保育士の離職率ってどれくらい? 退職理由とその後について知ろう

保育士の仕事は長く続ける人が少なく、離職率が高いと世間では言われています。

一体どれほどの人が何年くらいで退職しているのでしょうか?
そして、退職の理由とは? 
もしも自分が退職したいと思った時、その先のことをどのように考えたらよいのでしょう?

今回はそのような疑問に答えるべく、学生の山田さんが保育士の大日向先生に「保育士の離職率と退職理由、その後」についてインタビューしました。

大日向光先生
みらいく保育園 園長
大日向 ひかる先生
幼いころからなりたかった保育園の先生になり二十数年間、市立の幼稚園、認定こども園、企業主導型保育園に勤務し、担任や主任を務めています。”Going my way”をモットーに、自分らしく保育の仕事を楽しんでいます!

保育士の離職率はどれくらい?

yamada
山田

こんにちは!私はまだ仕事に関しての知識は少ないのですが、たまにニュースなどで「保育士の仕事は上下関係が大変で長く続ける人が少ない」と聞くことがあります。実際、どれくらいの人が退職してしまうのでしょうか?

大日向光先生
ひかる先生

確かに、一般的には「保育士は離職率が高い」というイメージがあるかもしれません。

では、保育士の離職率を厚生労働省のデータで確認してみましょう。

出典:平成28年及び平成29年社会福祉施設等調査

大日向光先生
ひかる先生

保育士の全体の離職率は「9.3%」とありますね。では、産業別の離職率を見てみましょう。

出典:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概要 概況全体版」

産業全体の離職率は「14.6%」です。医療・福祉の離職率が「15.5%」、宿泊業・飲食業の離職率が「26.9%」なので、実は保育士の離職率「9.3%」は、世間のイメージほど高くないということがわかっていただけると思います。

保育士に限らず、どんな仕事も「やりがい」と「大変な部分」の両方を持ち合わせています。保育士の仕事は、子どもの成長に関われるとてもやりがいのある仕事です。

大日向光先生
ひかる先生

最近は保育士不足が叫ばれているので「保育士の離職率が高いからだ」と報道されがちですが、保育士が不足しているのは離職率が問題というより、共働き世帯の増加による未満児保育の需要の増加が原因だと感じています。

実際に厚生労働省の調べでは、平成19年に保育に従事している人は「約37万人」とありますが、11年後の平成30年には「約59万人」と10年足らずで10万人以上増えています。

大日向光先生
ひかる先生

この人数には、認可外保育園は含まれていないため、実際はもう少し多くの人が保育士として働いていると考えられます。

参照:厚生労働省「保育士の現状と主な取組について」

yamada
山田

イメージと実際の数字はだいぶ違うのですね。大日向先生は、保育士を辞めたいと思ったことはありますか?

大日向光先生
ひかる先生

意外かもしれませんが、私は辞めたいと真剣に考えたことはありません。課題も多いですが、仕事にやりがいや楽しさを見出せているからですね。

yamada
山田

先生が保育士の仕事を続ける理由ややりがいは、何ですか?

大日向光先生
ひかる先生

一番の理由は、大好きな子ども達と毎日一緒に過ごせ、子ども達が成長していく姿を日々そばで感じることができるという点ですね。

また、保育士がその子に対して行った援助が、必ずしも良い方向にいくとは限らないので、「どうすればこの子のためになるのか」と子どもに寄り添い、成長を願ってよりよい援助を考えることはとてもやりがいがあります。

大日向光先生
ひかる先生

Aくんに対してうまくいったことが、Bくんに対してうまくいかない、昨日はよかったけど今日はうまくいかないといったことも多く、保育に正解はないのだなと毎日実感しています。

これはどんな仕事でも言えることですが、壁にぶつかったとき、試行錯誤して乗り越えることでようやく感じることのできるやりがいや楽しさがあるのではないでしょうか。

保育士の退職理由とは?

yamada
山田

保育士は何となく「大変そうな仕事」という漠然としたイメージがありますが、どんなことが退職理由となっているのでしょうか?

大日向光先生
ひかる先生

引き続き、厚生労働省の資料を見てみましょう。

出典:保育士の現状と主な取り組み

【保育士の退職理由】

  • 職場の人間関係
  • 給料が安い
  • 仕事量が多い
  • 動労時間が長い
大日向光先生
ひかる先生

さらに保育士の退職理由につながる改善希望の内容の資料もありますので、見てみましょう。

保育士等における現状/厚生労働省

【保育士における現在の職場の改善希望状況】

  • 給与・賞与等の改善
  • 職員数の増員
  • 事務・雑務の軽減
  • 未消化(有給等)休暇の改善
  • 勤務シフトの改善
yamada
山田

保育士の仕事は、子どもといつも遊んでいて休憩する間もなく忙しくしているというイメージがあります。やはり忙しいから辞めたいと思う人が多いのでしょうか?

大日向光先生
ひかる先生

確かに、保育士というと子どもと遊んでいるイメージがありますよね。子どもたちと遊ぶことももちろん仕事の一つではあります。

しかし、遊ぶにしても子どもの成長や発達を考え、保育計画を立てて、子どもの成長段階に合わせた保育が必要になってきます。

事務仕事や保護者対応など、基本的な作業量もかなり多く、業務時間に終わらないということも往々にしてあります。

大日向光先生
ひかる先生

保育士の職場の改善希望は、給与や賞与に対するものが一番多いようです。ハードな業務内容に見合った報酬が支払われていないと感じている保育士が多いのかもしれませんね。
国の方で待遇の検討をしてもらえていることは嬉しいことです。

子どもの命を預かる責任の重い職業ですが、世間的にはあまりそこの部分が認知されていないと感じることも多いので、保育士という職業の地位がさらに認められ、誇りに思える仕事になればよいと思っています。

大日向光先生
ひかる先生

報酬面に続いては、「職員数の増員」「事務・雑務の軽減」「有給など未消化休暇の改善」と続きます。

「職員数の増員」についてですが、保育士は受け持つ子どもの年齢によって、配置する保育士の基準数が決まっています。ですが、その人数ではとても足りなく感じているのが現状でしょう。下記がその基準です。

子どもの年齢/人数保育士の基準数
0歳児/3名保育士1名
1歳児・2歳児/6名保育士1名
3歳児/20名保育士1名
4歳児以上/30名保育士1名
大日向光先生
ひかる先生

子どもの状況や、一緒に担任をする保育士の経験年数などによっては、この基準では負担を感じる保育士が多いということでしょう。

また、「事務・雑務の軽減」については、記録の仕事の多さについて軽減してほしいという要求が多いようです。保育士の仕事に対するICT化はまだまだ進んでおらず、時間外に手書きで記録をしたり、クラス便りを作成したり、お便り帳を記入するなど膨大な書き物の仕事が存在します。

大日向光先生
ひかる先生

デジタルデバイスに対する苦手意識がある保育士も多く、ITC化のハードルは高いと感じています。

さらには、毎日の保育記録や成長記録、児童票の記入、学習会や研修会の参加報告書の作成、年間の保育目標作成や、実習生が来園している時の実習ノートの記録など、記録の仕事は多岐にわたることでしょう。

クラス運営をしながら保育時間内に取り組むことはほぼ不可能です。パートや保育補助の方のサポートが書類作成には欠かせません。

大日向光先生
ひかる先生

しかし、昔ながらの運営をしている園では保育士が休憩時間をさいたり、自宅へ持ち帰り、帰宅後や休日に記録をしたりしていると耳にすることもあります。

そういった園では保育士への負担は、かなり大きいものになっています。プライベートな時間を持つことができないのも退職の大きな理由となっています。

その他、退職へつながる理由としては、有給が取れない、希望通りの働き方ができない(シフトの改善)、人間関係の悩み…と続きます。

ここ数年、保育士の処遇改善は進んでいますが、配置基準ギリギリで運営している園では有給を取りにくいという状況もあります。プライベートな時間を持てないというのは、誰もが辛さを感じることです。そういった働き方では、退職を考えるのも無理はないのかもしれません。

yamada
山田

人を相手にする仕事は大変ですよね。仕事をする際、普段から気をつけていることなどありますか?

大日向光先生
ひかる先生

成長発達にとても重要な時期のお子さんをお預かりしていますので、知識を学び続けていきたいです。さらに、お子さんの命を預かっていますので、一つのことに集中せずに視野を広げ、常に緊張感を持っています。

事故・ケガをさせてはいけないのは勿論ですが、子どもにとって必要な経験をさせてあげたいですし、その二つの兼ね合いがとても大変です。何事もなくお迎えの時間が来ると、本当にほっとしますね。

大日向光先生
ひかる先生

また、お子さん、保護者の方の気持ちに寄り添うことも大切にしています。

退職を考えたときにできること

yamada
山田

保育士の退職には、色々な理由があるということがわかりました。保育士の職場の課題について、何か改善する方法はないのでしょうか?

大日向光先生
ひかる先生

報酬アップやスタッフの増員など、国も保育士の働き方の改善に取り組んでくれて、徐々に変化しているとは思います。ですが、保育園によって未だ待遇の差があり、今現在「辛い」と感じている保育士にとっては、スピード感が物足りないかもしれません。

また、人間関係の改善も一園だけ運営していて異動がない園では、毎日同じスタッフと顔を合わせることになるので、難しいのかもしれませんね。

人間関係など周辺環境の改善については、保育園にいる間だけのこと、仕事だから…と割り切ってしまうのも一つの方法ではあります。

大日向光先生
ひかる先生

条件が合わない、これ以上その園で勤務することは厳しいと思うのであれば、転職を考えるのもよいと思います。

保育園を退職した先にある未来とは?

yamada
山田

保育園を退職したあと、保育士はどのような仕事に就くことができるのでしょうか?

保育園を退職しても、また再就職をすることはできますか?

大日向光先生
ひかる先生

保育士は、社会の多くの人に求められており、保育士不足にいつも悩んでいる業界です。保育士の求人はいつも豊富にあるでしょう。

また保育士資格を活かした仕事は、保育園勤務の他にも数多くあります。

  • 認定こども園
  • 放課後児童デイサービス
  • 児童養護施設
  • 託児室
  • 保育ママ
  • ベビーシッター

こういった職種に転職する方法もあるでしょう。また、自分の条件にあった保育園を探して再就職する人も多くいます。求人は地域のハローワークやインターネットで検索できます。

大日向光先生
ひかる先生

保育士の資格を活かして再度働くのであれば、今度はしっかりとリサーチし、自分の希望する環境や報酬などを明確にしてから就職先を探すとよいですね。

まとめ

今回は、「保育士の離職率や退職理由、その後」について保育士の大日向先生に伺ってみました。
保育園での勤務が辛いのは、必ずしも自分だけが悪いのではありません。無理をして体を壊してしまう前に、条件や希望の合う保育施設へ転職を考えることも大切です。
迷っている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!

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この記事を書いた人

yamada
山田怜奈
長野県立大学グローバルマネジメント学科2年の学生ライターです。こどもについてもっと知っていきたいです!

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