―― 第1回全体会で見えてきた、私たちのつくりたい場
2026年2月17日(火)/ オンライン開催
レポート:保育みらいフォーラム学生実行委員会 中山こころ
夜の画面の向こうに、仲間が集まった
2026年2月17日、火曜日の夜18時。
パソコン画面にひとりずつ顔が映るたびに、少しずつ気持ちが高まっていきました。
実行委員7名、サポートメンバー3名、そして今日のために時間を割いてくれた外部ゲスト3名。
この日の全体会は、3つの事例紹介とグループワーク、各チームからの活動報告という、盛りだくさんな内容でした。
名古屋から届いた「熱量を引き継ぐ」という言葉
最初に登壇したのは、水野翔太さん。名古屋わかもの会議を2013年から立ち上げ、現在4代目へ引き継ぎ中という方です。
中学生から35歳が集い、地域・政治・まちづくりを100人規模で議論するそのイベントは、知事や市長も巻き込んで実現してきました。参加者の中から市議会議員が生まれた話を聞いて、会場に(オンラインですが)驚きの空気が流れました。
でも水野さんが一番力を込めて話していたのは、「熱量の引き継ぎ」でした。
自分たちが立ち上げたものを、次の世代に渡していく難しさ。後継者の主体性を尊重することの大切さ。
その言葉は、まだプロジェクトが始まったばかりの私たちにも、深く刺さりました。

「300社にメールを送った」学生が教えてくれたこと
続いて登壇した清古光さんは、自分たちのチームが大会に参加するため、スポンサー企業約300社にメールを送り、350万円を超える参加費を調達した経験を持つ学生です。
FRCロボットコンテストへの参加をきっかけに、バイオセンサーコンテストでは、上場企業との共催やスポンサー交渉にも関わってきたといいます。
清古さんの話で特に印象に残ったのは、資金調達そのものではなく、その過程で工夫されていた設計でした。
一つ目は、スポンサー提案を3段階のグレード制にしたことです。
金額や条件を一律にするのではなく、相手企業の予算規模や関心に応じて選べる形にすることで、交渉の入り口が広がったといいます。
「支援する・しない」の二択ではなく、関わり方の幅を用意することで、対話が生まれやすくなったという点は、とても示唆的でした。
もう一つは、参加者として見えてきた、コンテストに複数の評価部門があることのメリットです。
技術力だけでなく、アウトリーチや取り組みの姿勢など、評価の軸が一つではないことで、チームの中にさまざまな役割や価値が生まれる。
その結果、それぞれが「何を目指しているのか」を言葉にしやすくなり、外部に向けた説明や共感も得やすくなったと感じられたそうです。
こうした話を聞きながら、私はこのフォーラムのことを思い浮かべていました。
成果や結果そのものだけでなく、
そこに至るまでの試行錯誤や、関係性をどう設計するかというプロセスにこそ、
挑戦の意味が宿るのではないか。
清古さんの実践は、
私たちが今取り組んでいるこのフォーラムのあり方とも、
どこか重なるものがあるように感じられました。

「◯◯賞で全員を認める」という発想
3人目のゲスト、矢野叶羽さんは、私たちの実行委員の中にもサポートメンバーとして関わってくれている方です。ルーキー・オブ・ザ・イヤー IN LOCAL長野県大会や、マイプロジェクトアワード長野県Summitの運営経験から、実践的な知見を共有してくれました。
印象的だったのは、ルーキー・オブ・ザ・イヤーでは「全国大会に出場できる大賞以外にも、ロールモデル賞や地域課題解決賞、審査員特別賞、共感賞が登壇者に表彰される」という仕組みです。
順位をつけるのではなく、「◯◯賞」として多様な価値を表彰することで、すべての参加者の動機づけになると、矢野さんは語りました。
そして最後にこんな言葉をくれました。
「保育みらいフォーラムも続けていくことで、長野が本拠地の地方大会が、自然に各地で生まれる可能性がある」
その未来のイメージに、胸が熱くなりました。

グループワークで、本音が出た
3つの事例紹介のあと、グループワークの時間が始まりました。
問い:「どんな保育みらいフォーラムをつくっていきたいか?」
「つくるべきか」ではなく「つくっていきたいか」というこの言葉の選び方に、ファシリテーターの意図を感じました。
各グループから出た声を、いくつか紹介します。
>「保育学生は『競技化』では刺さらないんじゃないかと思った。」 >「自分たちが出たくなる大会にしたい。」
これは私も感じていたことでした。保育学生がメインに考えているのは、子どものこと。「競い合う」という言葉より、「伝え合う・刺激し合う」という言葉の方が、本来の動機に近いんじゃないか、と。
>「評価ではなく、刺激を与え合える場にしたい。」 >「5分プレゼン+10分フィードバックの形も考えられる。」
発表することが目的ではなく、対話が生まれる場をつくること。その視点が、グループワークを通じて生まれてきました。
>「懇親会や3者間の交流の場が大事だと思う。」
矢野さんが「本番後の懇親会での交流が参加者の強い記憶として残っている」と言っていたことと重なりました。発表の内容だけでなく、そこで出会う人や生まれるつながりが、参加者にとっての本当の価値になるのかもしれません。
モヤモヤとして出てきた声もありました。
>「つくるものが決まっているのに、つくりたいものの話をしていて、ちぐはぐ感がある。」
この指摘には、会全体がしばし静かになりました。
コンセプトや言葉のすり合わせが不十分なまま走り出しているという感覚。外部に説明できるほど自分の中に落とし込めていないという不安。進め方に確信が持てないという正直な気持ち。
グループワークでは、そういった「本音」が次々と出てきました。
各チームの報告から見えてきたこと
グループワークの後、3つのチームからそれぞれ活動報告がありました。
Design & Experienceチームからは、審査の設計についての議論が共有されました。「誰でも再現可能な保育技能を評価する」という基本方針のもと、1日目に専門技能審査、2日目に子どもとの関わりを見る実技審査という2段階の構成案が提示されています。
一方で、「審査のために子どもを利用することへの倫理的問題」という重要な問いも提起されました。プレイルームでの実施、保護者の同意、日常に近い環境での実践。これらへの配慮を丁寧に考えていく必要があると確認されました。
Partnership & Operationsチームからは、3月〜4月の養成校・保育園向けオンライン説明会の日程が発表されました(3月23日、3月30日、4月11日、4月25日の計4回)。
2月9日には「nicollap」にも参加し大人向けに5分間発表を実施。外部の方から「保育に関係ない業界にも伝わる工夫が必要」「コンセプトが曖昧」という厳しくも的確な指摘をいただきました。これは翌2月18日の「言い方選定会」につながっていきます。
私が所属するCreative & Communicationチームからは、12月親睦会・1月キックオフイベントの取材記事・対談記事の計3本がすでに掲載済みという報告を行いました。発信の積み重ねが、少しずつ形になってきています。
「競技」じゃなくて、「チャレンジ」だったんだ
2時間半の全体会を終えて、画面を閉じた後も、いろんな言葉が頭の中を巡っていました。
正直に言うと、「競技」という言葉に、ずっと違和感がありました。
保育は競うものじゃない。順位をつけることに意味はあるのか。そんな気持ちが、ずっと心のどこかにありました。
でも、3人のゲストの話を聞いて、その違和感の正体が少し分かった気がしました。
矢野さんの話を聞いて思ったのは、チャレンジする場があることで、人は「もっと高みを目指したい」という気持ちが生まれるということ。良い仲間ができるということ。
清古さんの話では、自分たちで数百万の資金を集めてでも大会に出たいという学生たちの姿が語られていました。競うことが目的ではなく、「あの場に立ちたい」という気持ちが人を動かしていた。
水野さんの話では、長野で生まれた挑戦が、名古屋へ、岐阜へ、熊本へと広がっていく様子が描かれていました。「自分たちのチャレンジが、他の県にも広がっていく」というその未来のイメージに、久しぶりにワクワクしました。
「競技」という言葉に違和感があったのは、競うことへの恐れではなかったんだと気づきました。
序列をつけることで誰かの価値を傷つけることへの恐れだったんだ、と。
でも「チャレンジする場」は、違う。
高みを目指す気持ち、仲間との出会い、そして挑戦が広がっていく喜び——それは、保育の本質とも、きっとつながっている。
私たちはまだ、たくさんのことが決まっていません。形式も、言葉も、コンセプトも。
でも「保育の専門性を次の世代に届けたい」という気持ちと、「チャレンジを応援する場をつくりたい」という想いは、全員に共通しているはずです。
モヤモヤを抱えながらも、動き続けること。言葉が揃っていなくても、対話し続けること。
それが今の私たちにできる、一番大切なことなのかもしれない、と思いました。
