子どもが生まれたら、幸せいっぱいの生活が待っている…と思いきや、どんどん夫婦仲が悪化して辛くなる…。そんな話を身近で耳にした経験はないでしょうか?
夫婦が初めて「親」となる新たな局面では、想定外の出来事がたくさん発生します。そんな時、「どうして自分ばかりこんな思いをしないといけないの?」「妻がこんな人だと思わなかった」「夫がこんな人だと思わなかった」と、夫婦の信頼関係が崩れやすい状況になると言われています。
これが、巷で言われている「産後クライシス」です。
そこで今回は、子育て支援に詳しい長野県立大学健康発達学部こども学科准教授の金山先生に、産後クライシスの乗り超え方について詳しく教えていただきました!
こども学科 准教授 金山美和子先生
上越教育大学大学院 学校教育研究科幼児教育専攻修了 修士(教育学)大学卒業後、新潟県内の私立幼稚園に11年間勤務。上越市女性相談員、上田女子短期大学専任講師、長野県短期大学講師を経て2018年より現職。
目次
産後クライシスとは?
保育を学んでいる学生です。
先日、大学の授業で産後クライシスについて学び、出産を控えた知人夫婦が産後クライシスに陥らないか心配になりました。産後クライシスの対処法や予防について、詳しく教えてください。改めて、産後クライシスとはどんな状況のことを指すのでしょうか?
「産後クライシス」とは、出産や子育てを機に夫婦の仲が急速に悪化し、夫婦関係や家族関係が崩壊しそうになる状況のことを言います。
これが原因で、離婚につながるケースもあります。
2012年、NHK総合テレビジョン『あさイチ』という番組で初めてこの言葉が社会に登場し、話題になりました。それまでは個々の家庭内の問題だと思われていたものが、テレビ番組で一般化されて取り上げられたことで、広く認識されるようになりました。
だからこそ、産後に起こっている危機が「自分の家庭だけに起こっている特殊な問題なんだ」と不安にならなくても大丈夫。出産という時期は、様々な要因が絡み合って夫婦仲が悪くなりやすい時なのです。
出産を機に夫婦関係が悪くなる原因とは?
産後クライシスが起こる具体的な原因は何でしょうか?
原因は大きく4つ考えられます。
- 出産による妻のホルモンバランスの崩れ・体調不良
- 子育てへの不安感
- 子ども中心の生活への変化
- 妻と夫の育児関与のバランス
妻の場合、出産を終えると産褥期(さんじょくき)に起こる多くの不調を抱えながら子育てがスタートします。さらに慣れない子育てへの不安感なども相まって、多くの妻は心身共にいっぱいいっぱいな時期です。
一方で夫は出産を経験しませんし、今までと変わらない生活を送っている場合が多いです。そのため、夫と離れている間、赤ちゃんの命を一人で預かっている妻が不安に陥っていることや、妻に家事・育児の負担がかかり過ぎていることに気付かないケースがあります。この夫婦間のギャップが、すれ違いやすい状況を作り出しています。
また、夫婦それぞれで育ってきた環境が違うため、子育ての仕方やお金のかけ方といった子育て観の相違から、対立が起きやすい時期でもあります。
産後クライシスに陥ってしまったら…乗り越えるコツは?
産後は、どの夫婦でもすれ違いが起きやすい状況なのですね。もし産後クライシスに陥ってしまったら、どう対処するのがよいのでしょうか?
産後クライシスを乗り越えるためのコツを3つご紹介しましょう。ぜひ、解決のヒントにしてみてください。
1.産後クライシスについて知っておく
例えば、「今日は雨が降る」とわかっていれば、傘を持って行くので雨に濡れて風邪を引くこともありません。産後クライシスについても前もって理解しておけば、対処や予防ができるので夫婦関係における危機的状況を最小限に抑えることができます。
冒頭でお伝えした通り、産後クライシスはいまや社会的な問題となっています。
夫婦がすれ違って悩むことがあっても、あなた自身や夫婦間だけの問題だと思わないでください。どの夫婦にもそういう時期があるのだと考え、落ち着いて対応しましょう。
2.夫婦のコミュニケーションの時間を大切にする
夫婦のすれ違いを解消するには夫婦間のコミュニケーションを保つことが得策です。しかし、子どもが生まれたあとは、以前に比べて二人だけの時間が極端に減ってしまいます。
時にはファミリー・サポート・センターや祖父母の家などに子どもを預け、二人で一緒に食事をしたり出掛けたりしてみてはいかがでしょう。日々の努力を認め合い、話し合うことで解決できるケースも多くあります。
3.相手に気持ちを伝えるコツは主語を「私」にすること
みなさんは、パートナーに改善してほしいことがある時、どのように伝えていますか?
「みんなはこうしているのにあなたはしてくれない!」などと相手を責めるような言い方をしてしまうと、夫婦仲にさらに亀裂を入れてしまいます。
そこで、パートナーに要望を伝えたい時おすすめなのが、「私」を主語にすることです。
「私はこう思うから、こうしてくれると私は嬉しい」という言い方にするだけで、ストレートに自分の気持ちを伝えることができます。誰でも、人と比較して責められると、素直に話を聞く気持ちが薄れてしまいますからね。
伝え方を変えるだけで、ポジティブな会話ができそうですね!
妊娠中からできる予防策は?
夫婦間のコミュニケーションがとても重要であることは理解できました。
ですが、やはり産後は子育てで手いっぱいになり、ゆっくり話し合う機会も少なくなると思います。産後クライシスに備えて、妊娠中から夫婦で準備しておけることはあるのでしょうか?
すれ違いが起きることを前提として、あらかじめ仲直りの方法を決めておくのがよいでしょう。
いざ喧嘩すると、そのあとなかなか仲直りのきっかけが見つけられないこともあります。そんな時のために、「一緒にお気に入りのケーキを食べる」「一緒に思い出の場所に行く」といったお互いが楽しめること・初心に戻れることを決めておくと、スムーズに仲直りができます。
まとめ
産後は妻の体調や生活の変化、夫婦の家事・育児の負担量によってすれ違いが起こりやすい時期とわかりました。
あらかじめ産後クライシスについてよく知っておけば、パートナーと喧嘩をしてしまった時も、「そういう時期なのだ」と冷静になることができます。
もし夫婦仲が悪くなってしまっても、お互いがコミュニケーションの重要性を理解し、意識して関係を修復するための時間を作ることができれば、産後クライシスを必要以上に恐れることがなくなりますね。
将来子どもが巣立った後は、また二人に戻ります。共に長く過ごすパートナーだからこそ、協力して危機を乗り越えていきたいですね。ぜひ、参考にしてみてください!
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この記事を書いた人
長野県立大学健康発達学部こども学科1年の学生ライターです。大学では日々保育について勉強中。少しでも子育ての役に立つような情報をお届けしたいと思っています!