近年、保育園や幼稚園、さらには学童保育(児童クラブ)の現場において、ICT化が急速に進んでいるのをご存じでしょうか? 少子化や保育士不足といった社会問題を背景に、業務効率を上げつつ、保育の質をさらに高めようという取り組みが各地で始まっています。
しかし、ICT化と一口にいっても、「何がどう便利になるの?」「費用やセキュリティ面は大丈夫?」など、気になる点は多いですよね。
そこで今回は、現役保育士のゆうき先生にインタビューを行い、実際の導入事例やメリット・デメリット、さらに保育園での活用事例などを伺いました。
これからICT導入を検討する保育園の方や保護者の方、または興味を持っている方の参考になれば嬉しいです。

ゆうき先生
2歳児クラスの担任をしています。
子どもの目線に立ち、それぞれの思いを受け止めたり、共有することを大切にし、後ろ向きな感情にも一緒に向き合いながら寄り添う保育をしています。
日々子どもたちに刺激をもらいながら、楽しく保育をしています。
保育園のICT化とは?

保育園のICT化とは、具体的にどのようなことですか?

当園では、登園・降園管理を電子化しています。
たとえば朝の受け入れ時に、タブレットで登園時間をピッと入力するだけで、その日の出席人数や登降園時間がリアルタイムで把握できるようになりました。
以前は紙の登園簿に記入して、あとからExcelに手入力し直して…と二度手間でしたが、それがなくなって本当に助かっています。

また、保護者へのお知らせをアプリから一斉送信できるので、紙のプリントをなくせたのも大きなメリットです。
保護者との連絡ノートをアプリで共有している園もあると聞きます。
ICT化のメリット・デメリット

具体的にどんなメリットを感じていますか?

まずは、業務効率化です。
これまでは手書きで書類を作り、それをまたPCで入力するという作業に時間をとられていましたが、ICT化によってタブレット上で必要情報をまとめられるので、事務作業がかなり減りました。
基本的に保育士には、“子どもと向き合う時間を増やしたいけれど、書類業務が多い”というジレンマがあるんです。
日誌や連絡帳を書いたり、月案や週案を準備したり…。
ICT化のおかげで、少し子どもたちと関わる時間が増えたと実感しています。
また、保護者とのコミュニケーションもスムーズになりました。公式LINE等を使えば、送迎時間外でもメッセージや写真をすぐに送れるので、保護者にとっても安心感が増したと思います。

児童クラブ(学童保育)でもICT化が進んでいると聞きますが、いかがでしょう?

当園は学童まで一括で運営しているわけではないのですが、連絡帳アプリを導入しているという話を聞いたことがあります。
たとえば小学校が終わったあと子どもが児童クラブへ行く時など、今どこにいていつ到着したかを保護者が確認できる仕組みがあるようです。
あと、実現するのはこれからになるかもしれませんが、保育園時代のアレルギー情報や成長記録が共有されれば、学校や学童の指導員もすぐに把握できるようになると思います。
子どもが複数の施設を行き来すると、情報伝達の抜け漏れが起きやすいのですが、ICTで一元管理ができれば、ミスが起きにくくなるだろうなと感じています。

一方で、デメリットや注意点はどんなところだとお考えですか?

一番大きいのはコスト面です。
システムの利用料やPC・タブレット端末をそろえる初期費用は馬鹿になりません。
次に、職員全員のITリテラシーです。
若手はスマホ操作に慣れていても、年配の先生方はデジタル機器に苦手意識があったり、アプリの操作方法を覚えるのに時間がかかったりします。
最初は手探りで、インストールから説明資料作成、ログイン方法のレクチャーなどを地道にやっていきました。

あと、セキュリティ対策は慎重に行わないといけないと感じています。
端末を紛失したときの対策や、データのバックアップをどう管理するかは絶対に事前に決めておかなければならないですね。
導入して終わりではなく、継続的に見直しが必要です。
ICT化の今後に向けて

たとえば「こんなシステムや機能があったらいいな」と思うことはありますか?

保育士は子どもたちの普段の活動写真をよく撮るのですが、保護者への共有用に撮っても、クラスごとにフォルダ分けしたり、園児全員がバランスよく映っているかどうかや、不要な写真がないかなどを確認したりと、撮影後に結構な作業があるんですよ。
なので、写真や動画をAIで自動仕分けしてくれる機能があればとても助かります。
あとは、新卒の先生がクラス運営に悩んだとき、園児一人ひとりのデータを入力・蓄積し、それをもとに遊びや環境設定のヒントを提案できる仕組みがあれば、よりきめ細やかな保育につながると思います。

保育士不足が叫ばれている中、ICTが業務をサポートしてくれる部分が増えると、本当に有り難いです。
決してデジタルで全てが解決できるわけではないですが、現場に寄り添ったシステムが増えれば、子どもとの時間をしっかり取れるようになるはずです。

最後に、保育園のICT化をこれから考えている方へメッセージをお願いします!

ICT化はあくまで“保育士や保護者を助ける手段”だと思っています。
慣れないうちは操作が面倒に感じることもありますが、一度仕組みが整えば“保育の質”に直結すると思います。
紙文化のよいところももちろんあるので、いきなり全部をデジタル化すべき、というわけではありません。
ですが、デジタル化できそうなところから始めてみると、子どもの記録や保護者への連絡がスムーズになり「もっと早く導入すればよかった!」と実感するケースも多いですね。
特に保護者とのコミュニケーションは、時代に合わせて変わっていく部分だと思います。
まとめ
今回は、現役保育士ゆうき先生に、保育園や児童クラブで進むICT化のメリットとデメリット、さらには「こんな仕組みがあったらいいな」という、保育士にとってあると嬉しい機能のお話までお聞きしました。
ICT化によって事務作業の手間が減り、保育士の皆さんが子どもと向き合う時間を確保できるのは大きな魅力です。一方で、コストやセキュリティ、ITリテラシーなどの課題も見逃せません。
それらを踏まえた上で、ゆうき先生がおっしゃっていたように、ICTは魔法のツールではなく、あくまで現場を支える手段にすぎないことを忘れないようにしたいですね。
もし「ICT化に興味がある」「紙の書類が多くて困っている」という方がいらっしゃったら、この機会にどんなシステムが使えるか調べてみたり、導入している園の事例をリサーチしてみたりするのがおすすめです。
最終的には、子どもが笑顔でいられて、安心して預けられる質の高い保育環境をどう作るかと向き合い続けることが重要ですが、ICT化はその手助けになるかもしれませんよ。

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