発達障がいがある子どもの特徴は?種類、症状、グレーゾーンについて言語聴覚士が解説します!

「発達障がい」という言葉を耳にする機会が増えたと思いますが、具体的にどういった症状があるのか分からない親御さんも多いのではないでしょうか?

保育園の先生から指摘を受けた、もしくは実際にお子さんが発達障がいと診断されて悩んでいる親御さんもいらっしゃるかと思います。

今回は、「発達障がいとは何か?」というテーマで、言語聴覚士の北山先生にお話をお伺いしました。発達障がいのあるお子さんの特徴、種類、症状などについて知ることで、お子さんに合った接し方やサポート方法への理解を深めていくきっかけとなれば幸いです。

言語聴覚士 北山先生
長野県出身。大学より小児医療分野に関わることを目指して言語聴覚士の資格を取得。実習では小児分野を多く経験し現在は脳外科に勤務しながら子育てポケットに参画している。2児の母。

発達障がいのある子どもの特徴

Manami

北山先生、よろしくお願いします。今回は子どもの発達障がいについて詳しくお伺いしたいと思います。

まず、発達障がいの特徴について教えていただけますか?

北山先生

発達障がいとは、生まれつきの脳機能の特徴によって、その場に合った行動がとれない障がいのことを言います。

発達障がいは外見で見分けることが難しく、その特性も十人十色です。単なるわがままや自己中心的と勘違いされることもあり、生活の中でお子さんが生きづらさを感じてしまうケースも多くあります。

Manami

発達障がいは、治療によって治せるのですか?

北山先生

発達障がいは完治するものではありませんが、接し方や適切なサポートによって日常生活の困難を軽減することが可能です。

担当のお医者さんとよく相談し、持っている力を活かしやすいよう、お子さんに合ったサポートや環境作りをすることが求められます。

子どもの発達障がいの主な種類

Manami

発達障がいにはどんな種類があるのでしょうか?詳しく教えてください。

北山先生

発達障がいには、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、学習障がい(LD)、知的障がいなどが含まれています。

これらに共通しているのは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点です。同じ障がいでも特性の現れ方が異なることが多く、いくつかの発達障がいを併せ持つことがあります。

下図は発達障がいの特性についてまとめられたものですので、参考にしてみてください。

掲載元:厚生労働省「発達障がいの理解のために」

Manami

「〇〇の特性が必ずある」とは言い切れないのですね。それぞれの障がいについて、もう少し詳しく教えてください。

ASD(自閉スペクトラム症)

北山先生

ASD(自閉スペクトラム症)は、3歳頃を目安に診断されることが多い発達障がいの一つです。主に、次に挙げる3つに困難が見受けられると言われています。

  • 社会性
  • コミュニケーション
  • イマジネーション
北山先生

詳しくはこちらの記事で説明していますので、是非読んでみてくださいね。

ADHD(注意欠如・多動症)

北山先生

ADHDは、注意欠如・多動症とも呼ばれ、発達年齢と比較して次に挙げる3つの特性が見受けられます。

  • 不注意(集中が続かない)
  • 多動性(じっとしていられない)
  • 衝動性(思いつくと行動してしまう)
Manami

DHDでは、これらの症状が全て現れるのですか?

北山先生

いいえ、それぞれの特性の現れ方は人によって様々です。全てが見られる場合も、いずれかが見られる場合もあります。

詳しくはこちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください。

学習障がい(LD)

北山先生

学習障がい(LD)は、全般的な知的発達には遅れがないにも関わらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」など特定の学習のみに困難が見受けられる発達障がいです。

学習障がい(LD)は、主に次の3つのタイプに分類されます。

  • 読字障がい(ディスレクシア)
  • 書字障がい(ディスグラフィア)
  • 算数障がい(ディスカリキュリア)
北山先生

詳しくはこちらの記事で説明しています。参考にしてみてください。

発達障がいが併せ持つ障がいや症状とは?

Manami

発達障がいは、主な症状以外に別の障がいや症状を併せ持つことがあると聞きました。

北山先生

そうですね。症状としてそれぞれ被る部分や併せ持つ部分があります。
あくまでも一例ですが、言葉の発達が緩やかなことが気になって受診したところ、ADHDの診断を受けるといったケースもあり、併せ持つ症状が障がいに気づくサインとして捉えられることもあります。

Manami

そうなんですね。発達障がいで併せ持つことがある障がいや症状について、代表的なものを教えていただけませんか?

知的障がい

北山先生

知的障がいとは、発達期(おおむね18歳未満)に知的機能に障がいが現れるもので、日常生活の中で様々な不自由が生じることがあります。

例えば、次に挙げるような困難を感じることがあるでしょう。

  • 複雑な事柄、こみいった文章、会話の理解が苦手
  • お釣りのやりとりなど、日常生活の中での計算が苦手

感覚過敏・鈍麻

北山先生

次に説明するのは、感覚過敏と鈍麻です。
人は五感(視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚)に対応した体の様々な部分で外からの刺激を受け取り、脳に伝達することで情報を理解しています。

しかし、刺激の受信や伝達、理解のいずれかの段階で過剰な反応感覚過敏が起こったり、反応できないことで感覚鈍麻が起こったりすることがあります。

これらは発達障がいの中でも、特にASD(自閉スペクトラム症)の方に見受けられることが多いと言われています。

言語発達遅滞

北山先生

言語発達遅滞は、生活年齢と比較して、言語発達の状態が標準より遅れている場合を言います。様々な原因が考えられるため、心理面、環境面を考慮した支援をしていく必要があります。

発達性協調運動障がい

北山先生

発達性強調障がいとは、運動障がいがないにも関わらず、「字を書く」「ボールを蹴る」などの協調運動に困難が見られる障がいです。

乳幼児期の運動面の発達においては、寝返りがうまくできない、ハイハイをあまりしないなどの特性が見受けられることがあります。

てんかん

北山先生

次に説明するのがてんかんです。てんかんは、突然意識を失って反応がなくなるなどの「てんかん発作」を繰り返し起こす病気のことを言います。

原因や症状は様々で、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性があります。患者数も100人に1人と言われており、誰もがかかる可能性がある病気の一つと言えるでしょう。

チック

北山先生

チックはチック症とも呼ばれ、本人の意思とは関係なく不規則で突発的な体の動き(まばたき・顔をしかめる・首を急激に振る)や発声(咳払い、鼻を鳴らす、舌を鳴らす)が繰り返し起きてしまう症状のことを言います。

子どもの発達障がいのグレーゾーンとは?

Manami

ここまでで発達障がいの種類や症状について理解が深まりました。発達障がいについて調べていたら「グレーゾーン」という言葉を目にしたのですが、これはどういったことを意味しているのでしょうか?

北山先生

グレーゾーンには明確な定義がなく、お医者さんや先生の間でも認識が異なることが多い非常に曖昧なものです。

あえて定義するのであれば、「発達障がいの診断はつかないが、その傾向が見られる状態」ということです。

Manami

診断がつかない場合も、支援を受けることができるのですか?

北山先生

はい、可能です。

最初に説明しましたが、発達障がいは脳の特性の一つです。日常生活で困りごとがあれば発達障がいと認識され、支援を受けることができます。反対に、困難がないのであればお子さんの「個性」として捉えることができるのです。

子どもの発達障がいの原因に遺伝は関係ある?

Manami

発達障がいの原因として、遺伝は関係があるのでしょうか?

北山先生

発達障がいは遺伝子の突然変異によるものですが、必ずしも遺伝するものではありません。

たしかに遺伝子が近いほど一致率が高くなるため、発達障がいと遺伝との関係性は0とは言い切れませんが、何らかの先天的な遺伝要因に様々な環境的な要因が重なり、相互に影響し合って脳機能の障がいが発現する説が一番有力と言われています。

Manami

遺伝子の突然変異というのは、どういったタイミングで起こるのですか?

北山先生

大きく分けて2つあります。1つが、受精時の染色体異常症で、もう1つが受精以前の遺伝子異常によるものです。

海外では、同じ遺伝子を持つ一卵性の双子の赤ちゃんのうち、一人だけ発達障がいが見られるといった例も報告されています。

子どもの発達障がいの支援や治療法

Manami

お子さんが発達障がいと診断された場合、どのような支援や治療を受けることができるのか教えてください。

北山先生

前提として、発達障がいは完治するものではありません。お子さんの特性によって、受けられる支援や治療が異なります。

主な支援や治療としては、次のようなものがあります。

  • 薬剤によるコントロール(症状の緩和) 
    ※ただし、全ての発達障がいに薬剤があるわけではありません。
  • 療育手帳や精神障害者保健福祉手帳の取得
  • 発達障がい者支援センターや保健センターの利用
Manami

今挙げてくださったこと以外で、親御さんが意識して取り組めることはありますか?

北山先生

できないことばかり指摘してしまうと、お子さんの自己肯定感が低下するなど二次的障がいへ繋がる可能性もあります。

「できること」を増やし、強みへ変えてあげることが大切かなと思います。

一人で悩むことなく、まずは担当医とよく相談したうえで、お子さんに合ったサポートや治療方法を選択しましょう。

まとめ

発達障がいには次のような種類があり、それぞれの特性の現れ方や特徴が異なることが分かりました。

  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • 学習障がい(LD)
  • 知的障がいなど

併せ持つ障がいや症状も様々なので、専門的なお医者さんに診てもらったうえで適切なサポートを受けることが大切です。
発達障がいは、生まれつきの脳の特性であり、お父さん、お母さんのせいではありません。完治するものではありませんが、サポート次第でお子さんの生き方や生きやすさが変わってくるものです。

不安を抱いてしまうこともあるかと思いますが、ご家族で悩みを抱え込むことなく、支援先を積極的に活用していきましょう。

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この記事を書いた人

Manami
広島県在住。0歳女の子の子育てに奮闘するママライターです。 自分が今まさに「知りたい!」と思っているテーマを、皆さんに分かりやすくお伝えします!

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