1歳半頃になると、離乳食から幼児食への移行が進み、食べられるものがぐっと広がってきます。
その一方で、
・昨日はモリモリ食べたのに、今日はほとんど食べない
・好きだったはずのメニューを急に嫌がるようになった
・食べる量が日によってバラバラで、栄養が足りているのか不安
・「遊び食べ」が増えて、食事が進まない
…といった悩みを感じる場面も、多いのではないでしょうか。
こうした「食べむら」は、1歳半前後の子どもによく見られるものですが、毎日のことだからこそ、お父さん・お母さんにとっては心配の種になりますよね。
そこで今回は、1歳半の子どもの「食べむら」が起きる理由と、家庭でできる対処法について、栄養士のしずか先生にインタビューしました。

森しずか先生
穂高みらいく保育園に勤務して2年目。子どもの食に関わり、将来を豊かに生きるための土台づくりのお手伝いができたらと思い、この仕事を選びました。子どもたちの笑顔に癒やされながら、毎日楽しく仕事に取り組んでいます。
そもそも「食べむら」って何?

「食べむら」という言葉をよく聞きますが、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか?

「食べむら」とは、日によって、あるいは食事のたびに、食べる量やメニューへの反応が大きく変わることを言います。
たとえば、昨日は完食したのに今日は2〜3口でやめてしまう、朝はあまり食べないのに夜はしっかり食べる、といったケースですね。1歳半頃は、子どもの自我が芽生え始める時期です。「自分で決めたい」「今はこれがいい」といった気持ちが食事にも表れやすく、食べむらが起こりやすい時期です。

なるほど、成長の一つの表れでもあるんですね。

はい。食べむらがあること自体は、発達の過程としてはごく自然なことです。
ただ、あまりにも食べない状態が続く場合は、一人で抱え込まずに行政の窓口に相談してみるのも一つの方法です。栄養士が在籍していることも多く、きっと親身になって話を聞いてくれますよ。
1歳半の食べむら、主な原因は?

食べむらが起きる原因には、どんなものがありますか?

大きく分けると、4つの原因が考えられます。
① 自我の芽生え・気分の変化
1歳半は「イヤイヤ期」の入り口とも言われる時期で、自分の意思がはっきりしてくるタイミングです。「今日はこれを食べたくない」「スプーンではなく手で食べたい」など、食事の場面でも自己主張が見られるようになります。
大人から見ると「わがまま」に感じることもありますが、これは自分で選ぶ力が育っている証拠でもあります。「昨日は食べたのに」と思うかもしれませんが、気分が変わること自体は大人でもありますので、子どもならなおさらです。
② おなかが空いていない/活動量との関係
単純におなかが空いていないという場合もあります。前の食事やおやつの量が多かった、食事の間隔が短かった、あるいはその日あまり体を動かしていなかった、などが理由として考えられます。
とくに休日など、外遊びの時間が少ない日は、食欲が落ちやすい傾向があります。反対に、保育園でたくさん体を動かした日はよく食べる、ということもよくありますよ。

確かに、その日の活動量と食欲は関係していますよね。

はい。食事の前に体を動かす時間をつくるだけで、食べ方が変わることがあります。
短い散歩や、室内での体を使った遊びでも十分効果がありますよ。
③ 食感・味・温度への敏感さ
1歳半頃になると、味覚や触覚が発達し、食感や温度に敏感になる子どもが増えてきます。
「なんとなく口の中で違和感がある」「熱い・冷たいが気になる」といった理由で食べなくなることがあります。たとえば、同じ野菜でも、煮物では食べるのに炒め物では嫌がる、というケースもあります。これは食材そのものが苦手なのではなく、調理法による食感の違いが影響していることが多いです。

好き嫌いではなく、食感の問題ということもあるんですね。

はい。その場合は、切り方や加熱の仕方、とろみのつけ方などを工夫すると、食べてくれることがあります。「この子はこの食材が苦手なんだ」と決めつけず、いろいろ試してみてほしいですね。
④ 食事の環境や雰囲気
意外と見落とされがちなのが、食事の環境です。テレビがついている、おもちゃが見える場所で食べている、椅子の高さが合っていない、といったことが食べむらの原因になることがあります。
また、以前の食事で叱られた経験があると、食卓そのものが嫌な場所として記憶されてしまうこともあります。食事の時間を「楽しい時間」にすることが、食べむら改善の第一歩です。
食べむらがあるとき、家庭でできる5つの工夫

食べむらがある子どもに対して、家庭で工夫できることはありますか?

はい。5つのポイントをお伝えしますね。
① 食事の時間と生活リズムを整える
まず大切なのは、毎日できるだけ同じ時間に食事をとることです。
朝・昼・おやつ・夜の4回のリズムが整うと、体が「そろそろご飯の時間だ」と感じるようになり、自然と食欲が出やすくなります。おやつの時間と量にも気をつけましょう。食事の1.5〜2時間前にはおやつを終えておくのが理想です。おやつでおなかがいっぱいになってしまうと、食事のときに食べられなくなるのは当然なことですよね。
② 「一口だけ」のハードルを下げる
食べむらが続くと、つい「ちゃんと食べて!」と言いたくなりますが、「一口だけ食べてみよう」と声をかけるほうが効果的です。
一口食べられたら「食べられたね」と認めてあげる。それだけで、子どもの中に小さな成功体験が積み重なっていきます。無理に完食させようとすると、かえって食事の時間が嫌になってしまうこともあるため、食べた量よりも「食卓に向かえたこと」を大切にしてあげてください。
③ 盛り付けや見た目を工夫する
1歳半の子どもは、見た目から受ける印象にも大きく影響されます。
お皿にたくさん盛りすぎると「多い」と感じてしまうことがあるため、最初は少なめに盛り、食べられたらおかわりする形がおすすめです。
また、色味が少ないメニューだと食欲がわきにくいこともあります。にんじんやブロッコリー、トマトなど、彩りのある食材を少し添えるだけでも反応が変わることがありますよ。

見た目の工夫は、手軽に取り入れられそうですね。

はい。凝った盛り付けでなくても、小さなお皿に少量ずつ盛るだけでも十分効果があります。
④ 手づかみ食べ・自分で食べる体験を増やす
1歳半は「自分でやりたい」という気持ちが強くなる時期です。
手づかみで食べられるメニューを取り入れることで、食への意欲が高まることがあります。小さく握ったおにぎりや野菜スティック、ちぎったパン、スティック状の蒸し芋など、つかみやすい形にするのがポイントです。テーブルや服が汚れるのが気になるかもしれませんが、「自分の手で食べた」という経験が、食事への前向きな気持ちにつながります。
⑤ 食べなくても、食卓の時間を穏やかに終わらせる
食べむらがあると、「どうして食べないの?」「せっかく作ったのに」と感じてしまうのは自然なことです。ただ、叱ったりため息をついたりすると、子どもは食卓の雰囲気を敏感に感じ取ってしまいます。食べないときは、15〜20分程度を目安に「ごちそうさまにしようね」と切り上げて問題ありません。「一緒に座れたね」「明日はおなかがすくかもね」といった声かけで、次につながる気持ちを大切にしてあげてください。
これって食べむら? 心配なときのチェックポイント

食べむらが続くと、「このまま様子を見ていて大丈夫なのかな」と不安になります。受診の目安はありますか?

以下のポイントを確認してみてください。
様子を見て大丈夫なケース:
・食べない日があっても、数日単位で見ると食べている
・元気があり、機嫌もよい
・体重が成長曲線のカーブに沿って増えている
・水分はしっかり摂れている
少し注意が必要なケース:
・1週間以上ほとんど食べない状態が続いている
・体重が明らかに減っている、または成長曲線から大きく外れている
・ぐったりしている、元気がない
・特定のものしか受けつけず、栄養の偏りが心配

数日単位で見てトータルで食べられていれば、そこまで心配しなくていいんですね。

はい。1食ごとに一喜一憂するよりも、「1週間くらいのトータル」で考えると、気持ちがラクになると思います。それでも心配な場合は、かかりつけの小児科や自治体の栄養相談に気軽に行ってみてくださいね。
まとめ
今回は、1歳半の食べむらについて栄養士のしずか先生にお話を伺いました。ポイントをまとめると、次の5つです。
①食べむらは1歳半頃の発達として自然な現象であり、 自我の芽生えや気分の変化が食事に表れている。
②原因は一つではなく、 活動量や食感への敏感さ、食事環境など複数の要因が関係している。
③生活リズムを整え、おやつの時間と量を見直すことで改善されることが多い。
④「完食」を目標にせず、一口食べられたことを認め、食卓を楽しい場所にすることが大切。
⑤1食単位ではなく数日単位で考え、体重が成長曲線に沿っていれば過度に心配しなくてよい。
しずか先生によると、食べむらは成長とともに少しずつ落ち着いてくるケースがほとんどだそうです。
毎日の食事を用意しているお父さん・お母さん、本当にお疲れさまです。食べてくれない日は落ち込むこともあるかもしれませんが、「今日も食卓に座れたね」——それだけで十分です。お子さんのペースに寄り添いながら、ゆっくり進めていきましょう。

子育てに役立つ情報を取材していきます。
