「乳児」と呼ばれる、出生から1歳になるまでの赤ちゃん。乳児期の赤ちゃんの発育は著しく、1年で体重は3倍に、身長は1.5倍に成長すると言われています。
そして、この大事な成長期には、乳児の体づくりに重要な栄養素をしっかりと摂取してもらう必要があります。
そこで今回は、「授乳期から離乳食期の乳児に必要な栄養素」について、栄養士のえりな先生に詳しくお話を伺いました。
普段のミルクや離乳食で栄養素が足りない場合、どのように補うとよいかもご紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね!

えりな先生
市内の保育園で9年間給食に携わった後、昨年の4月からみらいく保育園に入職しました。子どもたちの食べたい気持ちを大切にする給食作りを心掛けています。
目次
はじめに

今回は、乳児が摂るべき栄養について、詳しく教えていただきたいと思います。

離乳食期前の赤ちゃんは母乳や粉ミルクのみが栄養源ですが、母乳や粉ミルクは、赤ちゃんが健康を維持し、成長するために必要な栄養素をほぼ全て含んでいます。
生後5か月頃から離乳食が始まると、ミルク以外の食事からも栄養を得ていきます。
離乳食が1日3回に増えるころには、さまざまな食材を噛んで食べられるようになり、食事からの栄養摂取がメインになります。
今回は、それぞれの時期別に解説していきますね。
粉ミルクと母乳の違い

まず、生まれてから4か月頃までの赤ちゃんの唯一の栄養源である、母乳や粉ミルクについてです。
粉ミルクは、母乳の成分に寄せて作られていますが、含まれる物質や栄養成分の量に違いがあります。
ここで、母乳と粉ミルクの成分の違いについて、簡単に説明していきますね。
【母乳の特徴】
- 免疫物質が多く含まれる
- ママの食生活が赤ちゃんに影響する
- ビタミンD、K、ミネラルが不足しやすい
- 消化吸収しやすい
【粉ミルクの特徴】
- ビタミンやミネラルがまんべんなく含まれている
- 消化に時間がかかるため、腹持ちがよい

これらの特徴を踏まえて、離乳食が始まる前の時期に注意してほしいことがあります。
完全母乳の場合は、乳児のビタミンD不足に注意

ビタミンDが欠乏すると、弱い骨ができてしまい歩行障害や低身長などを引き起こす「くる病」になるリスクがあります。
近年、このくる病になる子どもが増えており、その原因は【極端な紫外線対策・ママの偏食やダイエット・離乳食開始の遅れ】が挙げられます。

ビタミンD不足にならないためには、どうするべきでしょうか?

まず大切なことは、ママが栄養バランスのよい食事を摂ることです。
産後は料理も一苦労ですし、体型が気になる気持ちも理解できます。ですが、ママの体と赤ちゃんの健康のためにも、バランスのよい食生活を心がけられるとよいですね。

ビタミンDについては、食事からの摂取・または日光浴で生成することができます。
ご自身のライフスタイルやお子さんに合わせて、以下の方法を試してみてくださいね。
- 母子ともに、夏10分、冬1時間程度の日光浴をする(日焼け止めは最小限に)
- ママの食事に【魚・きのこ】を取り入れるか、ビタミンDサプリを活用する
- 粉ミルクを取り入れる

完全母乳の場合、ビタミンKやミネラルも不足しやすいとのことでしたが、どのように摂取していけばよいでしょうか?

ビタミンKは、一般的に産科や1か月健診にて「K2シロップ」を投与し、欠乏症を予防します。
母乳を与えているママには、ビタミンKを多く含む納豆や緑黄色野菜を積極的に食べることをおすすめします。また、粉ミルクからも補うことができます。
ミネラルについては、離乳食期から意識して取り入れていきましょう。次の項で詳しく解説しますね。

授乳期は産後のホルモンバランスの乱れや、おっぱいトラブル・母乳神話など悩むことばかりだと思います。
全てを完璧にやる必要はないと考えてくださいね。
離乳食期の栄養

離乳食が始まると、赤ちゃんの栄養バランスを気にかけ始めるママやパパも多いと思います。
まだ食べられる食品も限られている中で、どう意識していけばよいでしょうか?
離乳食初期~中期まで(生後5〜8か月頃)

離乳食初期はミルクから得られる栄養もあるので、無理して栄養バランスを整える必要はありません。
今後のために、さまざまな味や食材を練習しておく期間にしていきましょう。
ただ、完全母乳の場合は中期から意識して取り入れて欲しい栄養素があります。
それは、前項にもあったミネラル【特に鉄分・カルシウム・亜鉛】です。
以下に詳しく説明していきますね。
鉄分 【肉・魚・豆腐・納豆・青菜野菜・粉ミルク】
赤ちゃんは、生まれる時に鉄分を蓄えて生まれてきます。
母乳に含まれる鉄分は、粉ミルクと比べると20分の1程度と少量のため、母乳育児の場合、生後6か月の時点で鉄欠乏を生じやすいとの報告があります。

鉄分が不足すると貧血や脳の発達に影響を及ぼすため、積極的に摂取していきたい栄養素です。
カルシウム 【しらす・青のり・ヨーグルト・豆腐・青菜野菜・粉ミルク】
1年で急速に成長する乳児にとって非常に重要な栄養素です。
離乳食が始まると母乳や粉ミルクからカルシウムを得る量も減るため、食事から摂取することをおすすめします。
亜鉛【青のり・納豆・枝豆】
亜鉛は体内のさまざまな化学反応に関わっていて、成長ホルモンの分泌や味覚・免疫などに影響します。

大人でも不足しがちな亜鉛ですが、成長中の乳児にとってはより重要な栄養です。
離乳食後期~完了期(生後9~18か月頃)

離乳食を1日3回食べるようになったら、ミルクより食事からの栄養がメインになります。以下のようなことを意識してみてください。
- 3食食品群をむらなく取り入れる →1日のどこかで補えればOK
- さまざまな食材に挑戦する →1食で多くの食材が入ってなくてもOK
- 鉄分、カルシウム、亜鉛を取り入れる
【三色食品群とは】
赤・黄・緑の三色をまんべんなく取り入れることで、栄養バランスが整った食事になります。
- 赤:肉・魚・卵・乳製品・大豆
- 黄:パン・ご飯・いも・麺
- 緑:野菜・果物・きのこ・海藻

「1日のどこかで補えばOK」「1食で多くの食材が入っていなくてもOK」というのは、どういった意味なのでしょうか?

三色を用意してもお子さんの食べむらによって、栄養が偏ってしまうこともあると思います。
また、子どもの離乳食のためだけにさまざまな食材を使うというのも大変ですよね。
そういった場合も無理せず次の食事で補ったり、1週間のどこかで取り入れたりすることができれば十分理想的だと思います。
保育園の給食も、1週間単位で必要な栄養素が得られるよう献立を作成しています。
市販の離乳食・乳児用のおやつの中には、不足しがちな栄養素を補ってくれるものもあります。そういったものを活用するのもよいと思います。

離乳食後期から3歳頃の子ども向けに、「フォローアップミルク」という栄養を補うために飲むミルクがあると聞きました。これについてはどうお考えでしょうか?

フォローアップミルクは母乳代替食品ではないので、離乳が順調に進んでいる場合は、摂取する必要はありません。
なんとなく離乳食が進まないからと一度飲み始めてしまうと、やめるタイミングが難しくなってしまいます。
離乳が順調に進まず鉄欠乏のリスクが高い場合や、母子手帳の成長曲線を見て適当な体重増加が見られない場合には、医師に相談した上で、必要な期間のみフォローアップミルクの活用を検討するとよいでしょう。
出典:厚生労働省 授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)
まとめ
乳児期は急速な成長が見られ、健康な体の土台となる時期です。赤ちゃんの発育を「栄養」という観点でサポートするため、今回は栄養士の先生に重要なポイントを教えていただきました。
完全母乳育児の場合は、ビタミンDやミネラルの不足に注意し、離乳食期はミネラルや3色食品群を意識するとよいということがわかりました。
しかし、離乳食作りをはじめ、乳児の育児は大変なこともたくさんありますよね。だからこそ、すべてを完璧に行う必要はないと考え、取り入れられそうな部分から取り組んでみてください。

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