時期ごとの流産の確率はどのくらい?流産の可能性を最小限に抑えるには

待望の妊娠、ママになる女性は喜びと不安の両方を胸に抱えていることと思います。
特に妊娠初期には、流産したらどうしようと心配な妊婦さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

どんなに気を付けても、すべての流産を防ぐことはできませんが、やはりできる限りのことはしたいもの。

そこで今回は看護師の新井さんに、時期ごとの流産の確率や、流産の可能性を最小限にするための妊娠中の過ごし方のポイントを教えていただきました。

れいこ先生
みらいく高田 看護師
新井れいこ
2018年より「病児保育室おひさま」に勤務。
不安な時に利用する病児保育室だからこそ、子どもたちが安心して過ごせるよう、親御さんに預けてよかったと感じていただけるよう務めています。

流産とは?

yamada
山田

改めて「流産」について教えて下さい。

れいこ先生
れいこ先生

日本産婦人科学会によると、母体や胎児の異常にかかわらず「妊娠22週目(赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数)よりも前に妊娠が終わること」を、すべて「流産」と定義しています。

流産のうち、出血し赤ちゃんが子宮の外に出かかっているものを「進行性流産」、赤ちゃんが子宮の外に出てしまったものを「完全流産」、子宮内で赤ちゃんの心音が確認できなくなったものを「稽留流産」と言います。

流産はなぜ起こる?

yamada
山田

流産は、なぜ起きるのでしょうか?

れいこ先生
れいこ先生

時期によって考えられる原因は変わります。

早期流産の場合

12週未満の流産を「早期流産」と呼びますが、そのほとんどが受精卵の染色体異常などによって赤ちゃんが正常に成長できずに、妊娠が終了してしまうケースです。

後期流産の場合

12週から22週未満に起こる流産を「後期流産」と言い、胎児の染色体異常のほか、子宮筋腫、子宮奇形、子宮頸管無力症、絨毛(じゅうもう)膜羊膜炎、内分泌異常など、母体側の異常によるものが増えてきます。

れいこ先生
れいこ先生

また、インフルエンザなど子宮以外の感染症や、過度な運動でも後期流産が起こる可能性があります。

妊娠時期ごとの流産の確率は何%?

yamada
山田

それぞれの時期で、流産は何%くらい起こってしまうのですか?

れいこ先生
れいこ先生

全妊娠の約15%で流産が起こり、その内訳は早期流産で13.3%後期流産は1.7%と言われています。また妊娠時の年齢が上がるにつれて受精卵の染色体異常の増加や、子宮機能が低下してくるため、流産してしまう確率も上がります。

不育症による流産

yamada
山田

流産の原因に「不育症」というものがあると聞いたことがありますが、「不育症」とは何ですか?また、どの程度の確率で起こりえますか?

れいこ先生
れいこ先生

「不育症」とは、妊娠は成立するものの流産や死産を繰り返す状態のことを指し、続けて二回繰り返す場合を反復流産、三回以上を習慣流産と呼びます。

その主な原因は、受精卵の染色体異常によるものや、母体の先天性子宮奇形、自己免疫疾患である抗リン脂質抗体症候群、カップルのどちらかまたはその両方の染色体異常とされていますが、受精卵や母体に異常が認められない原因不明のものもあります。

れいこ先生
れいこ先生

その発生率は妊娠を望む女性の中で、反復流産が約4%、習慣流産は約0.8%と言われています。

安定期はいつから?

yamada
山田

流産と言っても、いろいろなパターンがあることを知って驚きました。

妊娠中期になるといわゆる「安定期」に入り、流産の可能性も減るとイメージです。安定期に入ると体の不調がおさまる人も多いと聞きますが、安定期とは具体的にいつ頃のことですか?

れいこ先生
れいこ先生

医学的には安定期というものはありませんが、大体妊娠15週頃までに胎盤が完成し、妊娠初期のホルモンバランスの変化が落ち着くので、上昇していた基礎体温が徐々に下がり熱っぽさやだるさが改善されて身体が楽になってきます。

つわりも落ち着いてきて流産の可能性も下がる妊娠中期頃を、「比較的安定して妊娠生活を送れる時期」という意味で一般的に安定期と呼ぶようです。

流産の可能性を最小限に抑えるためには?

yamada
山田

妊娠初期の流産をできる限り防ぐため、妊婦さん自身や周囲の人が気を付けることはありますか?

れいこ先生
れいこ先生

受精卵の染色体異常で起こる初期流産は、残念ながらどんなに気を付けていても防ぐことはできませんが、それ以外の要因で起こる流産の中には防げるものもありますので、大事なことをいくつかご紹介します。

必ず妊婦健診を受ける

妊婦検診では、赤ちゃんの成長やお母さんの身体の変化といった妊娠の経過だけでなく、様々な疾患や流産の兆候の有無なども確認しています。

れいこ先生
れいこ先生

お腹の張りや、おりものの変化など気になることがあれば、些細なことでも相談しましょう。

激しい運動を避ける

妊娠前から継続している運動を止める必要はありませんが、競技性の高いもの、腹部に圧迫が加わるもの、瞬発性のもの、転倒の危険があるもの、相手と接触したりするものはNGです。

また、運動強度は自身が楽に行える範囲が望ましいです。継続して行っている運動でも、妊娠の経過によっては制限が必要な場合がありますので、必ず医師に相談しましょう。

れいこ先生
れいこ先生

妊娠後に新たに運動を始める場合は、医師に相談した上で妊娠12週以降に行いましょう。ウォーキングやマタニティヨガなど、ゆったりとした動きで転倒の恐れのないものがおすすめです。

休息と睡眠をしっかりとる

疲労や寝不足・過度なストレスを受けると交感神経が優位な状態が続き、免疫力が下がってしまいます。そのため膣の自浄作用が弱まり、炎症が起きやすくなるため、切迫流産を招くことがあります。

れいこ先生
れいこ先生

妊娠中は、身体も心も無理せずに過ごすことが大切です。

旅行などの遠出を避ける

長時間や長距離の移動は、思ったよりも体に負担がかかります。また、いつもと違う環境では疲労に気づきにくく無理をしがちで、旅先でそのまま入院という事例も少なくありません。

特に海外で異常が起きた場合、医療機関へ受診することが難しかったり、保険が効かないため莫大な医療費がかかったり、帰国が難しくなることもあります。

れいこ先生
れいこ先生

旅行や遠出の計画をする際は、必ず医師に相談しましょう。

喫煙を控える

日常的に喫煙をする人の流産率は非喫煙者の2倍、特に後期流産への関連性が高いと言われています。また、流産せずとも心奇形の発生率も上がるとされています。

れいこ先生
れいこ先生

副流煙も有害ですので、妊婦さん自身だけでなく、同居している家族も喫煙は控えましょう。

カフェインを控える

1日300mg以上の摂取は流産リスクを高めると言われています。カフェインの含まれる飲み物を飲むときは1日の摂取上限量(コーヒーなら350㎖程度)を超えないように気を付けたり、ノンカフェインに替えたりして楽しみましょう。

感染症予防

れいこ先生
れいこ先生

流産を引き起こすとされる感染症がいくつかあります。

麻疹・風疹

子どもの頃にかかっている人もいますが、妊娠初期にかかると流産の原因となってしまいますので、予防接種歴や罹患歴がなく、あっても抗体価が低くなっている人は要注意です。

れいこ先生
れいこ先生

妊娠中の女性は予防接種が受けられないため、パートナーや同居家族が予防接種を受けるのも大切な感染対策のひとつです。

りんご病(伝染性紅斑)

子どもがかかると解熱後に頬がりんごのように赤くなることで知られる感染症です。大人では風邪と同じような症状で、知らないうちにかかっていることもあります。

胎児水腫(赤ちゃんのお腹などに水が溜まり、身体がむくむ状態)を引き起こし、流産や死産につながることもあります。予防接種や予防薬はないため、りんご病にかかったことのない妊婦さんは、りんご病が流行っている地域では外出をなるべく控え、特に家族以外の子どもとの接触は控えましょう。

れいこ先生
れいこ先生

また、自身の子どもであっても食べ残しを食べたり食器を共有したりしないようにしましょう。

   絨毛(じゅうもう)膜羊膜炎

免疫力の低下や性病などで起きる絨毛膜羊膜炎なども流産を引き起こす原因の一つです。過労やストレスで膣内の酸性度が保てなくなると、常在菌や普段はあまり影響がない雑菌でも炎症が起きてしまいます。

れいこ先生
れいこ先生

また性交渉の際は妊娠中でも必ず避妊具を使用しましょう。

紹介した以外にも流産を引き起こす感染症はありますが、どれも妊婦さんや家族が協力して感染対策をすることで、防ぐことができます。なるべく人込みを避け、うがい手洗いをしっかり行いましょう。

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異常を感じたら早めに受診する

れいこ先生
れいこ先生

妊娠中の出血や、腹痛・お腹の張りは流産の徴候のひとつです。

とはいえ、そのほとんどは妊娠の経過としてよくある症状でもあるので、「これくらいで病院行ってもいいのかな?」と受診をためらいがちですが、きちんと医師の診察を受けて確認してもらいましょう。

また、おりものの量や色、においの変化、陰部のかゆみがある場合、膣の炎症が起きている可能性があるので注意が必要です。膣の炎症が進むと流産に繋がることもあるので、早めに治療を受けましょう。

問題がないと診断された場合でも、診察を受けた後に症状が強くなったり頻度が増えたりする時は、再度受診しましょう。

妊娠中の注意点

yamada
山田

妊娠初期だけではなく、中期や後期に気を付けておくとよいことがあれば教えて下さい。

れいこ先生
れいこ先生

上記でお伝えした「流産を防ぐためにできること」は、妊娠期すべての時期において大切なことです。

22週以降はつわりも落ち着き、食事が美味しくなってきたり、すぐお腹が空いたりする時期でもありますが、妊娠中の食べ過ぎは妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を招くことがあるので、量や内容に気を付けたいですね。

まとめ

今回は、時期ごとの流産の確率と流産の可能性を最小限に抑える方法について、看護師の新井さんに教えていただきました。

全妊娠の約15%で流産が起こり、そのうち早期流産で13.3%、後期流産は1.7%ということでした。12週未満に起きる「早期流産」のほとんどが、受精卵の染色体異常などによるものです。

12週から22週未満に起こる「後期流産」は、胎児の染色体異常のほか、母体側の異常や感染症、過度な運動によるものが増えていくということがわかりました。

感染症対策をしたり休息や睡眠をたくさんとったり、妊婦さん自身や周りの方が気を付けることで防げる流産もありますので、知識を身に着けて身体をいたわりながら過ごして下さいね。

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この記事を書いた人

yamada
山田怜奈
長野県立大学グローバルマネジメント学科2年の学生ライターです。こどもについてもっと知っていきたいです!

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