1歳になり、離乳食も食感がしっかりとしたものを食べられるようになってきて、お父さん・お母さんは嬉しい時期だと思います。
その反面、食欲が旺盛で、次のような悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
- 1歳の子どもがご飯を食べ過ぎている気がする
- 泣き叫んでご飯をせがんでくるので、つい与えてしまう…
- 朝、昼、夜のご飯の量が合っていないのではないかと心配
なかなかご飯を食べてくれない子どもがいる一方で、食べ過ぎてしまう子どももいます。しっかり食べることはよいことですが、食べ過ぎも不安になりますよね。
そこで今回は、1歳児の子どもが食べ過ぎる原因や対処法について、栄養士のかなこ先生にインタビューしてみました。
かなこ先生
自分で作った食事でみんなを笑顔にしたいという思いから栄養士を目指す。
子どもたちの笑顔のため、食材の大きさや切り方など、日々試行錯誤しながら調理している。
とくに、離乳食を食べる時期の経験がその後の食べ方や好き嫌いなどに大きく影響を与えることから、小規模でひとりひとりにフォーカスできるみらいく各園で栄養士として日々奮闘中。
目次
1歳児が食べ過ぎ!食欲が止まらない!?
子どもがしっかり食事を食べてくれると、安心する反面「食べすぎなのでは……?」と不安に思ってしまう場合もあるでしょう。
そこでまずは、1歳児の止まらない食欲の原因や、子どもの食べ過ぎに関するお悩みについて紹介します。
ご飯を食べない子どもと食べ過ぎてしまう子どもの違いとは?
ご飯を食べない子どもと食べ過ぎてしまう子どもの違いとは?
はい、一番の違いは「食事や食材への興味」だと思います。
ご飯を食べない子どもでも、「特定のものだけ食べない」のか、「ご飯の時間が嫌い」なのかに分かれます。
「特定のものだけ食べない」子どもは、離乳食時期に同じものしか食べていない場合が多い傾向があると感じています。
たとえば、同じベビーフードを食べ続けるとします。そうすると、1歳以降の食事の中で、ベビーフードに入っていなかった食材を食べたがらない、といったことがあります。
大人でも、同じものばかり食べ続けていると、馴染みのない食材に対して食わず嫌いになってしまうという話は聞きますね。小さい頃からいろいろな食材を食べさせることも大切ですね。
では、「ご飯の時間が嫌い」という子どもには、どのように対応すればよいのでしょうか?
ご飯の時間が嫌いという子どもは、ご飯や食材への興味が薄い、ということが要因のひとつだと考えられます。その場合は、食育活動を取り入れてみましょう。たとえばピーマンの種取り、ミニトマトを育てて収穫するなどがあります。簡単な活動でも興味が湧くことがあります。
一方で、食べ過ぎてしまう子どもは、ご飯や食材に対する興味が非常に高い傾向があると考えられます。
保育園では、ご飯の時間が大好きな子どもが泣いている時に給食室をのぞきに来ると泣きやむこともありますよ。
子どもの食べ過ぎに関するさまざまなお悩み
子どもが食べ過ぎて困っている、というお父さん・お母さんの悩みとして、次のようなものが挙げられます。
- テーブルの上に出してあげたご飯を食べ終わっても、もっと食べたいとせがむ
- 「もうおしまいよ、ごちそうさまね」と言っても、お皿をたたいたり泣いたりする
- キッチンに行き冷蔵庫を開けると、「ちょうだい、ちょうだい」と言いながらご飯を欲しがる
- お茶や水などの水分を与えても満足せず、根負けして何かをあげてしまうことが続いている
- とくにお休みの日は、一日中食べさせている気がしてとても心配
- 普段のご飯の量が合っていないのかと自信がなくなる
子どもから常に食べたいと要求されると、お父さん・お母さんも辛いですよね。食べることは悪いことではないし、おなかいっぱいになると満たされて子どもは機嫌がよくなりますから、つい何かをあげてしまうお気持ちもよくわかります。
成長に伴うものなのか、ただご飯をもらうことに執着しているだけなのかを、よく見極めましょう。
乳幼児身体発育曲線(成長曲線)で確認してみよう
1歳児の食べすぎが気になったら、母子健康手帳の「乳幼児身体発育曲線」で、発達の状況を確認してみましょう。
【乳幼児身体発育曲線】
発達曲線の標準の範囲内、または曲線のラインに沿っているようであれば、それほど心配する必要はないでしょう。ただし、発達曲線より大きく外れている場合は、食事の内容や食事の取り方を見直してみる必要があります。
ご飯を食べすぎる理由を考えて対応してみよう
ご飯をあげれば食べますが、本当におなかがすいているのかよくわかりません。こちらも、子どもの気をそらしてやり過ごしたり、根負けしてあげてしまったり、その時によって対応にばらつきがあります。
1歳児がご飯を欲しがる理由と、それに適した対応を教えてください
はい、3つお伝えしますね。
① エネルギー不足の場合
体重の急増加や明らかな肥満がないのであれば、活動量に対してのエネルギーが足りないことが考えられます。この場合はいわゆる「スタミナ不足」の状態です。
子どもの活動が活発なのであれば1日3回の食事でご飯・パン・麺などの主食の量を増やすことで、エネルギーを補給してあげましょう。主食となる糖質は体の中で効率よくエネルギーに変換されるだけでなく、お腹の中で膨れてくれるという特徴もあるので満腹感も得られます。
エネルギーが足りていないことが食べ過ぎの原因であれば、必要以上に欲しがることも減ってくるでしょう。
ここで注意したいのが砂糖の摂り過ぎないと言うことです。同じ糖質でも砂糖は中毒性があると言われ、どんどん欲しがってしまうことがあるかもしれません。
砂糖の摂取を控えたい場合にはおやつをおにぎりにすると良いでしょう。ジャムなどを塗っていない食パンもおすすめです。
おにぎりは様々な食材を混ぜ込むことで他の栄養素も摂ることが出来ます。例えばチーズを加えると不足しがちなカルシウムも摂取することが出来ますよ。
主食の量を増やしていくにあたり、気を付けることはありますか?
子どもの身長や体重によって、それぞれ胃や腸の大きさは違います。エネルギーとなる主食を十分に与えてもさらに欲しがる場合は、たべたものの腸の消化・吸収が追いついておらず上手にエネルギーに変換されてない可能性も考えられます。
一度にたくさんの量を与えず、子どもの様子を見て食べる量を少しずつ調整していくことが大切ですね。
② 何かをもらえることに執着している場合
お腹が空いているのではなく単に何かを「もらえること」に執着している場合もあります。泣けばもらえるから泣いていることもあるので、子どもが泣いたり怒ったりして騒いでも、反射的にお菓子などをあげることはやめましょう。
幼児期はご飯とおやつの時間をしっかりと決めて、「自分の分を食べたらもうおしまい」ということを覚えていく時期でもあります。ご飯とおやつの時間のリズムができていないうちに、まばらな時間に与えてしてしまうと、便秘になってしまうこともあります。
泣いたら与えるというパターンを崩し、子どもが食べものを欲しがっても、「ご飯やおやつの時間でなければもらえません」と教えましょう。大体同じ時間で良いので朝、昼、おやつ、夜のご飯の時間のリズムを作ることが大切です。
食事のリズムは短期間で作れるものではありません。長い目でゆっくりと時間をかけて進めていきましょう。
たとえば、外出先で泣き止ませるためにサッとおやつをあげることは問題ないですか?
はい。習慣化しなければ問題ありません。
しかし、先ほどもお伝えした通り砂糖の摂り過ぎはもっとほしがることもありますので注意しましょう。
③ お父さん・お母さんともっと関わりたい場合
ご飯の時間は、お父さんやお母さんと最も関わることができる時間です。ご飯を欲しがることで、お父さんやお母さんと関わりが持てると思ってしまっているのかもしれません。
ご飯の前に、一緒に絵本を読んだり、おしゃべりをしたり、散歩や買い物に出かけたりして、お子さんと関わる時間を増やしてみましょう。
それによって子どもの食欲が落ち着き、欲しがらなくなるようであれば、お父さん・お母さんとの時間をもっと持ちたかったということだと考えられます。
1歳児の適切な食事量は?
1歳児の1食あたりのご飯の適量は、ご飯や野菜、魚や肉などすべて合わせて145~180g程度です。それぞれの目安は次の通りです。
軟飯90g+野菜・果物の合計40g+魚、肉、卵などの合計15g~30g=145g~
もしくは、軟飯90g+野菜・果物の合計40g+豆腐50g=~180g
上記の量を目安に、子どもの体重や体格差に合わせて、ひとりひとりに合った適量を与えましょう。
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食欲旺盛な1歳児に!食事のポイントや食べ過ぎ対策を紹介
たくさん欲しがる子どものために、食事の際に工夫できることはありますか?
はい、大事なポイントを5つお伝えしましょう。
- 野菜を中心に味付けを変えてバリエーションを増やす
- 歯ごたえのある食材を使い、満腹感を与える
- ご飯は「目の前に出されたもの以上はない」ことを教える
- 食べ過ぎかな?と思ったら、あげないと心に決めて対応する
- 子どもの成長に合ったご飯の量を考えて対応する
ひとつずつご説明していきますね。
①野菜を中心に味付けを変えてバリエーションを増やす
ご飯のメニューは、野菜を中心に味付けを変えて、バリエーションを増やして与えてみましょう。
保育園では野菜を味噌汁やスープに入れると、食べてくれることがあります。
汁物はおなかも膨れますし、野菜はかさ増し効果があり満足感を得られるので、積極的にメニューに取り入れることをおすすめします。
②歯ごたえのある食材を使い、満腹感を与える
時間をかけて食べる歯ごたえのある素材も、満腹感を得られると言われています。
奥歯が生え始めた子どもには、野菜スティックなどを取り入れてみましょう。その際、一口で口に入れるのではなく、「かみ切る」ことを覚えてもらうために、少し大きめに切ることも大事です。
ご飯のメニューは、野菜を中心に味付けを変えて、バリエーションを増やして与えてみましょう。
味付けをしなくても食べてくれることが理想的ですがなかなか食べてくれないこともあると思います。この場合には塩昆布やゆかりなど風味のあるものと一緒に混ぜ合わせることで薄味でも美味しく食べることが出来るのでおすすめです。
③ご飯は「目の前に出されたもの以上はない」ことを教える
ご飯は目の前に出されたものが自分のものであり、基本的に「それ以上はない」のだということも子どもに伝えていけると良いと思います。
その際ポイントとなるのは、「言葉のかけ方」です。
「もうないよ」など言葉だけで伝えると、子どもは親が「怒っているのかな」「怒らせてしまったのかな」と感じてごはんの時間を怒られる時間だと感じてしまうことがあるので、空っぽのフライパンや鍋を見せて、「もう空っぽだよ」「もうおしまいだよ」と子どもが自分で確かめて納得出来るように工夫してみましょう。
④食べ過ぎかな?と思ったら、あげないと決めて対応する
子どもの普段の食べる量を考え、これ以上は食べ過ぎかな?と思ったら、たとえ子どもが泣いて叫んでも「あげない」と心に決めて対応しましょう。
泣いたらもらえると子どもに思わせないよう、お父さん・お母さんがルールを決めて対応することも大切です。
泣かれると思わず何か食べさせたくなるかもしれませんが、一緒にどこかへ出かけたり、絵本を読んだりなど、子どもの「食べたい」という欲求から気をそらしてあげるとよいですね。
⑤子どもの成長に合ったご飯の量を考えて対応する
繰り返しになりますが、本当にご飯が足りているのかをよくみて対応を考えてあげましょう。
子どもは日々成長し、保育園などでエネルギーを相当消費しているはずです。おやつ・間食をあげて補うだけではなく、ご飯の量の調節を検討してみましょう。
【ケース別】食べ過ぎてしまう1歳児への対処法
ケース①食べるのが早い!噛まずに丸飲み
食欲旺盛な1歳児の場合、つい食べることに夢中になってしまい、噛まずに丸飲みしてしまう子もいます。早食いや丸飲みは、食べ物の消化に悪影響を与え、胃腸にも負担をかけてしまいます。
早食いや丸飲みをしてしまうお子さんには、以下のような対処法で咀嚼を促すといいでしょう。
- 食材は前歯でかじれる程度の大きさに切る
- 根菜やきのこなど、噛み応えのある食材を使用する
- 加熱する際はやわらかくしすぎず、食感が残る程度を意識する
- 「カミカミ、ごっくん!」などの声がけをする
- 大人が食べている様子を見せて、噛む手本となる
ケース②ダラダラ食べ!いつまでも食べ続ける
1歳前後の子どもは、まだ自分で食欲のコントロールができないため、満腹感を感じにくいという特徴があります。そのため、食べることが好きなお子さんは、いつまでも食べ物を欲しがり、ダラダラと食べ続けてしまうケースも少なくありません。
1歳児のダラダラ食べを防ぐためには、保護者の工夫が必要です。
- 食事の時間を決めておく
- 食事時間以外は食べ物を片付ける
- 「おなかいっぱいだね」などの声がけで満腹感を教える
- 食べ物を欲しがったら、遊びに誘うなどで気をそらす
上記のようなポイントを心がけて、少しずつ食事時間のリズムと食事量を整えましょう。
ケース③太りやすい食べ物が好き!
甘いものや味付けの濃いもの、油で揚げたものなどは、子どもが好んで食べる傾向があります。しかし、こういった食事を続けていると太りやすく、また薄味の食事を食べなくなってしまうので注意が必要です。
子どもの健康や将来の食生活のことを考えて、食事を作る際は以下のポイントを意識しましょう。
- 煮物や蒸し物、焼き物などで使用する油の量を控える
- 素材の味やだしの風味を活かして、味付けは控えめにする
- 野菜や海藻など低カロリー食材で食事にボリューム感を出す
- お肉なら鶏のささみや胸肉、魚なら白身魚を選ぶ、など素材の種類にこだわる
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まとめ
今回は1歳の子どもが食べ過ぎてしまうお悩みついて、栄養士のかなこ先生にアドバイスをしていただきました。まとめると、ポイントは次の5つです。
- ご飯を欲しがる理由を考えながら対応する。
- エネルギー不足の場合は主食で補う。その際、一気に多く摂取しすぎると消化・吸収が追いつかず上手にエネルギーに変換されていない可能性があるため、少しずつ摂取する。
- お父さん・お母さんに構ってもらいたくてご飯を欲しがっていることも。ご飯の前に絵本を読んだり、遊んだりなどスキンシップをとると◎
- 歯ごたえのある食材を食事に取り入れて野菜でかさ増しし、味付けのバリエーションを増やして、満足感を与えよう
- 食事のルールを少しずつ教えていく。欲しがったら空っぽのフライパンなどを見せ、「空っぽだよ」と子どもが確かめ納得するための工夫を。
栄養士さんによると、食べ過ぎてしまう子どもは2歳頃になると落ち着いてくることがほとんどで多く、一時的なケースの可能性が高いそうです。
今は辛い部分もあると思いますが、子どもは食事の時も家族の表情などを敏感に感じ取っています。一緒に楽しい食卓を囲めるよう、怒った表情や態度はなるべく控え、長い目で見守ってあげましょう!
ご飯のことでお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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この記事を書いた人
子育てポケットでは、栄養士さんを中心にプロフェッショナルな気持ちをお伝えすべく、楽しく取材しています!
普段は小説を読んだり、思ったこと・感じたことを文字にしたりすることが好きです♪