
目次
研究エビデンスに基づく対話の枠組み
― 保育の専門性を「語れる構造」にする ―
保育の質とは何か。
その問いに、私たちは十分に答えられているでしょうか。
活動の充実。環境構成。行事の完成度。
それらは確かに大切です。しかし、研究が示しているのは
別の地点です。
なぜ、保育の専門性は語れないのか
20本の研究が示す共通メッセージ。
保育の専門性は、
活動の完成度ではなく、
日常の相互作用と見えない配慮の積み重ねによって形成される。
子どもとのやりとりの質 × 日々の小さな気づき
これは思想ではありません。
複数の研究領域にまたがるエビデンスの交差点から導かれた結論です。
では、その体系を見ていきます。

▶ 研究群①の結論
発達を左右するのは、
何をしたかではなく、どう関わったか。
「頑張れ」では、子どもは挑戦しない
相互作用が発達の基盤であるならば、
その土台となるのは何か。
研究が示しているのは、
安心という条件があってはじめて、主体的な挑戦が生まれるということです。
では、その構造を可視化するとどうなるか。

▶研究群②の結論
挑戦は、安心という構造の上にしか生まれない。
保育における「配慮」は、
目立つ行為ではない。
しかし、
戻れる関係
失敗しても大丈夫な空気
過程を認める言葉
そうした土台設計があってこそ、
子どもは一歩を踏み出す。
「ほめる」は、いつも正解ではない
相互作用と安心が土台であるならば、
その質を左右するのは何か。
研究は明確に示しています。
評価のあり方と環境設計が、挑戦行動を決定づける。

▶研究群③の結論
評価と環境設計は、
子どもの行動を静かに方向づける。
挑戦を促すか。
回避を強めるか。
それは偶然ではなく、
構造の問題である。
幼児期の質は、社会全体の未来を左右する
ここまで見てきた相互作用・安心・評価設計は、
個々の場面の話ではありません。
研究はさらに踏み込みます。
幼児期の質は、長期的な社会的成果に直結する。

▶長期投資エビデンスの結論
幼児期の質は、
一時的な成果ではなく、
人生全体の軌道を方向づける。
だからこそ、
保育の質を
活動の華やかさで測るのではなく、
相互作用と配慮の質で捉え直す必要がある。
ここで、中心命題に戻ります。
保育の質は、
子どもとのやりとりの質×日々の小さな気づきの積み重ねで決まる。
これは思想ではない。
20本の研究が交差して導いた結論である。
4つの対話レンズ
ここまで見てきた20本の研究は、
分野も国も方法も異なります。
しかし、共通して示しているのは一つの方向です。
保育の専門性は、
活動の完成度ではなく、
関わり・判断・安心・積み重ねの中に宿る。
では、それを現場で語るためには、
どのような視点が必要なのでしょうか。
研究群の交差点から導かれるのが、
次の4つのレンズです。

LENS 01|応答の瞬間
子どもの発信に、どう応じたか
相互作用研究群が示すのは、
発達は「応答」の中で育つということ。
可視化のための問い
・あのとき、なぜそう返したのか。
・介入したこと、しなかったことに、どんな意図があったのか。
一瞬の応答の質が、
情緒・言語・思考の基盤になる。

LENS 02|安心の設計
「ここにいていい」と感じられる場をどうつくったか
ウェルビーイング研究群が示すのは、
挑戦は安心の上にしか生まれないということ。
可視化のための問い
・その子が安心していたとき、どんなサインがあったか。
・不安そうだったとき、どんな配慮をしたか。
安心は偶然ではなく、
関係性と環境設計の結果である。

LENS 03|判断のプロセス
見守るか、介入するか、そのとき何を考えたか
評価・環境設計研究群(#2 #5 #6 #4 #9 #7)が示すのは、
質は「正解」にあるのではなく、
判断と評価の構造に宿るということ。
可視化のための問い
・あの場面で迷ったことは何か。
・どんな根拠でその選択をしたのか。
判断は瞬間的に見えて、
実は理論と経験の積み重ねに支えられている。

LENS 04|環境の積み重ね
今日の姿は、昨日までの関わりの結果である。
長期投資エビデンスが示すのは、
幼児期の質は累積し、将来を方向づけるということ。
可視化のための問い
・この子が今こうある背景に、どんな関わりの蓄積があったか。
・続けてきたことは何か。
保育は瞬間の連続でありながら、
同時に長期的プロセスでもある。
4つのレンズの本質
このフレームは、
✔ 優劣を決めるものではない
✔ 採点するものではない
✔ 正解を提示するものでもない
そうではなく、
保育の中にすでに存在している専門性を、見つけるための言葉である。

その瞬間、保育は「なりたい仕事」になる
ここまで見てきた20本の研究は、
保育の「正解」を示すものではありません。
示しているのは、
保育の中で何が起きているのか、
専門性はどこに宿っているのか、
その構造です。
相互作用。
安心の設計。
判断のプロセス。
環境の積み重ね。
それらは現場に、すでに存在しています。
ただ、十分に言葉にされてこなかった。
だからこそ、
保育の専門性は「見えないまま」語られてきました。
4つのレンズは、新しい価値観を押しつけるものではありません。
すでにある専門性を、見つけ、語れるようにするための枠組みです。
判断が言葉になり、
葛藤が共有されるとき、
保育は「何をする仕事か」ではなく、
「どのように関わる仕事か」として立ち上がる。
その姿が見えたとき、
初めて他者は理解します。
そして、
その関わりに触れた学生の中に、
「こんな保育士になりたい」という感情が生まれる。
研究は、保育を縛るものではありません。
それは、保育の中身を見つけるための補助線です。
この枠組みは、
専門性を次の世代へ手渡すためにある。
思想は、
研究と構造を通過した先に立ち上がるものです。
4つのレンズを、対話の中で確かめる
ここまで見てきたように、
20本の研究が示したのは
保育の専門性は
日常の相互作用と見えない配慮の積み重ねに宿る
という構造です。
そして、その専門性を語るための枠組みが
4つの対話レンズでした。
しかし、
枠組みは「読むだけ」では成立しません。
対話のレンズは、
実際に語り合うことで初めて機能します。
なぜ、フォーラムなのか
研究は、構造を示します。
しかし、構造は読むだけでは立ち上がりません。
4つのレンズで日常を語り合うとき、
専門性は初めて「見えるもの」になります。
フォーラムは、
優劣を決める場ではなく、
判断や葛藤を言葉にする場です。
研究から、体験へ
相互作用の質をどう語るか。
安心の設計をどう言語化するか。
判断のプロセスをどう共有するか。
環境の積み重ねをどう可視化するか。
これを実際に対話として行う場が、
保育みらいフォーラム(2026年9月)です。
研究は補助線。
構造は道具。
対話が、その専門性を立ち上がらせます。
実際の事例を4つのレンズで語り直す時間になります。
そして、思想が立ち上がる
判断が言葉になり、
葛藤が共有され、
保育の中身が可視化されるとき、
その場にいる高校生や学生の中に、
「こんな保育士になりたい」という感情が生まれます。
思想は、先に置くものではありません。
研究を通過し、
構造を通過し、
対話を経験した、その先に立ち上がるものです。

2026年9月
研究に基づいた対話の場へ。
このフレームを、読むだけで終わらせない。
体験する。
その先に、
次の世代へ手渡せる専門性があります。
お問い合わせ
または
保育みらいフォーラム実行委員会 事務局
(一般社団法人 信州子育てみらいネット内)
〒380-0812 長野県長野市早苗町41-3
E-mail: pocket@chiikihoiku.net
