5歳で人見知りは普通?保育士が語る子どもとの接し方と保護者支援のヒント

「5歳になっても人見知りが強いのは大丈夫?」と悩む保護者の方は少なくありません。友だちへの関わり方や行事に参加する姿を見て、将来を心配してしまうこともあるでしょう。

しかし、人見知りは多くの子どもに見られる自然な成長過程の一部であり、必ずしも問題ではありません。大切なのは、子どもが安心できる環境や関わりをどう整えていくかです。

この記事では、保育士さんへのインタビューをもとに、人見知りへの理解と関わり方のヒントをお届けします!

ちか先生
中野みらいく保育園 保育サポーター
ちか先生
県外の保育園で勤務した後長野に戻ってきました。みらいくに入職し4年目となります。子どもたちの「やってみたい!」という思いを大切に、なんでも一緒に取り組み、楽しみながら保育をしています!

1. 5歳でも人見知りは普通?

金井

5歳になれば、もう言葉も発達していて友だちともワイワイ楽しく遊んでいるイメージですが、人見知りが強い子もいるんですか?

ちか先生
ちか先生

はい、いますよ。5歳くらいになると確かにコミュニケーションが活発になりますが、初めての場所や人に緊張してしまう子もいます。

まず、0歳の後半(6〜8か月頃)から人見知り期が始まり、知らない人を見ると泣いて警戒するようになりますが、これは「人の区別がつくようになった」という成長の証です。1〜2歳になると自我が芽生え、「自分で!」という気持ちが強くなります。安心できる人には甘えますが、知らない人に対してや人が大勢いる場面では緊張したり、固まったりすることも少なくありません。3〜4歳になると、おしゃべりやごっこ遊びで友だち関係も広がりますが、初めて会う人にはまだ恥ずかしがります。
そして5歳でも、性格や家庭での経験によっては人見知りのような反応を見せる子がいます。ですから、“もう5歳なのに…”と焦る必要はありません。その子の個性だと理解してあげることが大事です。

2. 最初の関わり方

金井

人見知りの子には、初対面でどう声をかけたらよいですか?

ちか先生
ちか先生

最初から「名前は?」「好きなものは?」と聞くのはハードルが高いです。私は、まず近くにいて安心してもらうことから始めます。遊びを一緒にやるだけでも十分。「この人は安心できる」と思ってもらえたら、自然に話せるようになりますよ。

3. 好きな遊びを活かす

金井

人見知りが強い子と打ち解けるために、何か意識していることはありますか?

ちか先生
ちか先生

その子の“好き”を見つけることですね。例えばブロックやお絵かきが好きなら、一緒に遊びます。一緒に過ごす時間を通して距離が縮まると、言葉を交わすのも自然にできるようになります。

4. 集団活動に入れない時は?

金井

大勢で活動する時、人見知りの子が輪の中に入れない場合はどうすれば?

ちか先生
ちか先生

まずは“見ているだけ”でよいです。無理に輪の中に入れようすると、子どもの不安感が強まってしまいます。「見ているだけでも立派だよ」と認めつつ、小グループから参加できるように環境を整えます。安心できる体験を積み重ねることで、だんだんと自分から入りたくなります。

5. 保護者の不安にどう答える?

金井

保護者の方から、「子どもが人見知りで心配」と相談されたらどう答えますか?

ちか先生
ちか先生

まずは「心配になりますよね」と気持ちを受け止めたうえで、園での具体的な様子を伝えます。例えば、「家では恥ずかしがり屋でも、園ではお友だちと一緒に当番活動を頑張っています」「歌の時間も先生のとなりで歌えました」など、小さな交流エピソードを伝えると安心してもらえます。保護者と一緒に成長を見守る姿勢を持つことが大事です。

6. 友だちづくりのサポート

金井

人見知りの子が友だちと関わるきっかけは、どうやって作っていますか?

ちか先生
ちか先生

まずは、小さなグループに保育士が一緒に入る形で関わりを作ります。安心できる大人がそばにいて、さらにそこにいる子たちと自然に遊ぶ中で、「友だちと一緒って楽しい」という気持ちが芽生えていくんです。いきなり大人数のグループを作るのではなく、安心できる環境を少しずつ広げていくことが大切ですね。

7. 声かけの工夫

金井

人見知りの子に話しかける時、気をつけていることはありますか?

ちか先生
ちか先生

質問攻めにしないよう気をつけています。「何しているの?」より「ブロックを高く積んでいるね」とその子の行動を言語化する感じです。質問して子どもにプレッシャーを与えるのではなく、 “見守ってもらえている”と感じてもらうことが大切なんです。また、子どもの会話のペースに合わせて、ゆっくり聞き取りやすい声かけを意識することも重要です。

8. 行事や発表会の時は?

金井

発表会や運動会など、大勢の前に立つ行事は人見知りの子にとって大変ですよね?

ちか先生
ちか先生

そうですね。本番で固まってしまう子もいます。その時は無理に舞台に立たせず、袖から見てもらうだけでもよい経験になります。去年は袖で見ていた子が、今年は一緒に舞台に立てた、ということもよくあるんですよ。

9. 長く続く人見知り

金井

もし5歳を過ぎても人見知りが続いたら、発達に問題がある可能性がありますか?

ちか先生
ちか先生

人見知り自体は個性なので、過度に心配することはありませんよ。ただ、生活に支障が出るほど保護者の方に強い不安がある場合は、地域の保健センターや小児科など専門機関に相談することも一つの方法です。でも、ほとんどは成長とともに和らいでいくことが多いので、おおらかな気持ちで見守ってあげてください。

10. 保育者との信頼関係

金井

人見知りの子と信頼関係を築くにはどうしていますか?

ちか先生
ちか先生

短い時間でも、毎日必ず一対一で関わることを意識しています。例えば、「今日は赤い服だね」「電車かっこいいね!」と声をかけるだけでも、 “自分を見てくれている”と感じてくれます。その積み重ねが大きな信頼につながりますね。

11. 保育士自身の姿勢

金井

保育士として人見知りの子と関わる時に一番大事にしていることはなんですか?

ちか先生
ちか先生

“急がない”ことですね。子どもによって、心を開くタイミングは違います。昨日できなかったことが、半年後には自然にできるようになっていたりします。その子のペースを尊重しながら信じて待つことが、保育士にとって一番大切だと思っています。

12. 環境づくりの工夫

金井

人見知りの子が安心して過ごせるように、保育室の環境面で工夫していることはありますか?

ちか先生
ちか先生

あります。例えば、部屋の隅に小さなスペースを作って、 “ちょっと落ち着ける場所”を用意しています。クッションや絵本を置くだけでも安心する子が多いんです。「ここなら大丈夫」という場所があると、活動に戻るきっかけにもなります。

13. 保育士同士の連携

金井

人見知りの子への対応は、担任の先生だけが気をつけてしているのですか?

ちか先生
ちか先生

いえ、園内の先生同士で情報共有しています。その子の得意なことや苦手なこと、好きな遊びなども把握したうえで、チームで対応しています。「今日はこの遊びに参加できました」と日頃から情報共有しておくと、他の先生がクラスに入った時にも同じようにサポートできます。複数の大人から安心感を得られることは、人見知りの子にとって心強いんですよ。

14. 将来への見通し

金井

小学校に上がる時、人見知りが強いと子どもが困るんじゃないかと心配になる親御さんもいます。

ちか先生
ちか先生

確かに保護者の方からもよく聞かれる心配ですね。でも、小学校に入るまでに少しずつ慣れていく子が多いですし、人見知りだからといって友だちができないわけではありません。むしろ慎重な分、相手をよく観察して長く続く関係を築ける子もいます。

例えば、保育園で先生や友だちと安心して遊んだ経験が自信になっていれば、小学校に入学してからも「声をかけられたら恥ずかしがらずに答えてみよう」と自然に一歩を踏み出せるんです。そうした小さな成功体験の積み重ねが、その子の勇気につながっていきます。

まとめ

5歳になっても人見知りが見られるのは、特別なことではなく自然な成長過程の一部です。

今回、保育士さんのお話から見えてきたのは、大人が無理に子どもを集団の中へ入れようとするのではなく、「子どもが安心できる人や場所」から少しずつ関わりを広げていくことの大切さでした。

また、人見知りは決して短所ではなく、「慎重さ」や「観察力」といった長所にもつながります。保護者がそうした視点で受け止めることが、子どもの自己肯定感や成長を支える力になります。

今回のインタビューを参考に、安心できる環境を整えながら、ぜひ大きな心で子どもの成長を見守ってあげてください。

金井未知花
日本女子大学家政学部児童学科1年の学生ライターです。大学では多角的な視点から子どもの特徴を学ぶために様々な保育の講義を受けています。子育てに関わる人たちへ、分かりやすく役立つ記事で新たな発見や素敵な情報をお届けしたいです!

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