【言語聴覚士が教える】子どもの誤飲・誤嚥(ごえん)を防ぐには?「食べ方」のコツ

赤ちゃんは、身の回りのものに興味津々。ちょっと目を離した隙に、近くにあったものを口に入れてしまったり、食べ物を喉に詰まらせてしまったりするので、気が気でない親御さんも多いことでしょう。

赤ちゃんの口の発達で重要なのが、「飲み込む力」です。

離乳食が始まれば、色んな食材を噛み、飲み込んでいくようになりますが、赤ちゃんは「飲み込む力」が未発達。だからこそ、誤飲や誤嚥といったトラブルに繋がる可能性が高いです。

子どもを危険に晒さないよう、大人が赤ちゃんの「飲み込む力」の発達について理解し、危険な食べ方にならないように注意してあげる必要があります。

今回は、子どもの成長サポートのプロである言語聴覚士の北山先生に、子どもの「噛む力」や「飲み込む力」についてインタビューしました。

この記事を読むと、以下の3つがわかります。

  • 子どもの「飲み込む力」はどう発達していくのか
  • 誤飲や誤嚥を防ぐにはどうすればよいのか
  • もし子どもが喉にものを詰まらせてしまったら、どう対処すればよいか

誤飲や誤嚥はもちろん起こらないことがベストですが、万が一の時に備えて、ぜひ知識を身につけておきましょう。

言語聴覚士 北山先生
長野県出身。大学より小児医療分野に関わることを目指して言語聴覚士の資格を取得。実習では小児分野を多く経験し現在は脳外科に勤務しながら子育てポケットに参画している。2児の母。

子どもはどうやって物を飲み込めるようになるの?

荻野

子どもはどういう過程を経て、ものを飲み込めるようになるのでしょうか?

北山先生

まず赤ちゃんは、母乳やミルクを飲む時に「吸う力」を育てます。その後、離乳食期を経て「食べる力」を身につけていきます。

食べる力、つまり「噛んで飲み込む力」は、一般的に次のように発達します。

4~6ヵ月:離乳初期(ゴックン期)

北山先生

赤ちゃんは、食べることの初期段階では、口や舌を動かして飲み込む一連の動作を条件反射で無意識に行っています。口周りを刺激すると乳首を探すためにそちらを向きますし、口に柔らかいものが触れると唇と舌で捉えようとします。

離乳初期になると、そういった条件反射がなくなり、舌を自分の意志で前後に動かせるようになってきます。しかし、まだ完全ではないため、唇と舌と下顎の運動を分けて行うことができません。飲み込むだけで潰したりできないので、ポタージュ状のものを与えるようにしましょう。

7~8ヵ月:離乳食中期(モグモグ期)

離乳食中期になると、口唇と舌と下顎の動きが分離してきます。食べ物を食べる時に口の前方を使って取り込み、舌と上顎を使って食べ物を潰して食べることが可能になります。また、潰したものをひとまとめにする動きもでき始めます。

北山先生

この時期には舌で潰せる様々な食感の食べ物を食べさせてあげるとよいですね。まだ発達段階なので、ものによってはとろみをつけてあげるなど、赤ちゃんが食べやすいよう工夫をしてあげましょう。

9~11カ月:離乳食後期(カミカミ期)

北山先生

歯茎の上に食べ物を乗せて、歯茎で潰せる固さのものが食べられるようになります。まだ未熟ですが、大人の咀嚼と近い動きができるようになってきます。

モグモグ期より少し固めの食べ物も食べられるようになりますが、まだ歯も生え揃っていないので、もし少し固めの食事を嫌がったら、モグモグ期の食事に戻しても全く問題ありません。

12~18カ月:離乳から幼児食への移行期

歯が上下とも生えてきて前歯で噛み切れるようになり、歯茎で噛める固さのものが食べられる時期ですが、一口の量や食べるペースなどを大人が注意して見てあげましょう。大人の食事よりも味が薄めで、少し柔らかめのものを与えるとよいですね。

北山先生

3歳頃には、乳歯が生え揃い奥歯でも擦り潰せるようになります。ただ、噛む力はまだまだ弱いので、硬いものは噛めずに丸呑みしてしまうこともあります。噛む力の成長度合いに応じて硬さや大きさを調節していきましょう。

荻野

月齢に合わせて固さを調節していくことが、発達の助けになるのですね!

北山先生

その通りです。

スプーンで流し込んだり、月齢が上がっても柔らかいものばかり食べさせていると、口の力が発達しなくなります。

発達段階の目安としては下記の通りです。参考にしてみてください。

  • 2ヶ月 吸える(哺乳)
  • 3ヶ月 仰向けで口に手を持っていく
  • 4ヶ月 指しゃぶりをたくさんする
  • 5ヶ月 しゃぶったり吸ったり(何でも)
  • 6ヶ月 スプーンから飲む
  • 7ヶ月 取り込んだ食べ物を舌を動かして口の奥へと送って飲み込む
  • 9ヶ月 (ビスケット等を)自分で持って食べる
  • 10ヶ月  (バナナ等を)前歯・奥歯でかじり取る
  • 11ヶ月 歯(歯茎)の上にものを乗せて噛む・ストローで飲む
  • 12ヶ月 1人で手づかみで食べることができる
  • 13ヶ月 唇を突き出すことができる

飲み込む力は子どもの発達にどう影響しているの?

荻野

赤ちゃんの「食べる力」は、言葉の発達と関係しているのですか?

北山先生

食べることで口の筋肉が発達していきますが、口の筋肉の発達は、はっきりと話すために必要な条件です。

ものを食べる時には、「口を閉じる」「噛む」「舌で奥に送り込む」という動きをします。食べる動きの中で唇と舌をよく使うと、言葉を話す際に必要な筋力や動きを習得することができます。唇と舌を正しく使えるようにすることで、正しい発音が生まれるのです。

荻野

しっかり口を動かして食べることが、上手なおしゃべりにつながるのですね!

北山先生

そうです。例えば、「さしすせそ」が上手に言えなかったり、発音が曖昧で聞き取りにくかったりする子どもを観察していると、食べ方に癖があることが多いです。おそらく、普段あまり噛まずに飲み込んでいたり、いつも柔らかいものを食べていたりするのかもしれません。

麺をすすれない、いつも口がぽかんと開いている、ペットボトルで飲むとこぼしてしまうというのも、口の機能が未発達の時に見られるサインです。毎日の食事や遊びの中で口を鍛え、はっきりと話すための基礎が作れるとよいですね。

誤飲や誤嚥(ごえん)を防ぐためには?

荻野

子どもが変なものを口に入れたり、食べ物が喉に詰まってしまったりしないか心配な親御さんも多いようです。

北山先生

そうですね。食べ物ではないもの(紙くずやコインなど)を飲み込んでしまうことを「誤飲」、うまく飲み込めずに食べ物が気道に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。どちらも、窒息や消化器官のトラブルに繋がりかねない危険な状況です。

まず「誤飲」に関しては、比較的幼い子どもに注意が必要です。口に入る大きさのものは手の届く範囲からは遠ざけるなど、注意をしましょう。

荻野

誤嚥しやすい食べ物はどんなものがありますか?

北山先生

代表的なものは、「丸いもの・固いもの・パサパサして唾液を吸収し飲み込みづらいもの」です。トマトやぶどうなどの丸いものは、4歳くらいまでは1/4にカットして与えましょう。また、嫌いなものを食べている時は口の動きが悪くなる傾向がありますので、気をつけましょう。

豆やナッツ類などは、特に注意が必要です。ピーナッツを誤嚥した事例では、噛み砕いたピーナッツが肺の入り口まで入り込み、手術が必要になったケースもあります。

ピーナッツは油分を多く含むので、肺胞にダメージを与えてしまうことがあるのです。消費者庁は、豆やナッツ類などの硬くて噛み砕く必要のある食品は、5歳以下の子どもには与えないよう注意喚起しています。

荻野

子どもに食べさせる時には、食品の形状にも注意が必要ですね。主にどんなことに気をつければよいですか?

北山先生

まず食品の形状ですが、大きいものは刻むなどして食べやすくしてあげましょう。

また、食事中は正しい姿勢で、食べることに集中するのが理想的です。おしゃべりしたり笑ったりしながら食べると、気道が広がっている状態で飲み込むことになるので、誤嚥のリスクが上がります。

生後7〜8ヶ月になったら、姿勢もチェックしましょう。

  • 下にずり落ちないか(ベルトやガードで支えてもよい)
  • 体が背もたれと離れすぎていないか、前かがみすぎないか
  • 足が地面にしっかりついているか

9ヶ月ころには下記のことも加えてチェックしましょう。

  • 急に立ち上がったりしないようにする
  • 膝はほぼ直角にして、足をブラブラさせない
  • テーブルは肘がギリギリつくくらいの高さにする
北山先生

丸呑みも危ない兆候の一つです。

子どもの食道の幅は小指の先ほどしかなく、口の大きさに対してかなり小さいので、丸呑みをしてしまうと喉に詰まるリスクがあります。
それだけでなく、丸呑みをしていると舌と口の発達が進まないので、発声にも影響してきます。

北山先生

丸呑みへの対策としては、下記のような内容があります。

  1. 汁物から与えて、空腹すぎる状態で固形物を食べさせない
  2. 食べることを急かさず、20〜30分かけて食事をさせる
  3. 食べ物を水分で流し込まない
  4. 一口の量を調節して与える 
  5. 硬さを調節する 
  6. 唇をしっかり閉じて食べる食べ方を習得させる
北山先生

また、「カミカミ・モグモグしようね」などの声掛けを行ったり、食材を少し長細くしてかじり取る練習をさせたりすることも効果的です。歯の発達にもよい影響をもたらすでしょう。

子どもを泣き止ませようと食べ物を与えることもあると思いますが、泣いている時にものを食べさせると危険な状況になりかねないので、止めましょう。誤嚥を防ぐためには、姿勢を正して集中して食べることが大切です。
他にも、動き回りながら食べる、仰向けで食べる、寝転んで食べる、口にたくさんものを詰め込むという行動も危険です。

荻野

集中して食べさせたいですが、子どもはじっとしていなかったり、一口の量がバラバラだったりして、食べさせるのが大変です。

北山先生

そうですよね。子どもはなかなか集中力が続かないですし、つい楽しい遊びに目が行きがちです。ですが、もし喉に詰まってしまったら一大事です。口に食べ物が入っている時にはしゃべらない、動かない、横にならないということだけでも注意しましょう。

「ゴックンしてから動こうね」と繰り返し伝えるだけでも、少しは改善されると思います。

子どもは一口の量が安定していないので、一口大にして食卓に並べたりスプーンに適量をすくってあげたりして、フォローしましょう。

荻野

誤嚥を防ぐためのコツはありますか?

北山先生

子どものペースでゆっくり落ち着いて食べさせるのが一番ですが、その他にも下記のことに注意してください。

  • 一口を適切な量にする
  • 子どもが飲み込んだのを確認してから次の一口を入れる
  • 汁物や水分を適度に取らせて、喉にうるおいを与える(あげすぎると唾液が少なくなることがある)
  • 食事中に驚かせない
北山先生

子どもの誤嚥を防ぐには、「口に入れる食べ物への注意(大きさや固さ、NG食材の管理)」と、「子どもの食べ方への注意」の二つの方向からのアプローチが必要です。特に5歳頃までは、食事中にお子さんから目を離さないようにしましょう。

もし子どもが誤嚥してしまったら?

荻野

気をつけていても万が一子どもが誤嚥してしまったら、どう対処すればよいのでしょうか?

北山先生

子どもが喉に食べ物を詰まらせると、顔色が悪くなる、ヨダレが出る、意識がなくなる・・・といった窒息のサインが現れます。様子がおかしいと感じたら、すぐに119番に連絡して応急処置を始めましょう。

1歳未満の乳児の場合は、赤ちゃんをうつ伏せにして背中を打つ「背部叩打法」と、仰向けにして胸の真ん中を圧迫する「胸部突き上げ法」を行います。

1歳以上の場合は、子どもの背中から両手を回し、みぞおちのあたりをギュッと押す「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」を行います。

北山先生

窒息時の応急措置は、日本医師会のサイトに分かりやすくまとめられているので、一度目を通しておくことをおすすめします。

まとめ

ここまでのインタビューで、以下のことがわかりました。

  • 子どもは月齢にあった食事を通して口の筋肉を発達させ、「飲み込む力」をつけていく
  • 口の力を発達させると言葉の発達も同時に促すことができる
  • 誤飲や誤嚥を防ぐには、正しい姿勢で集中して食べさせることが大事
  • 子どもが喉にものを詰まらせてしまったら、「背部叩打法」や「胸部突き上げ法」、「腹部突き上げ法」など状況に合った適切な応急処置をとる

子どもの誤飲・誤嚥は、命に関わる危険な状況です。食品や食べ方には十分気をつけて、食事の時間を楽しんでくださいね。

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この記事を書いた人

荻野
大学時代は法律を学んでいたため児童発達分野は全くの素人。
専門家さん達の話を楽しくうかがいながら日々勉強中のライターです。

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