保育みらいフォーラム キックオフイベント レポート

「見えない技術」を、どう伝えればいいんだろう― 技能五輪金メダリストの言葉が、私たちに教えてくれたこと ―

2026年1月18日(日)/ 長野短期大学
レポート:保育みらいフォーラム学生実行委員会
中山こころ

イベントが始まる前の、あの緊張感

2026年1月18日、日曜日の午後。
長野短期大学の教室に、続々と人が集まってきました。保育学生、現役の保育士さん、子育て中の保護者の方、そして保育に関心を持つ一般の方々。
会場には約20名、オンラインでも4名が参加しました。
正直、始まる前はとても緊張していました。
「保育の専門性を、社会に伝える」
そんな大きなテーマを掲げて、学生である私たちが本当にやっていけるのか。技能五輪で金メダルを獲得した講師の方を前に、ちゃんと運営できるのか。
でも同時に、「ここから何かが始まる」という期待もありました。

蜜沢さんの言葉が、保育と重なった瞬間

基調講演の講師は、美容師の蜜沢大輔さん。
技能五輪国際大会で金メダルを獲得し、2024年のフランス大会では日本代表の監督として金メダルに導いた方です。
最初は正直、「美容と保育って、全然違う世界の話なのでは?」と思っていました。
でも、蜜沢さんが話し始めて、すぐにその考えは変わりました。

「技能って、作品の完成度じゃないんです」
蜜沢さんはまず、技能五輪について説明してくれました。
世界85カ国が参加する、職業技能の国際大会。2年に一度開催され、若手の技術者たちが技を競い合う場。
でも、評価されるのは「作品の美しさ」だけじゃない、と蜜沢さんは言いました。

「状況の中で、どんな判断をしたか。どんな工夫を重ねたか。そのプロセスそのものが、技能なんです」

その言葉を聞いた瞬間、保育と重なりました。
保育だって、「子どもが笑った」という結果だけじゃなく、その瞬間に保育士さんがどんな距離感で関わったか、どんな声かけをしたか、どんな判断をしたか──そこに専門性があるんだと。

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「評価とは、仕事の価値を伝えるための言葉」

もう一つ、心に残った言葉がありました。

「評価とは、その仕事の価値を社会に伝えるための言語化装置なんです」

私たちが今まで「保育は評価されにくい仕事だ」と思っていたのは、もしかしたら違うのかもしれない。
「評価されにくい」んじゃなくて、「評価の仕方がまだ見つかっていない」だけなのかもしれない。
その問いが、このプロジェクト全体の出発点だと、改めて感じました。

ワールドカフェで見えてきた「見えない技能」

講演の後は、4つのグループに分かれてのワールドカフェ。
私たち学生実行委員がファシリテーターを務めながら、参加者の皆さんと一緒に、保育の技能について語り合いました。
4つの島のテーマ

島A:保育で「審査できる技能」とは何か
島B:イベントで「やってみたいこと」
島C:イベントで「呼びたい人」
島D:「子育てしやすくなる未来」とは何か

最初は、「保育の技能って、どう言葉にすればいいんだろう」と戸惑いながら付箋にペンを走らせていました。
でも、話しているうちに、次々と言葉が出てきました。

付箋に書かれた「見えない技能」たち

議論が進むにつれて、技能は大きく3つに分かれていきました。

一つ目は「形にできる技能」

ピアノ演奏、絵本の読み聞かせ、手遊びの指導、季節の制作アイディア、歌唱力。

「これなら、審査しやすいかも」という声が上がりました。

中には「AIを使った書類作成の技術も、これからは必要だよね」という意見も。

二つ目は「子どもへの対応力」

泣いている子のあやし方、複数人の子どもを一人で見る力、日によって違う子どもに合わせた接し方。

「いかに速く子どもの心をつかめるか」「子どもの姿の読み取り力」「話しかけ方、気持ちの受け止め方」。

「これが一番見せたい技能だけど、どうやって審査するんだろう」という悩みも出ました。

三つ目は「見えにくい専門性」

保護者対応、着脱介助、食事対応、保育の丁寧さ。

「結果だけじゃなくて、プロセスを見てほしい」という想いが溢れました。

「やってみたいこと」「呼びたい人」──アイデアが溢れた島

「イベントで何をやりたいか」という島では、アイデアが次々と飛び出しました。

「ダンスじゃんけん列車で、会場全体で盛り上がりたい!」
「受付横で季節の制作展示をして、来てくれた人に秋を感じてもらいたい」
「壁面制作をみんなで一緒につくれば、参加した感が出るよね」
「簡単な質問に答えを作品にする参加型展示とか、どうかな」

学生ならではの、自由で温かいアイデアがたくさん出ました。

「聞くだけ」じゃなくて、「一緒につくる」場にしたい。その想いが詰まっていました。

一方、「誰を呼びたいか」という島では、リアルな憧れの声が集まりました。

「小児科のお医者さんに審査員になってほしい」
「リトミックの先生とか、写真館のカメラマンとか、子どもに関わる仕事の人がいたら視点が広がる」
「おかあさんといっしょのお兄さんお姉さんが来たら、子どもたちも保護者の方も絶対喜ぶ」
「てぃ先生や木下ゆうきさんみたいな、保育をSNSで発信している人にも来てほしい」

そして何より多かったのが、「保育に興味がない人にも来てほしい」という声でした。
保育の価値を、保育業界の外から見てもらうこと。
それが、このフォーラムの大きな目的なんだと、改めて感じました。

「子育てしやすい未来」──孤立を支えるコミュニティへの期待

「子育てしやすい未来」について語る島では、切実な声がたくさん聞かれました。
「ママ同士のコミュニティがあっても、できているグループに入れない不安がある」
「家にいる人が、自分から相談に行くきっかけが欲しい」
「LINEホットラインみたいに、気軽に相談できる場があるといい」
「相談場所はあるけど、もっと分かりやすくしてほしい」
孤立している人をどう支えるか。その問いが、何度も繰り返されました。

そして、「子育ては二人だけでするものじゃない」という声も。

「地域みんなで子育てできる環境が理想」
「子どもはみんなが育てるというロールモデルがあるといい」
「気軽に参加できるイベントや場所があれば、周りの人との協力・理解も生まれるはず」

さらに、このフォーラムへの期待も語られました。
「保育士の質が上がることで、保育に憧れを持つ人が増えるといい」
「このイベントが続いたら、保育士になりたい人が増えるんじゃないか」
「このイベントに参加している園に子どもを通わせたいと思う」

このフォーラムが、保育の専門性を伝えるだけじゃなく、子育てを支えるコミュニティをつくるきっかけになってほしい。

そんな期待が、会場に満ちていました。

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委嘱状を受け取った瞬間に感じたこと

イベント終盤、学生実行委員への委嘱状交付式がありました。
一人ずつ、壇上に上がって、委嘱状を受け取る。
自分の番が来たとき、手が震えました。
「これは、もう『学内イベント』じゃないんだ」
そう実感しました。
社会に向けた挑戦が、ここから本当に始まるんだって。
委嘱状を手にして席に戻ったとき、周りを見渡すと、同じように委嘱状を握りしめている仲間たちの姿がありました。
みんな、同じ気持ちなんだと…

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学生インタビュー

中山

関さんはこのキックオフイベントの企画をされましたが、その中でどんなことをしてきましたか?また、意識したことなどはありますか?

私はスライドの作成や、実行委員のみんなにビジョンの共有をする役割をしました。今回が初めてだったので、緊張したのですが、”自分たちの思いを伝える”ということを意識して取り組みました。

中山

私たちの思いを伝えることは今回のプロジェクトで大切なことの一つですよね。

今日のイベントでは蜜沢さんのお話を聞きましたが、なにか印象に残ったことはありますか?

前阪

作品だけじゃなく、技術を評価するということが大切なのだと感じました。

佐塚

結果だけじゃなく過程もすごく大事ということを学び、それは保育にも通じることなのではないかと思いました。

中山

私も、そのお話とても印象深かったです。

イベントでは現役の保育士の方やその他の職種の方と話すワールドカフェも行いましたが、そこで何か感じた事などはありますか?

佐塚

ワールドカフェでいろんな職種の人がいたため、それぞれの視点を共有しあっているのがとてもよかったと思いました。

前阪

栄養士の方の意見がとても参考になりました。栄養のこととか考えてくださっていて、保育士にはわからない違う分野の専門的な意見が聞けて良かったです。

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