子どもに話しかける時、「“ブーブー”が来たよ」と言うより「“車”が来たよ」と正しい名称で伝えるべきか、迷うことはありませんか?
今回は、オノマトペと赤ちゃん言葉との違いや、子どもへの言葉がけをどうしたらよいのかについて、
言語聴覚士の北山先生に聞いてみました。
長野県出身。大学より小児医療分野に関わることを目指して言語聴覚士の資格を取得。実習では小児分野を多く経験し現在は脳外科に勤務しながら子育てポケットに参画している。2児の母。
目次
オノマトペってなに?
こんにちは。大学の言語学の授業で“オノマトペ”という言葉を知り、オノマトペと子どもとの関係性に興味を持ちました。オノマトペについて、詳しく教えてください。
オノマトペは、形容詞としてだけでなく、時には名詞や動詞として使われることもあり、以下の3つに分類することができます。
- 物事の状態を表す擬態語(ふっくら、すべすべなど)
- 音を言葉で表した擬音語(ガチャン、ドカンなど)
- 人や動物の発する声を表した擬声語(わんわん、ブーブー)
オノマトペは、子どもが言葉を理解する上で使いやすく、発音しやすい言葉と言えます。ただし、すべてのオノマトペが子どもが使うのに適しているというわけではありません。
子どもが使う代表的なオノマトペ
私が小さい頃、よく“わんわん”と言っていたと父から聞きました。“わんわん”もそうだと思いますが、子どもが使う代表的なオノマトペを教えてください。
動物の鳴き声やしぐさだと、“わんわん“、“にゃー”、“ぴょんぴょん”。日常の行動だと、食べ物“ごっくん”、匂いを“くんくん“、電話が“りんりん”、ボール“コロコロ”、などですね。
言語聴覚士が一般的な言葉をあいうえおの50音分で作った「オノマトペカード」もおすすめです。
このカード遊びは、子どもの言語能力を育てることを目的としていますが、我が家の場合は次女が1歳の時に発声で夢中になって、長女が3歳の時に文字を覚えるためによく遊んでいましたよ。
赤ちゃん言葉とオノマトペの違いとは?
オノマトペと一般的に言う赤ちゃん言葉の違いは何でしょうか?
オノマトペは音の繰り返し表現をしたり、様子を表したりする言葉です。
赤ちゃん言葉も音からくるものだけではなく、片付けを「ないない」しようね、立つことを「たっち」しようね、など擬音語でもないものも含まれます。
従って、オノマトペの中に赤ちゃん言葉として使われている言葉が多くあるというイメージです。
オノマトペを使うメリットとは?
大人が子どもにオノマトペを使って話しかけるのは、伝わりやすく覚えやすいからでしょうか?また、オノマトペは積極的に使った方がよいのでしょうか。
そうですね。オノマトペは音のイメージからできているものなので、子どもも想像しやすいです。
リズム感のある繰り返し言葉は子どもとしても楽しいので、言葉遊びにもつながります。また、オノマトペのような発声しやすい言葉を話すほど、子どもの言語能力の発達を促すことができるメリットがあります。
幼いうちは、オノマトペを積極的に使ってみるのがよいですね。
過去には、“わんわん”でなく犬だと二度子どもに教えるのはよくないという考え方もありました。現在でも、発達障がいのある子にとっては一つの意味で複数の言葉があると混乱するからという理由で、使わせていない場合もあります。
しかし、今の主流の考え方としては、発音しやすくイメージしやすい言葉から覚えていくことが推奨されています。
オノマトペを使うデメリットは?
オノマトペは、子どもの言語能力の発達を促進するメリットがあるということはわかりました。一方で、デメリットはあるのでしょうか?
デメリットというほどでもないですが、誤解を生む可能性はありますね。
例えば“ぴょんぴょん“という言葉からは、うさぎ・かえる・カンガルーなど複数の候補対象が出てくるため、聞き手からすると何を指すのかが特定しにくいです。
普段から子どもの興味関心を知っている家族であれば、文脈からわかることがあるかもしれませんが、家族以外の人には正確に伝わらない可能性がありますね。
ただ、言葉の発達過程としては、初めに子どもは犬のことも猫のことも“わんわん“と呼ぶなど広範囲での理解から始まり、成長するにつれて徐々に言葉や物事についての理解が細分化していきます。
そのため、最初に“ぴょんぴょん“などの広範囲の言葉から覚えて表現するのは、そこまで悪いことではないと言えます。
広範囲で理解するのは問題ないとのことですが、子どもは牛に対しても“わんわん”、カラスに対しても“モーモー”と言うことがあります。それは親として訂正していくべきなのでしょうか?
発達段階にもよりますが、無理に訂正する必要はありません。実際にその間違いが大人になるまで続くかというと、そうでもないです。大人になって犬を“わんわん”と呼ぶ人をあまり見かけないように、自然と使う言葉は変化していきます。
もし、幼稚園の年長さんくらいになっても呼び間違えが目立つ場合は、「違うよ」と直すのではなく、「本当に~?」と否定せずに聞いてみるのがよいでしょう。
例えば、犬に向かって“モーモー”と言っていたら、それとなく“わんわん”だね、と伝えてみるのも一つの方法です。否定することで、子どもが委縮して言葉が出ないようになってしまう方がマイナスです。
5歳くらいまでの子に、言葉の間違いを厳しく注意する必要はありません。
間違えていても、やんわりと伝えることを推奨します。普段の会話の中で伝えることが難しい場合は、絵本を読みながら正しい表現を教えていくのもよいと思います。
一度、犬を“わんわん”で覚えてしまうと、覚え直しをする負担がないでしょうか?
デメリットととらえるかは別ですが、覚え直しをする必要があるのは事実ですね。ですが、先ほどもお伝えしたように、大人になっても犬を“わんわん”と呼び続けることはあまりありません。
簡単な言葉から覚えて、徐々に一般的な名称に言い直す必要はありますが、それも発達の段階に応じた成長過程の一つです。子どもにとって大きな負担になるかというと、そこまで負担にならないケースがほとんどです。
子どもが楽しめるオノマトペと最近の傾向
北山先生がおすすめする子どもが楽しめるオノマトペはありますか?
身近な生物に関連するものや、生活の中にある行動を表現するものがおすすめです。
例えばおままごと遊びの時ならば、野菜を切る“トントン”、食材を炒める“ジュージュー”。アクション遊びならば、“カーンカーン”、“ヤー”などと言いながら遊べます。色々な言葉を理解できてくる3歳児くらいになると、“ぱんぱん”と手を叩くといった体を動かすオノマトペも楽しめるようになります。
他には、トイレトレーニングの時期におしっこ“シーシー”、おならが“ブー”などは子どもに受けがよいですね。ただし、家庭によってはあまり覚えて欲しくない表現かもしれないので、ケースバイケースで使用しましょう。
私の家では、ノンタンのおしっこ“シーシー”をトイレトレーニングの時期に使っていました。
また、食事の場面で“もぐもぐ・ごくごく”、歯磨きの場面で“シャカシャカ・ぐちゅぐちゅペー”というのも、基礎的な生活習慣に子どもが楽しく馴染むことができるので、おすすめのオノマトペです。
最近の傾向としては、子どもの自己肯定感を上げるために、子育てで子どもを否定する表現を使わない家庭が増えています。「違う」とか「ダメ」という言葉を使わずに、“ピンポーン”や“ブッブー”といったオノマトペで使うことで、優しく伝えることができます。
自己肯定感を重視した子育てを意識する場合は、このようにオノマトペを活用するのも一つの手です。柔らかくてわかりやすい表現なので、子どもにとって受け入れやすいと思います。ぜひ使ってみてください。
オノマトペの年齢に応じた使い分け
オノマトペを使い分ける時期や年齢はありますか?
一般的には1歳前後から使い始めるケースが多く、1歳で1語文、2歳で2語文を使うと言われています。
保育園の年長さんになってくれば、“わんわん”ではなく、大人と同じように自然と「犬」と呼ぶようになる子も増えてきます。ですが、オノマトペの対象年齢などは特にありません。例えば、小学生でもおままごと遊びをしながら“ジュージュー”と言いますし、大人も時と場合によっては使うことがありますよね。
オノマトペからの言語習得
子どもが「さかな」とうまく発音できない場合、どう対応したらよいでしょうか?
子どもがオノマトペを使い出す時期は、まだ発話明瞭度(発音の明確さ)が低い場合が多いです。
1歳の子が息の使い方が難しい「さしすせそ」や、舌の使い方が難しい「らりるれろ」をきれいに発音できることはあまりありません。
中には発音できる子もいますが、言っていてもそこまで明瞭ではないと思います。仮に「さかな」を「たかな」と発音してしまったとしても、悪いことではありません。
ただ、小学校に入る前になっても「さしすせそ」が発音できなければ、言語訓練をするのも一つの選択肢としてあります。
その子が発音を指摘されるのを気にして言葉を使わなくなる兆候があれば、早い段階から言語訓練をした方がよいとされています。言葉が出ない理由が心理的な問題に起因する場合は、周囲の大人が解決してあげた方がよいでしょう。
発声が上手くできない子どもへの対応は
「さしすせそ」が上手く言えないのを家庭で強く指摘するのはよくないとのことですが、どのようなトレーニングをするとよいのでしょうか?
一番避けたいのは、子供が学校などで友達に指摘された上、家庭でも指摘されて話すこと自体をしなくなってしまうことです。
具体的にどのような対応やトレーニングをしていくのかというと、個人差があり一概には言えないため、できれば言語聴覚士や発達センター、行政の発達相談窓口にまずは相談に行くのをおすすめします。
相談をして訓練の内容が決まったら、家庭でも「訓練の時だけは頑張ろう」「10分は発音を気を付けよう」と練習するのはよいと思います。そして、発音を気にせずに子どもが自由にお話ができる時間も大切にしてください。
発音や発声だけではなく、舌を動かす訓練、息を使う訓練などもありますので、心配な場合は、ぜひ気軽に相談してみてください。
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この記事を書いた人
長野県立大学グローバルマネジメント学科2年の学生ライターです。こどもについてもっと知っていきたいです!