近年、「自然保育」が子どもの主体性や豊かな感性を育む保育として注目されています。「自然保育」とは、森や畑、公園などの自然環境を活用しならがら、子どもたちが自ら遊びを見つけ、考え、挑戦する機会を大切にする保育です。自然の中では、季節の変化や生き物との出会いなど、子どもたちの好奇心を刺激するさまざまな発見があります。そうした自然との触れ合いを通して、考える力や豊かな感性だけでなく、思いやりの心や協調性なども育まれると言われています。
では、自然保育の現場では実際にどのような活動が行われているのでしょうか。また、自然の中でのさまざまな体験を通して、子どもたちは具体的にどのような力を身につけているのでしょうか。
今回は、自然保育の現場で子どもたちと関わる保育士の先生に、保育を学ぶ大学生の金井がお話を伺いました。

みらいくに入職して6年目になります。かわいい子どもたちに癒されながらたくさん遊び、笑って毎日過ごしています。子どもたちの小さな「できた!」を大切にしながら保育をしています。
1.自然保育とはどんな保育ですか?

最近よく耳にする「自然保育」ですが、具体的にはどのような保育なのでしょうか?

「自然保育」はさまざまな捉え方がありますが、一般的には、自然環境を子どもの成長の場として積極的に活用する保育です。森へ散歩に出かけたり、畑で野菜を育てたり、雨の日に水たまりで遊んだりと、自然そのものが学びの教材になります。

ただ外で遊ぶこととは違うのですか?

もちろん外遊びも含まれますが、自然保育では、子ども自身の発見や好奇心を大切にします。「なぜ葉っぱの色が違うの?」「虫はどこから来たの?」といった疑問から、学びが広がっていくんです。

子どもが主体となる保育なんですね。

そうです。大人が一方的に教えるのではなく、子どもが自然との関わりの中で自ら発見し、学んでいくことを重視しています。

2.自然の中で遊ぶことで育つ力

自然保育では、どんな力が育つのでしょうか?

まず育つのは「考える力」です。例えば川を渡る時、子どもたちはどの石なら安全に乗れるかを自分で判断します。遊びながら、臨機応変に考える力が身についていくんです。

確かに公園の遊具とは違って、正解が決まっていませんね。

その通りです。また、体力やバランス感覚もよく育ちます。木の根や坂道など自然の地形は変化に富んでいて、体全体を使って遊ぶことができるからです。

心の面での成長もありますか?

あります。虫を見つけて喜んだり、植物の変化に気づいたりする中で、命への関心や思いやりの気持ちが育ちます。感性が豊かになることも、自然保育の大きな魅力です。
3.家庭でもできる自然保育の取り入れ方

自然保育は園だけのものではなく、家庭でも取り入れられるのでしょうか?

もちろんです。特別な森や山に行く必要はありません。公園や河川敷、近所の畑道でも十分です。

親はどんな関わりをするとよいですか?

子どもの発見に寄り添うことですね。例えば散歩中に、「この葉っぱ赤いね」 「アリはどこへ行くのかな」と子どもが言ったら、一緒に観察してみてください。すぐに答えを教えなくても大丈夫です。「どうしてだと思う?」 と問い返してあげるだけでも、子どもが自分で想像する機会になります。
4.デジタル時代だからこそ、自然保育が注目される理由

最近の子どもたちは、タブレットやスマートフォンに触れる機会も増えていますよね。そうした時代だからこそ、自然保育が注目されているのでしょうか。

そう思います。デジタル機器から得られる情報はとても便利ですが、画面越しでは感じられないものもあります。自然の中には、風の匂いや土の感触、生き物の動きなど、子どもの五感を刺激する体験がたくさんあります。

確かに、動画で見るのと実際に体験するのでは、大きな違いがありますよね。

そうですね。例えば虫を見つけた時も、子どもたちは「どこへ行くんだろう」「何をしているんだろう」と夢中になって観察します。自然の中には予想外の発見がたくさんあり、それが好奇心や探究心につながっています。

自然だからこそ、自分で考える機会も多いんですね。

その通りです。自然の中では正解がすぐにはわからないことも多く、「なんでだろう?」と考える時間が生まれます。便利な時代だからこそ、体を使って感じ、自分で考える経験がより大切になっていると感じます。

自然保育は、今の時代の子どもたちに必要な体験を補う役割もあるんですね。

はい。デジタルのよさを活かしながらも、自然の中でしか得られない学びを大切にすることで、子どもたちの成長はより豊かなものになると思います。

5.安全重視の時代に、あえて「挑戦する経験」を大切にする理由

大学では保育学を学ぶうえで、子どもが安全に生活できる環境を整えることが重要だと学びます。自然の中で遊ばせるのは危ないと感じる親も多そうですが、実際はどうなのでしょうか。

そうですね。安全を確保することはもちろん大前提です。保育所保育指針でも、安全な環境を整えることが求められています。
ただ、その一方で、子ども自身が安全に配慮して行動する力を育てることも大切にされています。大人がすべての危険を取り除くのではなく、子どもが実際の体験を通して、「これは危ないかもしれない」「どうすればできるだろう」と考える経験も必要なんです。

危険を避けるだけではないんですね。

そうです。少し難しいことや怖いと感じることに挑戦して、それを乗り越える経験は、自信や自己効力感にもつながります。

失敗や小さなけがの経験も、子どもの成長には必要だということでしょうか。

はい。もちろん、けがをすること自体を経験させようということではありません。大きな事故につながる危険は保育士が取り除いたり、必要に応じて見守ったりします。そのうえで、うまくいかなかったらやり方を変えてみる、少し怖くてもやってみるといった、子どもたち自身が試行錯誤する経験を大切にしています。
そうした経験を重ねながら、「どこまでなら自分でできるか」「どうすれば安全に挑戦できるか」を学び、それが自信にもつながっていくと考えています。
6.「自然保育」って普通の保育と何が違うの?

ここまでお話を聞いてきて、自然保育のイメージがだいぶ掴めてきました。改めて、普通の外遊びや保育との違いは、どんなところにあるとお考えですか?

大きな違いは、自然を単に遊ぶ場所として活用するだけではなく、そこで生まれる子ども自身の発見や興味、気づきを大切にしながら、学びや育ちにつなげていくところだと思います。
例えば私たちの園では、よく近くの公園へ出かけています。公園までの道のりには勾配の急な坂道があり、周辺にも草木や虫など、身近に自然を感じられる環境があります。そうした日常の中で、子どもたちは坂道の歩き方を自分なりに考えたり、季節による自然の変化に気づいたり、生き物に興味を持ったりします。保育士はその気づきを受け止めながら、さらに遊びや学びが広がっていくように関わっています。

子どもたち自身が遊び方を考えるんですね。

そうです。例えば、モグラの穴を見つけて「この穴に石がいくつ入るかやってみよう」と試したり、「落ち葉でご飯をつくろう」とごっこ遊びを始めたりします。
そうした遊びは一人だけで完結するのではなく、友達が「じゃあ私はこっちを探すね」「もっと大きな葉っぱを使おうよ」と加わることで、遊び方がどんどん広がっていきます。時には考えが違って相談したり、役割を決めたりしながら、一緒に遊びをつくっていく姿も見られます。
保育者は遊びを与えるというより、子どもが発見したことや興味を持ったこと、友達とのやり取りを受け止めながら、遊びや学びがさらに広がっていくように支える役割なんです。

そういえば、長野県では「やまほいく」という言葉も聞きますね。

はい。長野県には「信州型自然保育認定制度」という制度があります。「信州やまほいく」という愛称で呼ばれています。
自然や地域の環境を積極的に保育に取り入れ、子どもたちが自ら感じ、考え、試していく経験を大切にしている園や団体を、県が一定の基準に基づいて認定する仕組みです。

「やまほいく」という名前ですが、必ず山や森で活動するということではないんですね。

そうなんです。山や森だけではなく、園庭や公園、畑、散歩道など、身近な自然や地域の環境も含まれます。
特別な場所へ行くことよりも、身近な自然の中で子どもが何かを発見し、「なんだろう」「やってみたい」と思えることが大切です。
まとめ
今回のインタビューを通して、「自然保育」とは単に自然の中で遊ぶだけではなく、子どもたちが自ら考え、挑戦し、友達と協力しながら成長していく保育であることがわかりました。デジタル化や安全管理が進む現代だからこそ、五感を使った体験や、自分で判断し行動する経験の大切さが改めて見直されています。
自然との関わりの中で育まれる「想像する力」や「挑戦する力」、「危機を乗り越える力」は、これからの社会を生きていく子どもたちにとって大きな財産になります。公園や散歩道など、身近な自然を遊びや学びの場として活かすことで、気軽に「自然保育」を取り入れることができます。ぜひ、試してみてくださいね。

日本女子大学家政学部児童学科2年の学生ライターです。大学では多角的な視点から子どもの特徴を学ぶために様々な保育の講義を受けています。子育てに関わる人たちへ、分かりやすく役立つ記事で新たな発見や素敵な情報をお届けしたいです!
