もしも子どもが食中毒になったら?主な症状、対処法や予防策

食中毒とは食べ物が原因で起こる胃腸炎のことを指します。食中毒は気温や湿度が高くなる夏場に発生しやすいため、7月、8月、9月は特に注意が必要ですが、気温が低い冬場も油断はできません。

子どもが食中毒を起こした場合、自分で詳しく症状が説明できないことで発見が遅れ、重症化してしまうことも…。

また、一人では食事ができないため、一緒に食事を食べていた大人に症状が出て食中毒と気付くこともあります。

今回は、お父さんやお母さんが知っておきたい「子どもが食中毒を起こしたときの対処法」について栄養士のりかこ先生にお話を伺いました。

この記事を読むことで以下のことが分かります。

  • 「子どもが食中毒かも?」と疑うべき症状
  • 子どもが食中毒になった時の対処法
  • 子どもが食中毒にならないためにできる予防策

お父さん、お母さんをはじめ家族みんなで気をつけることを学び、子どもの食中毒を防いでいきましょう。

りかこ先生
みらいく小布施栄養士
食事を通して人々の健康を支えたいという思いから栄養士を目指す。
子どもたちが心身共に満足できる給食の提供を目指し日々調理の取り組んでいる。

子どもが食中毒になった場合の主な症状

Manami

りかこ先生、今回は食中毒について教えてください。

どんな症状があるときに「子どもが食中毒になったかも」と疑えばよいでしょうか?

りかこ先生

主に次の4つの症状が現れます。

症状が出るまでにかかる時間や程度はその子の体力や体内に入った細菌やウイルスの種類によって違いますが、これらの症状が出現したら食中毒を疑いましょう。一つずつ解説していきますね。

1:激しい腹痛、下痢

りかこ先生

腹痛や下痢は他の要因も考えられますが、激しい腹痛やいつもより水分が多い水様便が2日以上続く場合は、食中毒の可能性が高いので早めに病院を受診するようにしてください。

2:嘔吐

りかこ先生

嘔吐した場合、食中毒が重症化している可能性が高いです。この場合も、早めに病院に行くことをおすすめします。

3:発熱

りかこ先生

食中毒になったとき、37度〜38度程度の熱が出たり、寒気を感じたりすることがあります。この場合も速やかに受診するようにしてください。

4:血便

りかこ先生

細菌やウイルスの種類によっては、血液が混じる血便が出る場合があります。この場合、重篤化する可能性が高いため速やかに病院を受診するようにしましょう。

そもそも食中毒って?原因は?

Manami

食中毒の症状については分かったのですが、そもそも食中毒とはどのようなものなのでしょうか?原因についても教えてください。

りかこ先生

食中毒とは、細菌やウイルスがついた食べ物を摂取し、腹痛や発熱などの症状が出ることを指します。夏場に多く発生しますが、ウイルス性のものは冬場に多く発生するんですよ。

食中毒やその原因については、専門的なお話になるので、農林水産省が提供しているページ『​​食中毒の原因と種類』を是非読んでみてくださいね。

Manami

ありがとうございます。

細菌やウイルス別の症状が記載してあって、とても分かりやすいですね!

りかこ先生は普段保育園にいらっしゃると思いますが、食中毒を防ぐために保育現場で気をつけていることがあれば教えてください。

りかこ先生

食中毒が発生するリスクが高い、生もの(特に鶏肉)、卵を調理する際はしっかり加熱するようにしています。その他にも、生の状態で食べるサラダや果物などは手袋をして素手で触らない、早めに食べ切る、などのことに気をつけています。

子どもが食中毒になった際の対処法3つ

Manami

子どもが食中毒になった場合、どのように対処したらよいかも知っておきたいです。

りかこ先生

お子さんが食中毒になった場合、これから紹介する3つの対処を行ってください。

1:病院を受診

りかこ先生

子どもの食中毒は発見が遅れ重症化しやすいので、疑わしい症状がある場合には速やかに病院を受診しましょう。

その際、直近で何を食べたのか確認しておくことが大切です。また、下痢便の写真や下痢をしたオムツなどを一緒に持っていくと、診断がつきやすくなる可能性があります。しかし、菌やウイルスが付着している便は感染のリスクがあるので取り扱いに注意して下さい。

Manami

「速やかに受診」ということですが、すぐに病院に連れて行くべきか悩んでしまうときがあります。そういったときは、どうすればいいですか?

りかこ先生

お子さんが嘔吐している場合、重症化している可能性が高いため、できるだけ早めに病院に連れて行ってあげるのがよいと思います。

あとは、普段と違う様子でぐったりしている場合は、早めに病院に行くようにしましょう。

もし病院に行くか判断に迷ったときは、病院に電話して症状を伝えるのも一つの手です。家での回復方法を教えていただけるケースもありますよ。

りかこ先生

お子さんは大人と違って免疫が弱いため、安易に自己判断すると症状が重症化する危険性があります。「普段と違うな…」と違和感を感じたら、早めに病院を受診するようにしてあげてくださいね。

2:糖分を含んだ水を飲ませる

りかこ先生

食欲がない時は無理に食べさせないことが大切です。ただ、発熱、下痢、嘔吐の症状がある場合には、体内の水分が奪われやすいので水分補給をこまめに行う必要があります。

Manami

どのタイミングで水分補給するのがよいですか?

りかこ先生

食事ができる場合、食後すぐに水分を摂取すると過剰に反応してしまうことがあるので、30分ほど時間を空けてお腹が落ち着いてから水分をあげてください。

この時、体内の電解質のバランスが崩れていることが多いので、水分の吸収が良くなるよう電解質を補う飲料を摂取するとよいでしょう。ご家庭でも簡単に作ることができるので、レシピを紹介しますね。

電解質を補うドリンクの作り方

白湯か麦茶100mlに対し、砂糖小さじ1、塩少々(小さじ1/8)を加えてよく混ぜる。
しっかりと溶けたら完成です。

Manami

これなら家でも簡単に作れますね!ちなみに、スポーツドリンクなどでも代用できますか?

りかこ先生

市販のスポーツドリンクでも代用はできますが、砂糖が多く入っているので、少し薄めて飲ませてあげるとよいでしょう。ドラックストアなどで購入できる「経口補水液」のほうが体内の成分に近く、早く身体に浸透するのでおすすめですよ。

3:手洗いをしっかりし、ママにうつるのを防ぐ

りかこ先生

食中毒の原因になる細菌は、人にうつるものもあるので注意が必要です。家庭内での蔓延を防ぐためにも、下痢便や嘔吐物を処理した後はしっかりと手洗いをしましょう。

Manami

下痢便や嘔吐物を処理をするとき、注意するポイントはありますか?

りかこ先生

処理する際は、必ず手袋やマスクをつけて行ってください。また、下痢便や嘔吐物がかかった床などにも細菌が残っている可能性があるため、ハイターを薄めた液で拭き取るとよいですよ。

子どもの食中毒は予防が大事!

Manami

ここまで、食中毒の症状やなってしまったときの対処方法について教えていただきました。最後に、子どもが食中毒にならないための予防方法を教えていただきたいです。

りかこ先生

そうですね。一番大切なのはやっぱり「食中毒を予防すること」ですよね。

まずは、食事前にしっかりと手洗いをする習慣をつけることが大切です。残念ながら、細菌が食べ物についているかどうかは人の目で判断することはできません。

食中毒を防ぐ三原則である「つけない」「増やさない」「やっつける」を普段から意識することが大切です。これらを意識した注意するべきポイントを7つ紹介しますね。

1:食中毒の危険性がある食物を知っておく

りかこ先生

そうです生卵や魚の刺身など、生のまま加熱せずに食べることができる食材については、食中毒になる危険性があるので注意が必要です。

細菌の数が少なかったとしても、子どもだけが食中毒になってしまう可能性があります。基本的には、消化器官が発達する3歳くらいまでは、控えたほうがよいでしょう。

りかこ先生

また、1歳未満のお子さんは、はちみつの摂取も避けることをおすすめします。詳しくはこちらのサイトに書いてあるので、参考にしてみてくださいね。

厚生労働省HP「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」

2:できるだけ新鮮なものを購入する

りかこ先生

肉、魚、野菜などの生鮮食品は、できるだけ新鮮なものを購入しましょう。表示のある食品については、消費期限などを必ず確認してから購入してくださいね。

また、​生鮮食品など温度管理(冷蔵、冷凍)を必要とする食品は、できるだけ買い物の最後に購入し、傷むのを防ぐために購入したら寄り道せずまっすぐ持ち帰ることも大切です。スーパーなどに備えつけてある氷などを活用し、温度が上がらないようにするなど工夫をしましょう。

3:手指、調理器具などを丁寧に洗う(除菌)

りかこ先生

食中毒を防ぐ三原則の「つけない」の部分にも関わりますが、調理の前後は手指や調理器具をしっかりと洗い、食品に細菌をつけないようにしましょう。とても簡単なことですが、細菌汚染を防ぐために最も効果的です。せっけんや洗剤で洗った後は、流水で十分に流すことを意識してくださいね。

また、調理前の野菜などは水で洗い、土などはしっかり落としてください。まな板や包丁などの調理器具も、きれいに洗い清潔にしておきましょう。

調理器具に関しては、使用後に洗剤で洗ったうえで熱湯消毒をするとよいのですが、毎回は出来ませんよね。週に1回キッチンハイターなどので消毒が簡単でおすすめです。

りかこ先生

菌を増やさないためには、しっかりと乾燥させることも大切です。濡れた状態だと菌が繁殖しやすいので、しっかりと乾燥させてから保管するように意識してくださいね。

Manami

ありがとうございます。食中毒菌を「つけない」ために、他にも気をつけるべきポイントはありますか?

りかこ先生

食卓につく前にしっかりと手指を洗うことが大切だと思います。外から帰ったら、その都度手洗いすることを徹底しましょう。基本的なことですが油断すると危険です。食品を盛り付ける際も、清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛りつけるようにしてください。

次に食材の保管方法についてですが、肉や魚には細菌がついていることが多いので、他の食品と分けて保管するのがよいですね。

また、サラダなどの加熱しない料理を作る場合、生ものの後だと調理器具に細菌がついている可能性があるため、食中毒のリスクが高まります。料理を作る順番に気を付けるか、包丁やまな板を肉用、魚用、野菜用と別々に揃えて使い分けると安心ですよ。

4:食品の保存は冷蔵庫・冷凍庫で

りかこ先生

食中毒を防ぐ三原則「増やさない」にも関わりますが、冷蔵または冷凍が必要な食品は、時間の経過とともに細菌が増えてしまいますので、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れるようにしましょう。

その際、冷蔵庫や冷凍庫に入れる量は7割程度に留め、​冷蔵庫は10°C以下、冷凍庫は-15°C以下に維持するようにしてください。

また、冷蔵庫や冷凍庫に入れる際は、他の食品に付いた細菌が付着しないよう密封容器に入れたり、ラップをかけたりしてくださいね。

5:早く調理し、早めに食べる

りかこ先生

冷蔵庫や冷凍庫から食品を取り出したら、すぐに調理するようにしましょう。

一度解凍した食品を「やっぱり使わないから…」と冷凍や解凍を繰り返していると、食中毒菌が増殖する可能性があり大変危険です。料理に使う分だけ解凍するように心がけてくださいね。

調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。例えば、O-157は室温に置くと15〜20分で2倍に増えてしまいます。保育現場では、調理が終了してから2時間以内には食べ終わるようにしています。

また、麦茶などの飲み物も、常温で長時間放置すると菌が繁殖してしまう可能性があるので注意が必要です。

りかこ先生

しっかりと沸騰消毒されていればリスクは低いですが、菌が元々いた場合、夏場だと1時間〜2時間程度で菌が繁殖し食中毒の危険性が高くなってしまいます。

6:しっかり加熱する

りかこ先生

加熱は、食中毒を防ぐ三原則の中の「やっつける」という観点から大変重要です。加熱して調理する必要がある食品は、十分に加熱をしましょう。

細菌やウイルスの多くは熱に弱いことが多いので、加熱を十分に行うことで殺菌することができます。その際、食材の中心部までしっかりと火を通し細菌などを死滅させることが大切です。目安としては、中心部の温度が75°Cで1分間以上加熱するようにしましょう。

電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器やふたを使い、調理時間に気をつけたうえで、熱の伝わりにくい物は時々かき混ぜながら、熱が均一に行き渡るようにしてください。

りかこ先生

もし調理を途中でやめる場合、そのまま室温に放置すると細菌が食品についてしまったり、増えてしまうリスクが高まるので、すぐに冷蔵庫に入れるようにしてくださいね。

Manami

生焼けが心配な時に、確認する方法はありますか?

りかこ先生

生焼けが心配な時は、竹串をさして透明な液体が出てきたらしっかりと加熱ができているので問題ありません。反対に、色のついた液体が出てきた場合は、生焼けの可能性が高いため再度しっかりと加熱をしてください。

Manami

自然解凍はしたものは、与えないほうがよいですか?

りかこ先生

そうですね。お子さんが小さい場合、大人なら問題のない細菌の量でも食中毒を発症してしまう可能性があるため、避けたほうがよいでしょう。

しっかりと衛生管理がされているものであれば自然解凍でも問題はありませんが、ご家庭では難しいと思うので、やはりしっかり加熱したほうが安心だと思います。

7:残った食品の保存に気を付ける

りかこ先生

残った食品は、早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。

残った食品を温め直す時は、75°C以上を目安に十分に加熱してください。

味噌汁やスープなどは沸騰するまでしっかり加熱します。
時間が経ち過ぎたり、ちょっとでも怪しいと思ったりしたものは、与えないようにするほうが安心ですね。

まとめ

子どもに限らず食中毒は重症化すると命にかかわる大変危険な病気です。新鮮な食材を使う、調理の際に気をつける、手洗いを徹底するなど家族全員で衛生管理をし、しっかりと予防していきましょう。夏場はちょっとした時間でも細菌が増えるので特に気をつけてくださいね。

もしも子どもが食中毒を発症した時は、すぐに病院を受診し適切な処置をしてもらってください。そして、あなたも感染しないようにマスクや手袋、手洗いを徹底しましょう。

厚生労働省のページ『(こども向け)食品の安全 』では、食中毒や予防する方法を親子で学ぶことができます。お子さんと一緒に食中毒への知識を深め、親子でしっかりと対策していきましょう。

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この記事を書いた人

Manami
広島県在住。0歳女の子の子育てに奮闘するママライターです。 自分が今まさに「知りたい!」と思っているテーマを、皆さんに分かりやすくお伝えします!

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