保育園で働く保育士の皆さんにとって、日々の業務の中で「ヒヤリ」とする瞬間に遭遇することは避けて通れないと思います。そこで今回は、現場で働く保育士のりく先生に、保育施設で起こるヒヤリハットの事例や対策について詳しくお話を伺いました。
実際の保育現場で使えるテンプレートや実践的な対処法も紹介しますので、ぜひ日々の保育活動に役立ててください。

りく先生
子ども達のやってみたいという気持ちを大切にしながら保育をしています。大人が気付けない楽しさを見つけて、挑戦している子ども達の姿を見るのが好きです。
目次
ヒヤリハットとは何か?
ヒヤリハットの定義と重要性

まず、保育現場でよく使われる『ヒヤリハット』という言葉について教えていただけますか?

ヒヤリハットとは、実際には事故やケガにならなかったものの、『ヒヤリとした』『ハッとした』つまり、『あわや危険だった』という瞬間のことを指します。
たとえば、子どもが遊具から落ちそうになったり、小さなおもちゃを口に入れかけたりした瞬間などが該当しますね。
こうした出来事は一見小さなことに見えますが、これらを無視してしまうと、いずれ大きな事故につながる可能性があります。

そのようなヒヤリハットをしっかり把握することが重要なのですね。

そうですね。ヒヤリハットは、事故を未然に防ぐための『警告サイン』だと考えています。現場で起きたことをきちんと共有し、対策を取ることが、子どもたちの安全を守る上で欠かせません。
なぜ保育施設でヒヤリハットが起こりやすいのか

保育施設でヒヤリハットが起こりやすいのはなぜでしょうか?

一番の理由は、子どもたちがまだ危険を十分に認識できない年齢だからです。特に小さい子どもは興味のままに行動するので、予測が難しいです。
保育施設では多くの子どもを一度に見る必要がありますから、ひとりひとりに常に目を配るのは簡単ではありません。そういった状況でヒヤリハットが起きやすくなります。
保育士に求められる安全意識

保育士として、ヒヤリハットを防ぐためにはどんな意識が必要ですか?

まずは、常に『子どもは予測できない行動をする』という意識を持つことが大切です。慣れた環境でも気を抜かず、常に子どもたちの動きを注意深く観察するようにしましょう。
また、ヒヤリハットが起きた時は個人で抱え込まずに、他の保育士と情報を共有することも重要です。
これにより、チームで対策を考えられますし、同じような状況が起こった時に注意することができます。

共有することで、よりよい対策が見つかるのですね。

そうですね。ヒヤリハットは事故の前兆とも言えるので、小さなサインを見逃さず、チームで共有し、どう対応するかを考えることが、保育士としての大事な役割だと思っています。
ヒヤリハット報告書の書き方と活用方法
報告書のフォーマット(テンプレートつき)

ヒヤリハット報告書を書く際に、どのようなフォーマットを使っていますか?

当園では、基本的なテンプレートが用意されています。項目としては、『発生日時』『場所』『子どもの年齢』『ヒヤリハットの内容』『発生原因』『対応策』などを記入するようになっています。具体的な状況を記載することで、後から振り返った時に何が起きたのか、どう対応したのかがわかりやすいです。

フォーマットがあると、報告書を書く際に迷わずにすみますね!

そうですね。特に忙しい現場では、フォーマットが整っていることでスムーズに記入できるので助かっています。
書く際のポイントと注意点

報告書を書く際に、特に気をつけているポイントはありますか?

まず、できるだけ詳細に状況を記録することが重要です。『どのような状況で』『どのような行動が』『どのように危険だったのか』を具体的に書くことで、他の保育士にも伝わりやすくなります。
感情的な表現や主観的な意見ではなく、客観的な事実を中心に書くことを心がけています。

客観的に書くことで、対策を考える際に役立ちそうですね。

はい。それと、原因と対策についても必ず記載するようにしています。単に『ヒヤリとした』だけで終わらせるのではなく、『どうしてそのような状況が起こったのか』『次に同じことが起きないようにするためにはどうすればよいか』をしっかり書くことで、報告書自体が対策のための貴重な資料になります。
報告書を活用して園内の安全意識を高める方法

ヒヤリハット報告書を園内でどのように活用して、安全意識を高めているのでしょうか?

当園では、定期的に保育士全員が集まってヒヤリハット事例の共有を行っています。報告書に記載された事例をもとに、どうすれば同じヒヤリハットを防げるか、みんなで意見を出し合います。
この共有を通じて、他の保育士が経験したヒヤリハットから学ぶことができるので、全体の安全意識が高まります。

全員で共有することで、安全への意識が高まるのですね。

そうです。また、報告書を蓄積していくことで、どのような場面でヒヤリハットが起こりやすいか、パターンが見えてくることもあります。
そのデータをもとに、環境を整えたり、子どもたちへの指導内容を見直したりすることで、より安全な保育環境を作ることができます。
保育施設でのヒヤリハット事例8選と対策方法
事例1:転落・転倒(子どもが遊具から落ちるケース)

まず、転落・転倒についてお聞かせください。どのようなケースが多いのでしょうか?

子どもが遊具に登っていてバランスを崩して落ちることがよくあります。特に小さな子どもは、遊具の使い方に慣れていないことが多いので、目を離せません。

対策としてはどのようなことをしていますか?

遊具の周りにはクッション性のあるマットを敷くようにしています。また、遊具の使い方をしっかりと伝え、子どもたちが無理な動きをしないよう見守ることが大切です。
事例2:衝突(走り回って他の子どもや物にぶつかるケース)

次に衝突についてですが、どのような場面で起こりやすいですか?

室内や園庭で走り回っている時に、他の子どもや物にぶつかってしまうことがあります。特に、興奮していると周りが見えなくなりやすいです。

どう対処されていますか?

走り回れるエリアをあらかじめ決めておくことや、滑りにくい床材を使用することで衝突リスクを減らしています。また、走り回る遊びをする前にはルールを確認するようにしています。
事例3:誤飲(小さな部品やおもちゃの誤飲)

誤飲のケースはどうですか?

小さな部品やおもちゃを口に入れる子どもが多いですね。特に1~2歳の子どもは何でも口に入れてしまいます。

それに対してはどのように対策していますか?

小さな部品やおもちゃは年齢に応じて選ぶようにしています。また、小さな子どもの手の届く場所に置かないようにすることも重要です。日々の点検も欠かさず行っています。
事例4:食物アレルギー(食材の誤摂取によるアレルギー反応)

食物アレルギーについては、どんな事例がありますか?

給食やおやつでアレルギー食品を口にしてしまうケースが心配ですね。特に集団生活では、ほかの子どもの食べ物が気になってしまうことがよくあります。

どんな対策をされていますか?

アレルギーのある子どもには、事前に保護者から詳細な情報をいただき、アレルギー食品を徹底的に排除しています。また、給食の時間には子ども同士での食べ物の交換を防ぐよう、保育士が間に入ってしっかり見守ります。
事例5:睡眠中の事故(寝返りによる窒息リスク)

睡眠中の事故についてはどうでしょうか?

寝返りを打った際に、顔に布団がかかって窒息しそうになるケースが心配です。

対策はどのようにされていますか?

寝具は通気性のよいものを使用し、寝返りを打っても顔に布団がかからないようにしています。また、うつ伏せ寝にならないよう定期的に寝ている様子を確認することで、安全を確保しています。
事例6:プール遊びや水遊び中の事故(溺れや転倒)

プール遊び中のヒヤリハットについては?

子どもが水を怖がらず、無理に潜ろうとすることがあり、溺れたり転倒したりするケースがあります。

どんな対策をされていますか?

常に保育士が複数人で見守るようにし、子どもの動きを確認しています。また、水深は年齢に合わせて浅めに設定し、安全を確保しています。
事例7:園外活動中の事故(散歩や遠足中のトラブル)

園外活動中の事故にはどんな事例がありますか?

道路で子どもが突然走り出してしまうケースが怖いですね。興味を引くものがあるとそちらに向かって走ってしまいます。

対策はどうしていますか?

必ず子どもと手をつなぐか、お散歩ロープを使用しています。危険な場所では声をかけて注意を促しています。また、事前に子どもたちに安全ルールを伝えることも大切です。
事例8:その他のケース(紐を首に引っかけるなど予期せぬリスク)

最後に、その他のヒヤリハット事例について教えてください。

紐やひも状のものが首に引っかかってしまうケースがあります。子どもは無邪気に遊ぶので、こうしたリスクにも注意が必要です。

対策としてはどうでしょうか?

紐や危険なものは手の届く範囲に置かないようにしています。また、遊ぶ際には子どもの動きを見守り、危険を未然に防ぐことが大切です。
まとめ
今回は、保育士のりく先生にお話を伺い、ヒヤリハット事例について詳しく教えていただきました。
保育士が常に子どもの動きを観察し、リスクを予測しながら行動しているということが改めてわかり、「子どもの安全を守る」という強い意識に感銘を受けました。それと同時に、ヒヤリハットは決して「小さな出来事」ではなく、事故を未然に防ぐための重要なサインだということを痛感しました。
そして、ヒヤリハットを共有し、他の保育士と連携して対策を考える姿勢は、チーム全体で子どもたちを守るために欠かせない取り組みなのだと感じました。ヒヤリハット報告書の活用や日常の安全対策を積み重ねることで、保育施設全体の安全意識が向上し、子どもたちが安心して過ごせる環境が作られているのですね。
この記事が、現場の安全性を高めるヒントのひとつになれば幸いです。

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