「他の子のおもちゃばかり欲しがる」
「貸してくれないと手を出してしまう」
2歳前後は、そんなおもちゃの取り合いをめぐるトラブルがとても多い時期。相手のママがいる手前、つい自分の子どもを叱りつけてしまう人も多いのではないでしょうか。
「でも、本当は怒らずに解決したい…」 そう思ってはいませんか?
そこで今回は、大学で保育を学んでいる学生が保育士のみき先生に、「保育園でのおもちゃの取り合いへの対処法と子どもの成長につながる関わり方」についてインタビューしました。
この記事を読むと、次の4つがわかります。
- おもちゃの取り合いはなぜ起こる?
- おもちゃの取り合いが起こったときの対処法と叱り方
- おもちゃの取り合いが起こったときの対処のポイント4つ
- おもちゃの取り合いでどうしても譲れないときは
子どもの成長にとって大切なことは、「自分で解決できる力」を身につけることです。そのための関わり方について、理解を深めていきましょう!
みき先生
地元の公立園で10数年勤務し、みらいくに入職して3年目になります。 保護者の方の気持ちに寄り添い、大切なお子さまの成長を共に喜び合いながら日々保育をしています。
目次
おもちゃの取り合いはなぜ起こる?
こんにちは、長野県立大学で保育を学んでいる金子です。
今回は2歳の男の子を育てているママから、「いつも友達とおもちゃの取り合いになってしまって悩んでいる」という内容のご相談を預かってきました。最近では人のものばかり欲しがって、すぐに手が出てしまうそうです。
金子さん、こんにちは!よろしくお願いします。
2歳前後は、他人のものが気になる年頃ですからね。そうした場面は本当に多いです。元気な男の子だと、思うようにならない時に手が出てしまうことも多いですよね。
同年代の子どもが集まる遊び場でも、ずっと他のママに謝ってばかりいるそうです…。
子どものために外に連れて行きたいと思っても、ママ自身が疲れてしまって行くのが億劫になるようです。どうしてこんなに取り合いになるのでしょうか?
毎回おもちゃの取り合いになってしまうのは大変ですよね。でも、おもちゃの取り合いも大切な発達段階のひとつなのですよ。
「自分はこうしたい」という意思が表れてきた証拠です。生後8〜10か月頃になると、赤ちゃんには「自分のもの」という意識、執着心が芽生えます。2〜3歳までは他人のものと自分のものの区別がつかないので、他の子のおもちゃを取ろうとしまいます。
他の子のおもちゃも自分のものだと思っているのですね!
そうですね。1歳を超えると取り合いをするようになるので、同じようなおもちゃを保育園ではたくさん用意します。
もし1個のおもちゃの取り合いをしている時は、気持ちがすぐに切り替わりやすい年齢ではあるので、先生が手遊び・絵本など誘ってみたり、他に楽しい遊びがあることを伝えたりしています。
ですが、ほとんどの子どもは成長するに従って、次第に他人のものとの区別がつくようになっていきます。
相手の気持ちを考えられるようになってくると、譲ることもできるようになります。3~5歳頃には、集団生活を経験するうちに少しずつ「順番」や「時間」などのルールも理解できるようになり、おもちゃの取り合いも少なくなりますよ。
おもちゃの取り合いが起こったときの対処法と叱り方
おもちゃの取り合いも子どもの成長課程ということですね。
でも、相談してくれたママのお子さんは、いつも手が出てしまっているという点が気になります。そのママいわく、「他の子にも悪いし、何度言っても聞かないので困っている」とのことです。
おもちゃの取り合いが起こったときは、次のように対処しましょう。
〈おもちゃの取り合いの対処法〉
- できるだけ見守る
- 別のおもちゃを提案する
- 手が出そうなときは子どもと一緒にその場を離れる
まずは頭ごなしに怒るのではなく、できるだけ見守りましょう。
1歳前後の小さな子どもならまだ執着心もそれほど強くないので、他のおもちゃを提案することで興味が逸れることも多いです。しかし、相手を叩いたり、強い力でおもちゃを奪いそうになったりしたときは、まずその場から離れ、お子さんを落ち着かせて話をしてみましょう。
どんなふうに話せばよいですか?
子どもと話をするときは、次の順序を大切にしてください。
- 「共感」……子どもの意見を聞く
- 「代弁」……子どもの気持ちを代弁する
- 「提案」……解決策を提示する
詳しく説明しますね。
① 「共感」……子どもの意見を聞く
大人でもそうですが、自分のしたことを頭ごなしに否定されてしまうと、素直に反省しようとは思いません。反発心が生まれて、余計に反抗的になってしまいます。まずは子どもの気持ちをよく聞き、「共感」してあげることが大切です。
② 「代弁」……子どもの気持ちを代弁する
共感とともに、子どもの気持ちを「代弁」してあげてください。小さな子どもの場合は特に、自分自身の気持ちをうまく言葉にできないことから、感情のコントロールができなくなります。
「このおもちゃが使いたかったんだね」「貸してくれなくて悲しかったんだね」と、親が代弁してあげることで、少しずつ自分の気持ちを整理できるようになっていきます。
③ 「提案」……解決策を提示する
子ども自身の成長のためには、子どもが自分の意思でどうするかを決めることが大切です。そのため、「お友達が悲しそうだけど、貸してあげる?」「あと◯回遊んだら貸してあげる?」と言うなど、「提案」という形で解決策を提示しましょう。
確かに、頭ごなしに怒ったりおもちゃを貸すことを強要したりするほうが、子どもは反抗的になってしまいそうですね。毎回は大変そうですが、気をつけて話してみるとよさそうです。
繰り返し伝えることで、子どもは成長していきます。毎回のことだとママは大変ですが、諦めずに向き合ってあげてください。経験するうちに少しずつ身についていくものです。
解決できなくても、気持ちに共感してあげることが大切です。
小さい頃にママからたくさん共感してもらえると、「ママは自分の味方だったんだ!」「自分の気持ちをママは分かってくれたんだ!」という嬉しい気持ちが積み重なって、心がしっかり育っていきますよ。
おもちゃの取り合いが起こったときの対処のポイント4つ
相談者のママも、もしかしたらこれまではおもちゃを他の子に譲ってあげられないことばかり気にしてしまい、自分の子どもの気持ちを優先していなかったのかもしれませんね。
もしもこれまで頭ごなしに怒ってしまっていたとしても、これから変えていけば大丈夫。必死に子どもと向き合ってこられた証拠ですから、自分を責めないでと伝えてくださいね。
これからおもちゃの取り合いが起こったときには、次の4つのポイントを意識してください。
- 頭ごなしに叱らないこと
- 相手より子どもの味方になってあげること
- 子ども自身に考えさせること
- できたことを褒めること
子どもにとって、ママは1番の味方でいてほしい存在です。ママがいつも味方でいてくれると、ママが心の安全基地となり、心がのびのびと育っていきます。
そのためには、頭ごなしに叱らず「共感」することが大事。さらに、成長のためには子ども自身が考える力を育む必要がありますから、解決策は子ども自身に決めさせるよう誘導しましょう。
子ども自身に決めさせるというのは、「提案」をする、ということでしょうか?
2〜3歳頃までは、自分で解決するのは難しいので、ママが提案してあげたほうがよいでしょう。子どもが泣いたり怒ったりしている状態だと難しいですが、少し待って落ち着けば、自分で考えることもできます。一旦落ち着いた後に提案することが大切です。
具体的には、「これとこれ、どっちにする?」「時計の針がここまできたらあの子に貸してあげる?」「こっちのおもちゃはすぐ使えるけれど、あっちは待つよ。どっちにする?」などです。
3歳を過ぎて少し考える力がついてきたら、「どうしたらよいと思う?」と、子ども自身に問いかけてあげましょう。考える機会を作ってあげることで、より成長につながります。
- 2〜3歳……大人が出した提案から「選択」させる
- 3歳以上……子ども自身にどうすればよいかを考えさせる
もちろん、子どもの成長は個人差が大きいので、いつから自分で考えられるかはその子どもによります。年齢で考えるのではなく、少しずつ子ども自身に考えさせる機会を増やしていけるとよいですね。
親が「こうしなさい」と押し付けない、ということですね。
そうですね。4つめのポイント「できたことを褒める」も大切です。順番が来るまで待っていた方がよさそう、と子どもが理解している様子であれば、取らなくてよかったね、ちゃんと順番が来るまで待てたね、と褒めてあげましょう。
おもちゃの取り合いでどうしても譲れないときは
ポイントは理解できましたが、小さいうちはなかなか時間がかかりそうです。早くおもちゃを譲れるようになるくらい成長すれば別ですが。
おもちゃを譲れることが、必ずしも「正解」や「ゴール」というわけではありませんよ。中には自分の気持ちを伝えることが苦手で、貸したくなくても「イヤ」と言えず貸してしまう子どももいます。
イヤなときは「イヤ」と言えることも大切です。子どもが「イヤ」と言えなくてもじもじしている時は、「ごめんね、今は貸せないんだって」と子どもの気持ちを代弁して相手に伝えてもOK。できるだけ子どもの味方になってあげてください。
「今は貸したくない」と自分の気持ちを伝えられたら、それもプラスに捉え、認めてあげましょう。
貸せなくてもOKなのですね!そう思うと、ママも少し気が楽になりそうです。
今は貸せなくても、そのあと相手が悲しそうだった…など、自分がしたことで相手がどんな反応をするかを学ぶことも一つの経験です。一見マイナスのように見えても、積み重ねることで成長につながるのですよ。
できなかったことも経験なのですね!
そうです。だからママは、もしも子どもが他の子におもちゃを譲ってあげられなくても、心配しすぎないでくださいね。おもちゃを貸せない経験も、必ず成長につながっていきますから。
まとめ
おもちゃの取り合いは、どんな子どもにも訪れる成長の証です。自我の芽生えにより、「これが欲しい!」という主張ができるようになるのです。
おもちゃの取り合いが起こってしまったときは、次のように対処しましょう。
〈おもちゃの取り合いの対処法〉
- できるだけ見守る
- 別のおもちゃを提案する
- 手が出そうなときは子どもと一緒にその場を離れる
おもちゃの取り合いについて話をするときは、次の順序で話しましょう。
〈話をするときの順序〉
- 「共感」……子どもの意見を聞く
- 「代弁」……子どもの気持ちを代弁する
- 「提案」……解決策を提示する
対処のポイントは、次の4つ。
〈対処のポイント〉
- 頭ごなしに叱らないこと
- 相手より子どもの味方になってあげること
- 子ども自身に考えさせること
- できたことを褒めること
子どもと話をした結果、もし子どもがおもちゃを他の子に貸せなくても、マイナスに捉える必要はありません。どんな経験も成長につながりますので、今はありのままの子どもの気持ちを受け止めてあげてくださいね。
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この記事を書いた人
長野県立大学健康発達学部こども学科1年の学生ライターです。大学では日々保育について勉強中。少しでも子育ての役に立つような情報をお届けしたいと思っています!