子どもがトイレに行っても、なかなかうんちが出ない・・・。もしくは、痛がるそぶりを見せる。
長引く子どもの便秘に、お悩みの親御さんも多いのではないでしょうか?
子どもは便秘になりにくいと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、乳幼児の便秘は珍しいことではありません。目安として、以下のチェックリストをご確認ください。1つでも当てはまれば、便秘であると言えます。
- 排便が週に3回以下
- 3日以上連続で出ない
- 硬くコロコロとした便が出る
- 排便時に痛みを伴う
消化器官が未発達な幼児は排便リズムが安定しづらく、便秘を起こしやすいと言われています。そこで今回は、子どもが便秘になってしまった時の対処法やおすすめの食事について、看護師の大藏さんにインタビューしました!
大藏あみ
一人一人にじっくり寄り添える病児保育。
不安な気持ちが少しでも和らぐように、楽しく笑顔で保育をしています。
「ここがあってよかった」と思っていただけるようなあたたかい居場所づくりを目指しています。
目次
子どもの便秘の原因は?
子どもが便秘になる原因について教えてください。
子どもの便秘には、生活習慣によるもの、身体的・心理的なもの、病気など、様々な原因が考えられます。それぞれ詳しくご説明しましょう。
生活習慣によるもの
子どもも大人と同様に、日頃の偏食や小食、不規則な生活、水分の摂取不足、生活環境変化によるストレスによって、便秘になります。
未熟な排便機能によるもの
身体の仕組みとして、まず肛門近くに便が溜まってくると腸の壁が引き延ばされ、脳にその感覚が伝わることで便意を感じます。次に、便を出すためにお腹に力を入れていきみ、肛門筋を開きます。この一連の機能を排便機能といいますが、子どもはこの機能が未熟なため、排便がうまくいかないことがあります。
排便に対する心理によるもの
排便の時に便が硬くて痛い思いをしたことがあると、出すのが怖くなることがあります。また、遊びを優先したいといった気持ちや、漏らして怒られたという記憶があると、自宅以外での排便を我慢してしまうケースがあります。
すると、便は腸に溜まってさらに硬くなり、排便時の痛みも増してしまうので、ますます便をしにくくなるという悪循環に陥ります。
病気
まれではありますが、病気が原因で便秘になることもあります。可能性としては、甲状腺機能低下症、高カリウム血症、全身性エリテマトーデス等があります。通常このような病気を発症している場合、体のだるさや無気力感、脱力感、関節の痛み等、病気に応じた全身症状が伴います。
その他、ヒルシュスプルング病があります。これは腸管の運動を支配する神経節細胞が生まれつき欠如し、便秘やお腹の張り、吐き気や嘔吐といった症状が現れる病気です。生まれつきの病気のため、ほとんどは新生児期に症状が現れますが、まれに幼児期以降に症状が見られることもあります。
薬の副作用
特定の薬を服用してから便秘になった場合、薬の副作用による薬剤性便秘が疑われます。便秘を引き起こす可能性のある薬には、てんかん等で用いる抗けいれん剤、自律神経の病気で用いる自律神経作用剤、主にがんの痛み止めとして用いる医療麻薬等があります。便秘になった場合でも自己判断での薬の中断は危険です。必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
子どもが便秘になるとどうなる?
便秘をそのままにしてしまうと、子どもの体にどのような悪影響が出るのでしょうか?
いつも腸に便が溜まっている状態が続くと、腸が鈍感になり、便を出したいと感じにくくなるため、さらに腸に便が溜まってしまうという悪循環に陥ります。
この悪循環は、強制的なトイレトレーニング・浣腸といった無理な排便をくり返すとさらに加速させてしまうので、注意が必要です。また、このような経験は子どもの心に大きな傷を残す可能性もあります。
老廃物の固まりである便は、できるだけ早く体の外へ排出すべきものです。便を腸内に溜め込んでいると、有害物質である悪玉菌が発生し、お腹の張りや食欲不振、めまいや吐き気等の体の不調を引き起こしてしまいます。
また、排便時に便を出したいがゆえに力を入れすぎて、いぼ痔になりやすくなります。加えて便秘によってできた固い便を出そうとすることで、肛門管上皮が裂けること(裂肛)もあります。
実際に、便秘によって肛門へのダメージが増加し、肛門疾患を発症するケースも少なくありません。
子どもの便秘、家庭での対処法は?
便秘になってしまった場合、どのような対処法・治療法がありますか?まずは、家庭でできることをお聞きしたいです。
まず、便秘を解消するために以下のことを意識してください。
- 子どもの排便に関心をもつ(回数や間隔や形状など)
- 便秘に気づいたら早めに対処する
- バランスのよい食事をとる
これらを踏まえたうえで、家庭での対処法を見ていきましょう。
食生活の見直し
便秘を解消するには腸内環境を整える必要があり、毎日の食生活がとても重要です。おすすめしたいのは、ヨーグルトやオリゴ糖です。ヨーグルトには腸内細菌である善玉菌の餌となる乳酸菌が豊富に含まれていますし、オリゴ糖も善玉菌の餌になるため、善玉菌が増えて腸の動きが活発になります。
ただし、オリゴ糖は一度にたくさん摂ると下痢やお腹の張りを引き起こすことがあるので、摂取量には注意が必要です。また、記事の後半に、便秘の解消が期待できる食べ物とおすすめの食べ方を載せていますので、ぜひ参考にしてください。
規則正しい生活をする
規則正しい生活が、排便リズムを整えることになります。特に、朝に食べ物を口にすると身体が目覚め、腸の働きも活発になります。食事は食物繊維を豊富に含む食材を積極的に摂取するようにしましょう。
また、便意をもよおした時は我慢せずトイレに行きましょう。便意がなくても、できるだけ同じ時間にトイレに行くと、排便の習慣がつきやすいです。
マッサージやツボ押しで腸を直接刺激する
活動が鈍っている腸をマッサージやツボ押しで優しく刺激し、蠕動(ぜんどう)運動を促します。続けることで、腸の働きが改善され、毎日のスムーズな排便へつながることが期待されます。
綿棒浣腸(対象年齢:乳児)
赤ちゃんの便秘の対処法としては「綿棒浣腸」があります。
綿棒を使って肛門を刺激すると直腸が刺激され、便を出す反射が起こります。実施するタイミングは、お腹の動きが活発になる授乳・食後30分くらいが効果的と言われています。
また、赤ちゃんが苦しそうな時やいきむ様子がある時に行ってみてもよいでしょう。授乳・食事直後は吐き戻す恐れがあるので避けましょう。
【準備するもの】
- 大人用綿棒(慣れるまで綿棒の先から1㎝のところに印をつける)
- ワセリン(ベビーオイルやオリーブオイルでも代用可)
- 新聞紙、またはおむつ替えシート
- 替えのおむつ、お尻ふきシート
1.赤ちゃんのお尻の下に新聞紙やおむつ替えシートを敷き、おむつを開いた状態で準備します。
2.綿棒にワセリン(またはオイル)をたっぷりとつけます。
3.赤ちゃんを仰向けにして足をあぐらを組むようにして持ち上げて、お腹側に引き寄せて片手でしっかりと固定します。
4.肛門に綿棒の印のところまで入れます。
5.肛門に綿棒を当てて、穴を開く感じで円を描くように動かします。肛門の内側の壁をなぞるように、力は入れずに、ゆっくりと優しく動かします。
6.綿棒を抜き、おむつをつけて、お腹に「“の”の字マッサージ」をして待ちます。
出ない時は翌日の食後に再チャレンジしてみましょう。
1日に何回も繰り返し行うと腸の粘膜を傷つけてしまうこともあるので、1日1回を限度とし
てください。
上記の方法を試し、綿棒に便が付いていれば、まもなく排便があるサインです。
すぐに便が出ない場合は少し時間をおいて様子を見るか、2~3回綿棒刺激を試みてください。
なお、排便時に赤ちゃんが苦しそうにいきむのは、排便のコツがつかめていないことも原因の一つです。顔を真っ赤にしていきんでいても、少し待てばや柔らかい便が出る場合は、無理に綿棒での刺激をせずに腹部マッサージや足上げ運動を行って様子を見てください。
上記の対処法を試しても便秘が改善されない時は、悩まず医療機関に相談してみてくださいね。
下剤の使用について
下剤は即効性があるため、「便秘の解消は下剤」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、下剤は体への負担が大きい傾向にあります。また、長期間使い続けると耐性ができてしまい、量を増やさないと効かなくなり、ひどい腹痛を起こすこともあります。
医薬品の使用はつらい便秘症状を一時的に解消する目的にとどめ、まずは食事や生活習慣を見直し、自らの力で排便できるよう身体を整えることが重要です。
病院での治療法
子どもの便秘に対して、病院ではどのような治療を行うのでしょうか?
問診や検査をし、食生活や生活習慣の指導を受けた後に薬を処方されるのが一般的な治療法です。病気・体調不良による便秘の場合、その治療を優先するために入院することもあります。
病院にかかる場合は、小児科を受診してください。便秘に起因する裂肛や痔が発生した場合は、肛門科を受診しましょう。
子どもの便秘予防につながる食事や生活のポイント
子どもの便秘に対して、普段の食事や生活で気をつけるポイントなどはありますか?
よい便を作る食事のポイントを3つお伝えします。
十分な水分摂取をする
1つ目は、十分な水分摂取をすること。水や麦茶といった、砂糖やカロリーのない水分を摂取して満足できる習慣はとても大切です。
もしジュースや甘い炭酸飲料を飲む癖がついている子どもの場合は、薄める工夫をしましょう。水や麦茶をどうしても飲みたがらない子の場合、こちらの記事をご参照ください。
体を動かして遊び、腸を刺激する
2つ目は、体を動かして遊び、腸を刺激することです。
以下の動画では、小さな子どもも楽しめる運動や室内でも体を動かせる遊びを紹介しています。ぜひご覧ください!
果物・野菜・雑穀類等の食物繊維が多いものを食べる
3つ目は、果物・野菜・雑穀類等の食物繊維が多いものを食べることです。食物繊維は、水溶性と不溶性の2種類あり、腸内細菌のバランスを整えて腸の動きを活発にしてくれます。
便を柔らかくしてくれる水溶性の食物繊維は、 バナナ・りんご・イチゴ・みかん(かんきつ類)といった果物に含まれています。便のかさを増やしてくれる不溶性の食物繊維は、青菜類・キャベツ・かぼちゃ・ブロッコリー等に含まれています。
便秘の人は、腸の壁がゆっくりと波打つように収縮する蠕動(ぜんどう)運動の機能が低下しているため、便のかさが大きくなり過ぎると便がスムーズに進まなくなってしまいます。便秘が重症の人が不溶性の食物繊維をとり過ぎると、更にひどい便秘を引き起こす恐れがありますので、不溶性食物繊維を多く含む食材をとりすぎないように注意しましょう。
便秘の子どもにおすすめの食べ物9選
便秘を改善させるため、おすすめの食事や食べ物があれば教えてください。
食物繊維が豊富な食べ物を9つご紹介します。
大麦
白米に大麦を2~4割混ぜるだけで、炊飯器で白米を炊くのと同じ方法で手軽に作れます。白米に大麦4割程度までならおにぎりも作れます。食べる量にもよりますが、食物繊維を1~2gほどアップできるでしょう。
「たった1g?」と思うかもしれませんが、食物繊維1gは、大切で価値のある分量です。大麦は比較的、子どもにも受け入れてもらいやすいです。
納豆ご飯
小さい頃から納豆を与えれば、納豆好きになる子はとても多いようです。納豆1パック(50g)には約3g程度の食物繊維が含まれます。また納豆菌は腸内の健康にもつながります。
大麦入りご飯に混ぜれば、かなりの食物繊維アップが望めます。混ぜるだけなので、簡単らくちん。
枝豆
枝豆は食物繊維をはじめ、多くの優れた栄養素を含む食べ物です。手のひら一杯分ほど(重さ約50g、可食部約25g)の枝豆には1.2g程度の食物繊維が含まれます。
子どもにも大人にも人気がある枝豆を積極的に活用しましょう。冷凍製品も大変便利です。食事の一品としてもおすすめですが、おやつにもよいですね。
ヨーグルトと果物
例えば、バナナ入りヨーグルトは子どもが大好きな組み合わせ。バナナ1本には約1gの食物繊維が含まれますし、ヨーグルトには整腸効果があります。
甘さを足したい時は、1歳以上の子どもであればハチミツを。もちろんバナナの代わりに、梨、りんご、マンゴーもオーケーです。
※1歳未満の乳児には、ハチミツを食べさせないようにしましょう。乳児ボツリヌス症の危険があります。
プルーン
プルーンに含まれる水溶性食物繊維のペクチンは、腸内にいる細菌の種類や数を良好に保ちます。
また、プルーンに含まれる天然の甘味成分ソルビトールには、便の水分量を増やし柔らかくし、便通をよくする働きがあります。
生のニンジン
ニンジンもまた食物繊維が多い食べ物です。ニンジンが苦手な子どもが多いようですが、火が通った柔らかいニンジンは苦手でも、シャキシャキしているニンジンは好きということもあります。
例えば、生のニンジンを細く棒状に切ってマヨネーズやクリーミーなドレッシングで食べたり、ピクルスや酢物にしたり、細く切って大根サラダにして胡麻ドレッシングをかけると、よく食べてくれる子どももいるようです。もちろん、ニンジンが好きな子は生でも調理済みでもよいと思います。ニンジンスティック4本で食物繊維は1g程度です。
ハニーきな粉トースト
きな粉大さじ1、はちみつ大さじ1/2、水大さじ1弱を混ぜあわせて、トーストしたパンにぬります。きなこ大さじ1で食物繊維は1.1g雑穀パンに塗るとさらに食物繊維アップ。
※1歳未満の乳児には、ハチミツを食べさせないようにしましょう。乳児ボツリヌス症の危険があります。
さつまいもご飯・さつまいも団子
さつまいもを切ってお米と混ぜて炊飯器に入れてスイッチオンのみ。または調理済みのさつまいもをつぶして丸め、砂糖・きな粉をまぶして食べます。
さつまいもは写真の分量(50g)で1.1gの食物繊維を含みます。きな粉は上記でも書きましたが大さじ1で食物繊維は1.1gです。
オクラ
オクラが好きなお子さんは多いです。おすすめは茹でたオクラを輪切りにして、醤油やめんつゆで味をつけて鰹節をまぶしたもの。オクラ3本で約1gの食物繊維を含みます。
まとめ
今回は、看護師の大藏さんに子どもの便秘について詳しくお話を伺いました。
便秘には、生活習慣・心身の問題・病気・薬の副作用といった様々な原因があり、便秘解消には、充分な水分摂取とバランスのとれた食事、適度な運動と規則正しい生活が大切だとわかりました。
ぜひ、紹介された9つの食べ物を、普段の食事に取り入れてみてくださいね。下剤は、負担が大きく耐性もついてしまうため、なるべく緊急時対応として一時的に使用するのにとどめましょう。
子どもの便秘に慌てず対処できるよう、記事を参考にしてみてくださいね!
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