少しずつ“赤ちゃん”と呼ばれる時期を脱し始める1歳児。
離乳食から幼児食になり、座ってスプーンを持ち自分で食べることを目指す年齢になります。
しかし、椅子になかなか座らず立ち歩いたり、ゴロゴロと寝転がったりする子どももいます。食事をさせたい側としては、どうしたらよいかわからず困ってしまうこともありますよね。
そこで今回は「食事中に子どもが椅子に座らない理由と対応策」について、保育学生が保育士さんにインタビューしました!
2人の子どもの子育ても大分手を離れ、また小さな子どもたちの成長を見守りたく、みらいくに入職して1年が経ちました。 1人ひとりの子どもに寄り添い、毎日とびきりの笑顔をもらえることに幸せを感じながら、楽しく保育をさせてもらっています。
目次
1歳児が椅子に座って食べない理由
こんにちは!保育を学ぶ金子です。私はこれまで、子どもは食事を目の前にすると、喜んで一心に食べるのが自然な姿だと思っていました。
ですが、実際に保育園の実習でお手伝いをしてみると、食事がテーブルに並んでいるのに食べようとしなかったり、ふらふらと歩き回ったり、椅子から降りて寝転がったりする子どもが結構いるのだと知りました。
お腹は空いていると思うのですが、なぜ食事に集中しないのか、なぜ立ち歩くのかがわからず、戸惑っています。
「困ったな、座って食事をしてくれない…」そう思うのが素直な感情なのですが、実は本当に困っているのは誰でもない、子ども自身です。
食事の時間に立ち歩く子どもにもパターンがあって、毎回同じ子どもが立ち歩いていることもあれば、時々立ち歩く子どももいます。
では「みんなと一緒に挨拶をして、おいしく食べて満腹になる、お昼寝をする」そういった心地よい生活をスムーズに送れないのは、なぜなのでしょうか?
その理由は、子どもの「背景」にあります。
- 昨日、夕飯の時間が遅くなり眠る時間も遅れてしまった
- 今朝はギリギリまで眠っていて朝ご飯が遅かった
- 朝ご飯をたくさん食べてきた
- 給食のメニューに嫌いなものが並んでいる
- 今はお腹が空いていない
- 隣に座る友達が嫌だ
- 眠い
- 遊び足りない など
子ども自身、さまざまな気持ちを抱いているからこそ、椅子に座って食事ができないのでしょう。その理由を言葉でうまく表現できればよいのですが、1歳だと難しいですね。
しかし「椅子に座らない子どもには、何か理由や背景があるのだろうな」と考えるだけでも、子どもに対する対応やかける言葉が変わってくると思います。
保育士は、子どもの表面上の姿や様子だけで判断をするのではなく、日常的な関わりの積み重ねや、家庭との連携など多角的な視野で子どもを見つめています。そうすることが保育士としての「習慣」なのかもしれません。
1歳児が椅子に座って食べない時の対処法
子どもなりに椅子に座らない理由があるということを、あまり考えたことがありませんでした。確かに大人でも「今日は食欲がないな」「今日はお米ではなくて麺類の気分だな」ということはありますね。
子どもにもそんな気持ちがあって当然ですね。子ども一人ひとりの背景を考えて対処することが大切です。
では、食事中の子どもの様子に問題を感じることがあったら、保育園ではどのような対応をしていますか?椅子に座って食事をしない子どもについて、ベストな対応があったら教えて下さい。
保育園では、基本的に次の3つの対処法を行っています。
- まずは気分転換させてから座るように促す
- 「ごちそうさま」をして食事を下げる
- 生活リズムを見直す
まずは気分転換させてから座るように促す
食事の時に立ち歩いてしまう子どもも、だいたいは数回促して気分転換させれば、椅子に座って食べるようになることが多いですね。
例えば、保育園では次のような行動で、子どもの気分転換を図っています。
- 水道で手を洗う
- 他のクラスの友達が食べている様子を見に行ってみる
- 給食室へ行き、作ってくれた先生と話をしてみる など
手を洗ったあとに「「手がキレイになったからご飯食べようね」と食事を促したり、他のクラスを見に行って「お姉さんお兄さん達上手に食べているね、〇〇ちゃんも食べようか」「小さいお友達、がんばって食べているね、〇〇ちゃんも上手に食べられるね」など、自然な声がけで気持ちを切り替えています。
また、食事を作ってくれた給食の先生い励ましてもらうことで、食事に前向きになるきっかけづくりをしています。
「ごちそうさま」をして食事を下げる
それでも立ち歩く場合は「じゃあ今日はごちそうさまだね」と言って、食事を下げることもあります。ただし「今日は食事はなし!」というような言い方はしません。
また、食事を食べずにごちそうさまをした場合は、きちんと家庭にもお伝えするよう徹底しています。
生活リズムを見直す
「食事のときに椅子に座らない子ども」がいたとしたら、先にも述べたように、保育士はその子どもの背景となる「生活リズム」の見直しを考えます。
お迎えの時に、保護者に「今日のお昼はお腹が空いていなかったみたいですが、朝ご飯の時間が遅めでしたか?」「食事中に眠たそうな様子がありましたが、睡眠はとれていますか?」など聞いたり、お便り帳に食事中の気になる様子を書いたりして、日々の生活リズムを確認しています。
仕事をしている保護者ですから、時に家庭での生活リズムが崩れることも仕方がありません。無理のない範囲で、生活リズムを整えていくことが、食事への集中力を高めることにもつながります。
保育士が気を付けていること
保育士も一人ひとり考え方や捉え方が違うので、複数担任の場合であれば保育方針のすり合わせを密に行います。関わり方や方針が保育士ごとに違えば、子どもが戸惑いますし、子どもの成長を目指したねらいがブレてしまいますからね。
保育士それぞれが、一人ひとりの子どもに対してどんな印象を持っているか、どんな成長を感じていてどんな援助が必要かを、細かく打合せしていれば、見えていなかったことが見えてきたり、実はみんなが共通認識を持っていたことがわかったり、様々なことがクリアになるのです。
それは、新人保育士だからこそ見ている子どもの姿もあったり、経験年数があるからこそ見えている姿もあったりします。みんなで忌憚なく話すことが大切ですね。
家庭でできる対処法
子どもは、家庭での生活の影響がそのまま保育園での生活に表れるということがわかりました。
そうですね。親の仕事が忙しく、帰ってから食事の時間が遅くなりがちで、朝ご飯も登園ギリギリの時間になってしまう事もあるでしょう。
様々な家庭の状況があります。忙しい中、パパやママが動き回る子どもを追いかけながら食事を口に運んだりするケースもあるでしょう。食事の支度ができたら子ども一人で食べさせて、その間家事を行いたいという家庭も少なくありません。
保育士は、保育園で子どもが困っている様子を伝え、家庭でも取り組んでもらえそうな方法をお伝えしたり、相談されたらアドバイスをしたりします。パパやママを責めたり指導したりすることはありません
例えば、下記のような項目については、保護者の方にもお伝えしています。
- 忙しくて夕飯の時間が遅めになる場合は、朝食を少し控えめにしてもらう
- 歩き回って食べない場合は、2~3回ほど椅子に戻るよう促す
- それでも歩き回る場合は「ごちそうさまね」と伝えて、食事を片付ける
- 決して追い回して口に運ぶようなことはしない
- 10分だけでもよいので、子どものそばで一緒に食事をしたり、座ったりしてあげる
家庭の問題だからと諦めず、一緒に子育てする気持ちで、保護者と保育士が連携を取ることを心がけています。
また、本当に食べない場合は、保育士が一人そばについて関わるとより一層よいですね。
1歳児の特徴を受け止めながらルールやマナーを教えよう
子ども一人ひとりの背景を理解して、無理強いせずに寄り添うことが大切だとわかりました。しかし、どうしても食事中に子どもが椅子に座ってくれないと、親としては「いつまでもこのままだったらどうしよう」と悩んでしまうのではないでしょうか?
大丈夫です。1歳から入園し、2歳児クラス、3歳児・4歳児クラスへと進級する集団生活をしていく中で、ずっと食事中に立ち歩き続けている子どもはいません。みんな成長していくのです。
1歳児は、自立心が芽生え、自我が確立し、自分にも意思があると気づき、それを人に対しても知らせたくなる時期です。そういった1歳児の特徴をしっかりと受け止めながらも、生活面でのルールやマナーを毅然とした態度で伝えていく姿勢も大切です。
そして大切なのは、日によって子どもに対する態度やルールを変更しないことです。
「この先生なら許される」「昨日はダメだったけれど今日はOK」など対応が変わると、子どもも戸惑ってしまい、いつまでたってもルールを守ろうとしないですし、自立もしません。
子どもは基本的には成長したいと思っているものです。そこを上手く刺激しながら、自我と周囲との折り合いを上手くつけさせていくことが関わりのコツです。
自立心が芽生え、自己主張が強くなる1歳児とは、うまく関われないこともあるかもしれません。子どもはそういった保護者や保育士の心の迷いや揺らぎを敏感に感じ取るので、余計にうまくいかないこともあります。
それでも心配しすぎる必要はありません。ベテラン保育士や先輩ママさんなどに相談しながら、子どもと一緒に成長していきましょう!
まとめ
今回は、食事中になかなか椅子に座らない1歳児にどのような対応をしたらベストなのかを、保育士さんにお聞きしました。
問題だと感じる子どもの行動は、どのような背景があってのことなのか、まずはそこから見つめていきましょう。そして1歳児の特徴を理解して「子どもの自我を刺激し、成長の手助けをしていく」という意識を持つことが大事です。ぜひ、参考にしてみてくださいね!
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この記事を書いた人
長野県立大学健康発達学部こども学科1年の学生ライターです。大学では日々保育について勉強中。少しでも子育ての役に立つような情報をお届けしたいと思っています!