが、すぐに栄養不足になることはありません。

お子さんにご飯を食べてもらうために、ここでお伝えした方法を試してみてはどうでしょうか。今よりも少しはご飯に対して前向きな気持ちになれるかもしれませんよ。

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この記事を書いた人

石坂
長野市在住、20代前半の女性ライター。
子育てポケットでは、栄養士さんを中心にプロフェッショナルな気持ちをお伝えすべく、楽しく取材しています!
普段は小説を読んだり、思ったこと・感じたことを文字にしたりすることが好きです♪