「スケッチブックなら描いてもいいよ!」と言っているのに、ちょっと目を離した隙に子どもが床や壁に落書きをしてしまい、イラっとすることはありませんか?
楽しく子育てをしたいと思っても、子どもの予期せぬ行動につい怒ってしまうパパママも多いことでしょう。けれど、実は子どもへの言葉がけの仕方やちょっとした対策で、落書きを予防することができるのです。
今回は、落書きで悩むパパママのために、学生が「子どもに落書きをさせないための予防法や効果的な伝え方」について保育士のひかる先生にインタビューしました。大事な住まいを守りつつ、育児ストレスを減らしていきましょう!
ひかる先生
幼いころからなりたかった保育園の先生になり二十数年間、市立の幼稚園、認定こども園、企業主導型保育園に勤務し、担任や主任を務めています。”Going my way”をモットーに、自分らしく保育の仕事を楽しんでいます!
目次
そもそも子どもが落書きをする心理とは?
知り合いのママさんから、子どもが壁に落書きをしてしまって困っているというお悩みを聞きました。どうして子どもは落書きするのですか?
子ども自身の中に「落書き」という概念はないと思います。書くべきではない所や大人にとって困る場所に書くので「落書き」と言われますが、子どもにとっては遊びの一環で楽しんでやっている場合が多いのではないでしょうか。
最初は紙に描くけれど、紙以外ならどんな絵が描けるのか、ワクワクして想像力を膨らませた結果、ふすまやタンスなどに落書きしているケースもあるのです。
いろんなところで試してみたい、やってみたいという好奇心の現れですね。
さらに、お絵かきそのものにはストレスを和らげ、リラックスする効果がありますので、叱られた後にストレスを解消したくて無意識に描くケースもあります。
親の気を引きたいとか、ダメと言われたことをやるのが楽しいと感じてやってしまう場合もありますね。
大人にとっては「困った落書き」に映るかもしれませんが、絵を描くことでお子さんの感情を自分なりに表現していたり、ストレスを発散させていたりすることもあります。
絵を描くこと自体は集中力や想像力が高まるとも言われ、プラスの面も大きいのです。
大人を困らせようとしてやっているわけではないのですね。
そうだと思います。子どもは夢中になると、楽しくなって大人の想像の枠から出てしまうことがあります。落書きは、子どもにとっては作品制作なのです。
家具や壁紙に落書きをさせない予防法とは?
子どもが落書きをする理由はわかったのですが、壁に落書きをさせない方法はありますか?うちも賃貸だったので退去時が怖いとよく怒られました。
賃貸だと原状回復するのも大変ですよね。
そもそも壁に描きたい理由は、「大きな場所に描きたい」「自由に楽しみたい」という気持ちから。子どもが描いても問題ない大きめのスペースを用意してあげましょう。
壁に落書きさせない予防法として、大きな紙を使うことをおすすめしています。
年齢や発達段階にもよりますが、最初は決められた枠の中でやることができるのですが、夢中になると自由に大きいところに書いてみたいという欲求が出てきます。
子どもの描き方を見て、腕の動かし方に合わせたはみ出さないサイズの大きな紙を用意するのがよいですね。大きな模造紙やホワイトボードを用意することで、壁に落書きされるリスクを下げられます。
また、今は水で落とせるクレヨンや、水の入ったペンで専用シートにお絵かきができるものもありますし、そういった道具を使うのもひとつですね。
同時に、ふだん使うペンやマジック、クレヨンや絵の具などの使われると困るものは、子どもが取れない場所にしまいましょう。鍵のかかる棚や高い場所にしまうのがおすすめです。
子どもが伸び伸びとできる環境を大人が整えるということですね。大人側が子どもの傾向や癖をしっかり観察して対応するとよさそうですね。
大人と一緒にやることも大事で、ポンとおもちゃだけ置いて「それで遊んでいてね」と伝えても、使い方がわからないので大人が意図しない方法で遊んでしまうことも。おうちの人と一緒に遊んで楽しむ中で習慣づけていくとうまくいきやすいですよ。
保育の中でも、いけないことを注意するだけではなく、良いことを習慣づけていくのを意識して行っています。
なるほど。でも、もし何度も「壁に落書きをしないで」と言っても聞いてくれない場合は、どうしたらよいでしょうか?
先ほどお伝えした簡単に消せるクレヨンや消しゴムで消せるペンを用意してはいかがでしょうか?落書きそのものが困るというよりも、跡が残ってしまうことが悩みの種のはず。そちらを与えることで、子どもも大人もストレスを減らせます。
子どもが落書きをしなくなる効果的な伝え方とは?
子どもに落書きさせないための、何か効果的な伝え方はありますか?
やはり、やって欲しい、こうして欲しいということを繰り返し習慣になるまで伝えることと、おうちの人が一緒に遊んでお手本を見せることですね。おうちの方がやっていれば、子どもも真似して行うので。何でもそうですが、子どもにして欲しいことを習慣づけるには、繰り返し伝えることが大切です。
確かに、大人が困らない環境であれば、伸び伸び遊んで欲しいですからね。でも、もし子どもが誤って描いてはいけない場所に落書きしてしまったら、何と言えばよいですか?
つい怒りたくなると思いますが、まずは一呼吸おいて、どうしてそこに描いたのか聞いて、どういう風に子どもがしたかったのかを理解してあげましょう。
たとえ描いて欲しくないところに描いたとしても、「もっと大きく書きたかったんだね」と肯定的に捉え、「ここに描くと、消さなきゃいけないんだよ」と伝えましょう。
さらに「じゃあこれからはこっちで描こう」と大人が環境整備を行ってあげることがおすすめです。してはいけない理由と、こうしてほしかったということをわかりやすく、繰り返し伝えましょう。
年齢によっては、以下の流れで片付けを子どもと一緒にやるのも効果的です。
- 気持ちを受け止める
- 改善策を伝える
- 一緒に消す
「落書き=悪い子」と思うかもしれませんが、子どもなりの理由もあります。まずはなぜそこに落書きをしたのか聞いてみてください。
「立って描きたかった」「大きな絵を描いて、ママに見せたかった」などの子どもの言い分も否定せずに、受け止めてから伝えるように心がけてください。
「そっか、立って描きたかったんだね。でも壁だと消さないといけないの。次からは、このスケッチブックに立って描こうか?」
「そうなんだね。でもここに描くと、ごしごし消さないといけないよ。ママも絵を取っておきたいから、次からは紙に描こうね」
という風に、子どもの意見を受け止めて説明や提案をすれば、子どももわかってくれます。困る場所への落書きは減らせるでしょう。
一緒に消そうねと言っても、もし「いや」と言われたらどうしたらよいですか?
「なかなか落ちないなぁ」と大人が苦労している姿を見せましょう。自分がやってしまったことに対して、何かしら感じ取るものがあると思います。そして次にどうするか一緒に考えましょう。
消す作業を強制させるのはよくないでしょうか。
気持ちが乗っていないのにやらせると、いやなことをさせられたという記憶が残ります。
なぜダメだったのか、そもそものところを理解しないと、消すのがいやだと言ったことに対して怒られていると感じるかもしれません。描いたら困る場所に描いたことがいけなかったのだ、とわかるよう気をつけて伝えましょう。
こすって消せない…子どもの落書きを落とす方法
クレヨンで描かれた壁の落書きを、上手に落とす方法はありますか?
油性クレヨンの場合、歯ブラシに歯磨き粉または台所用中性洗剤をつけてこすることで、落書きを落とすことができます。メラミンスポンジを使用するのも効果があります。落書き落としも売っているので、保育園では使っています。
壁・床の素材や、クレヨンの素材にもよるので、かえって広がったり、にじんで落ちづらくなったりすることもあり得ますから、慎重にやりましょう。
床や家具に色鉛筆で落書きをされた場合は、どんな洗剤なら落ちますか?
床に色鉛筆であれば、ふき取る布にクレンジングオイルをたっぷりしみ込ませてから、床を拭きましょう。取れた後は乾いた布で乾拭きするのがポイントです。
油性マジックやマーカーなら、ミカンの皮をそっと落書きした部分にこすりつけ、ふき取りましょう。油汚れが分解されて、落とすことができます。
とても参考になります!床にコルクマットを敷いて予防している家もあるようですが、保育園では何か対策はされていますか?
対策は特にはしていないですね。描かれても消せばよいと考えています。
お絵かきするときは保育士がそばにいますし、消せる画材を使用します。油性マジックは年齢を見て、保育者がそばにいるときに使用しています。
子どもの落書きにイライラ。怒鳴るのを防ぐ方法
あるママさんから、冷静に叱りたいのに落書きを見つけるとつい怒鳴ってしまう…、というお悩みを聞きました。怒鳴るのを防ぐ方法はありますか?
怒鳴る直前は息を吸い込むので、逆に息を吐いて呼吸を整えます。それから怒る原因が「本当に子どもにあるのか」というところに立ち返ってみましょう。
例えば、時間が経ってからカーテンの後ろに線がたくさん描いてあることに気づき、いつの間に!ということもあると思います。その場合でも、クレヨンを持っているのを確認しなかった大人が反省をすることです。子どもの行動で怒らなくてよくなる方法を、大人が考えていくことが大切です。
保育園だと、わかりにくいところで後になって発見した落書きは、子どもがやったことを見逃した保育士のミスなので、一生懸命消します。なかなか消せなくてヘトヘトになることもありますが、それも思い出として残っていますね。
子育てや家事に追われ、つい感情的になる日もあるでしょう。ストレスや悩みが募っていませんか。
子育ては思い通りにいかないことの方が多いです。パパママのストレスをまめに発散することで、感情的に怒鳴るのを防ぐことができます。
たまには周囲の協力を仰いで、一人でホッと一息つく時間を作ったり、子どもと一緒に大きなホワイトボードに落書きして楽しんだり、ストレスを発散しましょう。
まとめ
子どもの落書きを見つけると、つい怒ってしまいそうになりますよね。けれど、大人も普段から息抜きをして子どもに対して大きな目で見られるよう心がけることで、感情的になるのを防げます。
お絵かきそのものには、集中力や想像力を高める効果もあり、子どもの成長にプラスの側面があります。前向きな言葉をかけ、子どもの可能性を広げてあげましょう!
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この記事を書いた人
長野県立大学グローバルマネジメント学科2年の学生ライターです。こどもについてもっと知っていきたいです!