児童発達支援センターってどんな施設?利用できる子どもは?言語聴覚士が分かりやすく解説します!

突然ですが、みなさんは「児童発達支援センター」という言葉を聞いたことはありますか?
聞いたことはあっても、「どんな施設か詳しく知らない」という親御さんも多いのではないでしょうか?

今回は、言語聴覚士としてお子さんのコミュニケーション支援を専門とする北山先生に、児童発達支援センターについてお伺いしました。

この記事を通して、児童発達支援センターへの理解が深まり、「思ったより気軽に利用できる施設なんだ!」と感じていただけると幸いです。

言語聴覚士 北山先生
長野県出身。大学より小児医療分野に関わることを目指して言語聴覚士の資格を取得。実習では小児分野を多く経験し現在は脳外科に勤務しながら子育てポケットに参画している。2児の母。

児童発達支援センターとはどんな施設?

Manami

北山先生、よろしくお願いします!今回は、児童発達支援センターについて、親御さんの疑問を解消していきたいと思います。

最初に、児童発達支援センターがどういったことを行う施設なのか教えてください。

北山先生

はい。児童発達支援センターは、障がいがあったり、日常生活のなかでお困りごとのある未就学のお子さんが通所する施設です。日常生活のなかの基本的な動作の指導や、集団生活へ適応していくための訓練を受けることができます。

みなさんがお住まいの地域の中核的な療育支援施設として大切な役割を担っていて、現在では、各市町村ごとに1箇所は整備できるように取り組みが進んでいるんですよ。

Manami

そうなんですね!ちなみに「お困りごと」というのは、具体的にどういったことでしょうか?

北山先生

例えば、以下のようなことで日常生活や集団生活のなかで困っていらっしゃるお子さんのことを言います。

  • 発達の遅れ
  • 言葉が出にくい
  • 落ち着きがない、集中力が続かない
Manami

児童発達支援センターの中にも種類があると聞いたのですが…?

北山先生

はい。児童発達支援センターは、福祉サービスを提供する「福祉型」と福祉サービスと併せて治療行為を行う「医療型」の2つがあります。

下記のサイトで詳しく説明がされているので、ご興味のある方はご覧ください。

参考資料:児童発達支援センターの位置づけについて – 厚生労働省

児童発達支援センターの利用条件は?

Manami

児童発達支援センターはどのようなお子さんが利用できるのか、もう少し詳しく教えていただきたいです。

北山先生

分かりました!児童発達支援を受けられる条件は福祉型、医療型によってそれぞれ異なりますが、下記のように定められています。

身体に障害のある児童、知的障害のある児童又は精神に障害のある児童※(発達障害児を含む)手帳の有無は問わず、児童相談所、市町村保健センター、医師等により療育の必要性が認められた児童も対象

引用元:児童福祉法の一部改正の概要について
Manami

以前のインタビューで、発達障がいの「グレーゾーン」について教えていただきましたよね。児童発達支援センターの利用にあたって「手帳の有無は問わず」とのことですが、これは「グレーゾーンのお子さんでも利用できる」ということでしょうか?

北山先生

そうですね。意外に思われるかもしれませんが、発達障がいと診断を受けていなくても、日常生活の中でお困りごとのある場合は利用することができるんですよ。(市区町村での審査があります)

▼参考記事▼

児童発達支援センターにはどんなスタッフがいるの?

Manami

児童発達支援センターは「地域の中核的な療育支援施設の役割を果たす」ということで、専門的なスキルを持ったスタッフさんがいらっしゃるようですね。

具体的には、どういったスキルを持ったスタッフさんがいらっしゃるのですか?

北山先生

施設の個別支援計画によって異なりますが、機能訓練や言語訓練などの専門的な訓練を行う場合は、次のような専門職のスタッフが配置されます。それぞれの役割について、簡単に解説しますね。

理学療法士(PT)

北山先生

理学療法士(PT)は、主に「歩く」、「走る」、「登る」などといった大きな運動機能(粗大運動)の向上支援を担当します。また、一人一人のお子さんに応じた発達課題を見つけ、就学に向けた準備などの支援も担っています。

参考:理学療法士とは|公益社団法人日本理学療法士協会

作業療法士(OT)

北山先生

作業療法士(OT)は、ものを使った小さい運動(箸を持つ、鉛筆を握るなどの微細運動)の発達支援や、私のような言語聴覚士(ST)と一緒に知的分野や高次脳機能の発達支援、発達検査などを行います。

発達障がいに関する専門的な知識を持っているので、お子さんに合わせた支援計画の作成も担当します。

参考:作業療法士ってどんな仕事?|一般社団法人作業療法士協会

言語聴覚士(ST)

北山先生

最後に紹介するのが、言語聴覚士(ST)です。言語聴覚士は、よく「話す、聞く、食べるのスペシャリスト」と呼ばれますが、児童発達支援の現場でも次のような役割を果たしています。

  • 話す…知的発達の遅れや吃音などの音声障がいに対し、評価や訓練を行う
  • 聞く…聴覚に障害を持つ子どもに対して、検査や訓練、言葉の獲得の支援を行う。
  • 食べる…上手に食べられない、上手く飲み込めないといった嚥下障がいに対して原因の追求やリハビリなどを行う

参考:言語聴覚士とは|一般社団法人日本言語聴覚士協会

Manami

それぞれ違ったアプローチから、お子さんの発達支援を行うんですね!

北山先生

そうですね。それぞれの専門知識を活かし、多方面から支援・アプローチを行います。

言語聴覚士は、該当のお子さんへのアプローチはもちろん、ご家族やきょうだい児(障がいを持つお子さんの兄弟姉妹)の心理ケアサポートなども担っています。

北山先生

施設の個別方針によっては、別のスキルに特化したスタッフが在籍している場合もあります。例えば、音楽療法に力を入れている施設であれば、音楽療法士が在籍している、といったイメージですね。気になる場合は、事前に確認しておくと安心かなと思います。

児童発達支援センターで受けられる支援・サービス

Manami

北山先生のおかげで、児童発達支援センターがどんな施設なのか分かってきました。ここからは、実際に児童発達支援センターで受けることができる支援やサービスの詳しい内容について教えてください。

北山先生

分かりました!基本的には通所型の施設となりますので、「障がいのあるお子さん、日常生活の中でお困りごとのあるお子さんを対象とした保育園・幼稚園」と思っていただけるとイメージが湧きやすいのではないかと思います。

医療型と福祉型で内容は異なりますが、具体的には次のような支援やサービスを受けることができます。

福祉型児童発達支援センター

  • 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練など(児童発達支援)
  • 授業の終了後又は休業日に、通所により、生活能力の向上のための必要な訓練、社会との交流の促進等を行う(放課後等デイサービス)
  • 保育所など児童が集団生活を営む施設等に通う障害児につき、その施設を訪問し、その施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援などを行う(保育所等訪問支援)

医療型児童発達支援センター

  • 上肢、下肢または体幹の機能の障害のある児童に対する児童発達支援及び治療(医療型児童発達支援)

引用:WAM NET(運営:独立行政法人福祉医療機構)

以下の参考サイトに分かりやすくまとめられていたので、ぜひご覧ください。

参考:WAM NET(運営:独立行政法人福祉医療機構)

Manami

ありがとうございます。なかには、親御さんが参加できる親子参加型の施設もあるそうですね!

北山先生

そうですね。週に一度「親子通所」を実施している施設などもあります。施設によって支援の内容が異なりますので、気になる場合はお住まいの市区町村へ問い合わせてみてくださいね。

児童発達支援センターの利用方法

Manami

児童発達支援センターの利用を希望する場合、又は検討している場合はどこに連絡したら良いのでしょうか?

北山先生

まずは、お住まいの市区町村の担当窓口に問い合わせをしてみてください。様々な疑問に答えてくれますよ。

ただ、なかにはいきなり市区町村の担当窓口に問い合わせるには勇気がいる…という親御さんもいらっしゃるのではないかと思います。

その場合は、お子さんの健診の際に、気になっていることをお医者さんに相談してみると良いかなと思います。または、保育園や幼稚園に通っているのであれば、先生に相談するというのも良いでしょう。

北山先生

一人で抱え込まず、周りの相談できる方に相談するということが大切かなと思います。

具体的な支援例

Manami

お子さんのお困りごとに応じて、具体的にどんな支援が受けられるのか知っておきたいという親御さんもきっと多いですよね。今回は、2人のお母さんから次のようなご質問をいただいています。

質問1:集団に溶け込むのが苦手なお子さんの場合

「うちの子は、保育園で周りの友だちになかなか溶け込めないようで、このまま今の保育園に通わせて良いのか悩んでいます…。児童発達支援センターに行くとどういった支援が受けられますか?」

北山先生

集団生活に困難を感じているお子さんの場合、まずは一対一のコミニュケーションから始め、少しずつ集団を大きくしていくことで、集団生活に慣れるようなアプローチを行います。

たとえば、人とのコミュニケーションが難しい場合は、ものを通じて人との遊びや関わり方に慣れていくといったアプローチを行う場合もありますね。

質問2:注意が散漫なお子さんの場合

「息子は保育園でじっとしていることが難しく、一人で校庭を歩いていることがあるようです。こういった場合、児童発達支援センターではどういった支援をしていただけるのでしょうか?」

北山先生

まずは、注意が散漫になっている原因を探り、原因を取り除くことから始めます。大人が気付いてあげられていないだけで、身近な意外なところに原因が隠れているということが多いんですよね。

原因となる環境設定を一つでも取り払うことができれば、少しずつ慣れて、同じ環境下でも「大丈夫」だと感じられるレベルを引き上げることができます。

北山先生

社会に出た時に、お子さんが感じる困難を少しでも減らしてあげられるよう、お子さんに合わせて様々なアプローチを行いますので、安心してお任せいただけたらと思います。

まとめ

今回は、言語聴覚士の北山先生に児童発達支援センターについてお伺いしました。
今まで言葉しか聞いたことがなかった方も、児童発達支援センターの支援内容について理解が深まったのではないでしょうか?

  • うちの子は相談するほどではないのでは…?
  • 児童発達支援センターに通所が決まれば、障がいを受け入れたことになるのでは…?

と不安に感じている親御さんも、この記事を読むことで、児童発達支援センターがもっと気軽に相談・利用できる施設であると知るきっかけとなれば幸いです。

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この記事を書いた人

Manami
広島県在住。0歳女の子の子育てに奮闘するママライターです。 自分が今まさに「知りたい!」と思っているテーマを、皆さんに分かりやすくお伝えします!

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