発熱や喉の痛み、咳の症状がある子どもを病院に連れて行った際、「扁桃腺が腫れている」という診断をされたことのある親御さんは多いと思います。
ひどくなると食事もできないケースがありますが、一方で、「熱もなく元気に遊んでいるけれど、子どもの扁桃腺が腫れているように見える…」という経験はありませんか?
「もしかして何か別の病気?」と、心配になりますよね。
もしかしたらそれは、「扁桃肥大(へんとうひだい)」かもしれません。その場合、放っておいてもよいのか、治療の必要があるのか…。今回はそんなパパママのお悩みにお応えするべく、子どもの扁桃肥大について看護師のなつみ先生にお話を伺いました!
町田なつみ先生
病児保育室「おひさま」に勤務して4年目。病気のときにも、安心して利用してもらえるように、一人ひとりによりそった保育看護を行っています。
目次
そもそも扁桃腺ってどこにあるの?
まず、病院などでよく耳にする「扁桃腺」とは、そもそも身体のどの部分を指すのでしょうか?
「扁桃腺」とは、医学的には「扁桃」と言い、喉の入り口にあるリンパ組織が集まった組織です。
呼吸する時に鼻や口を通して入ってくるウィルス・細菌から身体を守ってくれる役割があります。
扁桃には4つの組織があり、子どもの病気で一般的に言われるのが以下の2つです。
1、口蓋扁桃(こうがいへんとう)
口を大きく開けた時に、喉ちんこの両側に見える部分です。
風邪をひいて「扁桃腺が腫れる」というのは、一般的に口蓋扁桃が細菌などの感染により大きくなっている状態を指します。
2、咽頭扁桃(アデノイド)
鼻と喉の奥の繋ぎ目にあります。口蓋扁桃と違って、見ることはできません。
扁桃肥大の原因とは?
熱や喉の痛みなど風邪の症状がないのに、子どもの扁桃腺が腫れることがあるという話を聞きました。
扁桃肥大とは、どういったものなのでしょう?また、どのような原因で起こるのでしょうか?
口蓋扁桃が大きくなっている状態を「扁桃肥大」、咽頭扁桃(アデノイド)が大きくなっている状態を「アデノイド肥大」と言います。
原因については、以下の3つのことが考えられます。
1.生まれつきの体質によるもの
遺伝や体質で生まれつき扁桃が大きいことが、多くの原因です。
2.生理的肥大
子どもの頃は免疫が充分に発達していないので、細菌などの感染により扁桃肥大になることがあります。
時間が経てば自然と元の大きさに戻ることがほとんどです。
【年齢による生理的肥大の変化】
免疫機能が未熟な幼児期に病原菌を防ぐため、成長に伴って大きくなる時期があり、それを過ぎると小さくなる年齢的変化がみられます。
口蓋扁桃…3歳頃に始まり、7歳頃にピークを迎え、10歳頃には小さくなる。
アデノイド肥大…2歳頃に始まり、6歳頃にピークを迎え、10歳頃には小さくなる。
3.病的肥大
細菌やウイルスの感染を繰り返すことで、扁桃に病原菌が常在し、炎症した状態が続くことを病的肥大と言います。
子どもだけでなく、大人になってもある程度の大きさを保ったままとなり、自然治癒は難しくなります。
扁桃肥大・アデノイド肥大の症状
ほとんどが成長に伴い小さくなるとのことですが、その過程でどのような症状が現れるのでしょうか?
扁桃肥大とアデノイド肥大について、それぞれご説明しましょう。
1.扁桃肥大の症状
口蓋扁桃が少し大きくなる程度ではほとんど症状は見られません。
ですが、気道を狭めるほど過剰に肥大してしまうと、以下のような症状が現れます。
・いびきをかくようになる
・睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome, SAS)になり睡眠中に何度も呼吸が止まる
・食べ物が飲み込みにくくなり、食が細くなったり、食事に時間がかかったりする
・呼吸障害になる
いびきやSASが原因で睡眠の質が低下すると、寝起きが悪くなって日中の集中力が下がる睡眠障害の症状を引き起こし、子どもの成長の妨げとなってしまいます。
2.アデノイド肥大の症状
鼻の空気の通りが悪くなるため、以下のような症状が現れます。
・いびきをかくようになる
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)になり睡眠中に何度も呼吸が止まる
・鼻詰まりになったり、鼻声になったりする
・口呼吸をしがちになる
また、鼻と耳を繋ぐ耳管の通りも悪くなるため、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎や、副鼻腔炎の原因となることもあります。
滲出性中耳炎は、耳が詰まった感じや、聞こえにくさが症状となります。急性中耳炎のような発熱や耳の痛みがないため、お子さんが症状を訴えることが少ないので注意が必要です。
日常で気になる症状があった場合、まずは耳鼻科や小児科で相談してみることをおすすめします。
場合によっては、扁桃やアデノイドを取り除く手術が必要になることもあります。
大したことがないと見過ごしているうちに、睡眠が十分とれず睡眠不足による意欲低下、多動などの弊害が生じることもあります。
扁桃肥大・アデノイド肥大の検査と診断
扁桃腺は喉だけのイメージがありましたが、喉から繋がって鼻や耳にも症状が出てしまうことがあるのですね。
扁桃肥大やアデノイド肥大が生理的なものか病的なものかを家庭で判断することは難しいと思いますが、病院ではどのようなことを行うのでしょうか?
病院では、以下の流れで検査・診断を行います。
1.視診・触診
まずは直接目で見る視診、手で触る触診で扁桃の大きさを確認します。
2.レントゲン・内視鏡検査
レントゲンなどで肥大の程度を観察し、鼻や喉の通りの状態を確認します。鼻から内視鏡を入れる検査を行う場合もあります。
3.細菌培養検査
ウイルス・細菌の感染による扁桃炎から扁桃肥大を発症している疑いがある場合は、原因菌を明らかにするため、細菌培養検査が行われます。
睡眠状況や食事の様子など、気になることがある場合、睡眠時や食事の様子をスマホなどで前もって動画撮影しておき、診察時に見せるとよいでしょう。
医師が症状の全体像を理解し、最適な治療計画を立てることができます。
動画の撮影は、映像と音のどちらが大事になりますか?
音と映像の両方あるとより詳細な情報が医師に伝わると思います。
例えば、子どもがいびきをかいたり、睡眠時無呼吸症候群で睡眠中に呼吸が止まったりする場合は、音を録音すると症状がわかりやすいです。
ですが、音だけだと子どもの睡眠の様子、呼吸の仕方などがわかりにくいので映像もある方がよいでしょう。
扁桃肥大・アデノイド肥大の治療
扁桃肥大・アデノイド肥大と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか?
もし手術となった場合、子どもの身体に大きな負荷がかかるのではないかと心配です。
治療は2種類あります。
1.投薬や経過観察(保存的治療)
成長過程における生理的な肥大は、日常生活に支障がなければ特に治療はせず、経過観察となります。
感染症による炎症で口蓋扁桃やアデノイドが肥大している場合は、一時的なものなので、抗生物質を用いて炎症を鎮める治療を行います。
2.手術(外的治療)
以前は扁桃肥大と診断されるだけで手術を行っていましたが、現在では、以下のような症状があり日常生活に支障がある場合のみ手術を検討します。
・繰り返し扁桃が腫れ、発熱する
・発熱のたびに血尿が見られ、腎炎のリスクがある
・いびきや一時的に呼吸が止まるなど睡眠障害がある
・食べ物が飲み込みづらいなど食事への影響がある
また、手術は通常3〜4歳以降に行います。症状が著しく重い場合はもっと早く手術する場合もあります。
いずれにせよ主治医とよく相談し、しっかり納得してから進めましょう。
2-1.手術内容・術後の対応
全身麻酔で1〜1時間半ほどの、耳鼻咽頭科ではよく行われる比較的難易度の低い手術です。
術後は傷口からの出血のリスクがあるため、1週間から10日ほどの入院が必要となります。
口の中の手術なので、顔や首元に傷跡が残ることはなく、1ヶ月ほどで切除した箇所の傷跡は粘膜に覆われます。
扁桃摘出手術のデメリット
比較的難易度の低い手術ということで少し安心しました。
しかし、手術による後遺症は残らないのでしょうか?
また、細菌感染などから身体を守る役割のある扁桃を取ってしまった場合のリスクなど、デメリットも教えて欲しいです。
基本的には、あまり心配しないで大丈夫です。
1.術後の痛みや一時的な味覚障害
痛みは手術後数日から1週間ほどで徐々に軽減しますが、中には2週間ほど痛みが続く人もいます。
傷口が塞がるにつれて痛みはなくなっていきます。
また、手術中に舌は抑えられている状態になるため味覚障害や喉の違和感が残ることもあります。
こちらの場合も一時的なもので、通常は数週間以内に改善します。
2.扁桃切除により免疫系の変化
扁桃やアデノイドは、鼻や口から入ってくるウィルスや細菌から身体を守ってくれる役割があります。
したがって、扁桃やアデノイドを摘出すると、検査上の免疫に関する数値が、わずかに低下するようです。
しかし、手術後に感染症にかかる割合が増えることは少ないと言われています。
喉には口蓋扁桃・アデノイドの他にも沢山のリンパ組織が分布しています。
他のリンパ組織が代わりを務めるので、一般的には体に悪い影響はないと考えられています。
私の息子の場合・・
赤ちゃんの時からよくいびきをかいていましたが、いびき以外は呼吸も規則的でした。
3歳過ぎたころから、睡眠時のいびきの音が大きくなり、一緒に眠れないほど。
シーソー呼吸(息を吸うときに胸がくぼみお腹がふくらむ)と無呼吸が増え、睡眠の様子を動画に撮ってかかりつけの小児科に相談しました。
ちょうど年齢的にも、扁桃・アデノイドが大きくなってくる時期でした。
耳鼻科で詳しい検査をしてもらったところ、扁桃肥大があり、アデノイド肥大により浸出性中耳炎にもなっていました。中耳炎に関しては、本人の自覚症状はなく、診断されるまで気がつきませんでした。
睡眠時の無呼吸の度合を調べるために、睡眠中の酸素濃度や呼吸の状態を測定し、睡眠時無呼吸症候群と判断(診断)され手術適応となりました。
手術後数日は、傷口の影響で唾を飲むのも痛そうで、唾を吐き出していましたが、入院1週間ほどでごはんも食べられるようになりました。
手術後は、いびきも睡眠時の無呼吸もなくなり、中耳炎も改善されました。
入院・手術・痛みを伴うことなので、手術を受けるまで悩みましたが、主治医と相談し納得して手術に臨みました。
少し大きくなった息子は、痛みも手術も忘れて元気に過ごしていますよ。
まとめ
扁桃肥大やアデノイド肥大は、子どもの成長過程においてしばしば見られる現象で、生理的な変化による場合と、病的なものである場合とがあります。
扁桃・アデノイド肥大により扁桃炎を繰り返す、睡眠中のいびきや無呼吸、食事が困難になるなど、日常生活に影響を及ぼすような症状があれば、医師とよく相談し、状況により最適な治療法を選択することが重要ですね。
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